最近、やたら自殺者が相次いでおり、“自殺団地”という評判が立つようになった団地。かつての同級生が犠牲となったのに、と室町警視に罵られて意地になったわけでもないだろうが、涼子は泉田を引きつれて、一週間前に犠牲となった音響学の緑川教授の研究室を訪れる。そこで涼子たちを遇したのは、緑川の友人である講師の吾妻という男だったが、実はこの男、匿名で警視庁にある情報をもたらしていた……
どうも序盤での情報の連携がぎこちないのと、クライマックスであそこを導き出した理由などが明示されていなかったりと、細かな検証が杜撰になっているのが引っ掛かります。特に、団地で自殺者を待ち伏せて確保し事情を聞く、というくだりをはじめ、あの涼子が何ら対策を設けもせずに部下を派遣しているのが気に懸かります。涼子だからこそ、事件の原因が洒落になっていないと解るわけで、いくら横暴と言っても信頼する部下を必要以上に危険に追いやる人間ではないのだから、その辺は考えないと。
しかし、音波で人間を狂わせる虫という着想と、その活かし方は悪くない。とりわけ、このところ逞しさだけが際立っていた涼子の“弱さ”をああいう形で見せたのはいい発想です。あのタイミングではなく、すぐに反応があるほうが自然では、とも思えますが、しかし涼子ならばあの場面では意識的に除外しておきながら、当人を前にしてガードが弱まる、というほうが彼女らしい。ただそうすると、防ぎ方が精神力勝負になってしまって、設定の脆弱さを露呈しているだけにも感じられますが、まあそこはそれ。
ただそれでも、終盤の杜撰な対処は色々と頷けません。涼子ならアレを捕獲する方法ぐらい考えてから現場に臨みそうだし、少なくとも結末のような事態になることを想定して対策ぐらいは打っているはず。……どーも安易なんだよなあ。
絵のほうは相変わらず高レベルで安定していますが、シナリオの構成の拙さを反映してか、テンポが悪いのが気になりました。しかしやっぱり問題は、発想を充分に練ることの出来ていないシナリオだと思う。
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