原題:“Transformers : Revenge of the Fallen” / 監督:マイケル・ベイ / ハズブロのアクション・フィギュアに基づく / 脚本:アーレン・クルーガー、ロベルト・オーチー、アレックス・カーツマン / 製作:ドン・マーフィ、トム・デサント、ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ、イアン・ブライス / 製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、マイケル・ベイ、ブライアン・ゴールドナー、マーク・ヴァーラディアン / 共同製作:アレグラ・クレッグ / 撮影監督:ベン・セレシン / プロダクション・デザイナー:ナイジェル・フェルプス / 編集:ロジャー・バートン、ポール・ルベル,A.C.E.、ジョエル・ネグロン / 衣装:デボラ・L・スコット / 音楽:スティーヴ・ジャブロンスキー / 出演:シャイア・ラブーフ、ミーガン・フォックス、ジョシュ・デュアメル、タイリース・ギブソン、ジョン・タトゥーロ、ケヴィン・ダン、ジュリー・ホワイト、ジョン・ベンジャミン・ヒッキー、ラモン・ロドリゲス、イザベル・ルーカス、グレン・モーシャワー、レイン・ウィルソン、マシュー・マーズデン / 配給:Paramount Pictures
2009年アメリカ作品 / 上映時間:2時間30分 / 日本語字幕:松崎広幸
2009年6月20日日本公開
公式サイト : http://www.tf-revenge.jp/
TOHOシネマズ日劇にて初見(2009/06/19) ※先行上映
[粗筋]
異星の金属型生命体たちの、地球を舞台とした熾烈な戦いから、2年が経過した。オートボットたちは地球に留まり、米軍内に新たに組織されたNEST協力のもと、ディセプティコンの残党を捜して駆り出す役目に務めている。
あの戦いで図らずも重要な役割を演じたサム(シャイア・ラブーフ)は晴れて大学への進級が決まった。遠距離恋愛で心まで離れることを心配する恋人のミカエラ(ミーガン・フォックス)や、寮では車の置き場所がないため連れて行くことが出来ないオートボットのバンブルビーを宥めながら出発の支度をしていたとき、サムはあの戦いで破れたジャケットに、キューブ――あらゆる物質を地球外生命体に変質させるアイテム――の破片が紛れ込んでいるのを発見する。家電が次々とトランスフォームして大騒動となったが、バンブルビーの活躍と政府の尽力でどうにか収拾し、サムは意気揚々と大学へ向かう。
だが、サムの大学生活はいきなり波乱含みのものとなった。寮のルームメイトになったのは、校内でベンチャー企業を立ち上げているレオという男。彼はベンチャー企業を立ち上げ金儲けを目論みつつ、陰謀論の浸透に躍起になっている。レオによると、2年前のニューヨークでの事件もエイリアンが絡んでおり、最近上海で発生した事故も、流出した異様な映像を証拠に、政府が何らかの背景を隠しているそうだ――あながち的外れではない、と知りつつも、それが国家機密であることも重々承知しているサムは、この男と関わるのは御免被りたいところだったが、既に部屋替えは不可能だった。
同日、さっそく催された新歓パーティーで、サムの身に異変が生じる。突然、目の前に謎の記号が明滅し、気づけばケーキのクリームを使ってテーブルに書きだしていたのだ。その様子をアリス(イザベル・ルーカス)という生徒に見咎められ慌ててごまかしたが、アリスは何故かサムに興味を持ってアプローチをかけてきた。ミカエラとの初めてのチャット・デートの約束があったため断ろうとしたが、アリスはなかなか解放しようとしない。更には、実家に置いてきたはずのバンブルビーが忽然と寮に姿を現していた。
バンブルビーの機転――或いはミカエラへの忠義的な行動でアリスは去ってくれたが、結局ミカエラを怒らせてしまい、更にはバンブルビーによって連れて行かれた墓地で、サムはオートボットのリーダー、オプティマス・プライムから、ディセプティコンの残党に不穏な動きがあり、いずれサムの協力が必要になるかも知れない、と告げられる。
そう、サムが望むまいと、彼は確実に、地球の命運を握る戦いへとふたたび巻き込まれようとしていたのだ……
[感想]
と、思わず丁寧に粗筋を記してしまったが、本質的にそんな堅苦しく考えながら観る映画ではない。
前作自体、自動車が変形し、意志をもって戦いに挑む様を実車で再現し、決して現実ではあり得ないヴィジュアルと奇想天外ながらも解り易いシンプルなストーリーで描き出し、約2時間半たっぷりと異空間を堪能させたあとは、快い興奮に浸ったまま現実に返してくれる、そういう映画だった。続篇となる本篇でも、その潔いまでの娯楽性を保っている。
それでも前作は変形する地球外生命体たちが登場するまでに若干時間を費やし、本当の面白さが堪能できるのが少し遅くなったきらいがあったが、本篇は前作を踏まえているだけに、冒頭から盛大に仕掛けてくる。予告篇で登場した、高速道路を破壊して疾走するトランスフォーマーはこの最初の事件で登場してくるし、サムのパートに話が移っても、前作で重要なアイテムとなったキューブの破片をきっかけに家の中で騒動になるくだりと、序盤からこの作品ならではの見せ場がふんだんに盛り込まれている。
前作でトランスフォーマーたちの存在が国家に対して知れ、善玉=オートボットたちが軍と協力体制を整えたために、下手をすると前作の主人公サムの活躍の場がなくなる恐れがあったが、前作の要素をうまく応用して、新たな役割を与えることにも成功している――まあ、並べて鑑賞するといささか強引のそしりは免れないが、途中までサムがかつての協力者たちと接触することなく行動せざるを得なくなる必然性はあるし、逆に終盤急遽合流する経緯での意思疎通の速さ、カタルシスの演出にも役立っている。その過程で描かれるサムの成長や、前作で結ばれた恋人ミカエラとのラヴ・コメディ的な流れもまた、あまりにざっくりして厚みこそ乏しいものの、ちゃんと物語を膨らませている。
本篇でいちばん愉しいのは、ルームメイトであるレオの素晴らしいまでの醜態や、前作にてちょっとした憎まれ役を務めた某氏の情けない再登場など、新旧のキャラクターが見せるユーモラスな行動だ。レオは最初こそエイリアンが来襲している、政府は何かを隠している、我々はそれを知らなければ、と散々訴えていたくせに、いざトランスフォーマーたちの死闘に巻き込まれると動揺し混乱し、すっかり木偶の坊に成り果てる。某氏はあまりに意外な登場と、前作で終盤ほとんど役立たずだった成り行きへの雪辱を果たしているし、また面白いのは、前作でもあった小型のトランスフォーマーを巡るエピソードである。バンブルビーもそうだが、自尊心はどーなっているんだろうこの人たちは。そのバンブルビーにしても、冒頭で“涙を流す”という素敵な荒技を披露している。
率直に言えば、ストーリー展開の幅、という意味では前作よりも劣っているし、クライマックスの戦闘の舞台を砂漠中心にしてしまったのは失敗だったと思う。前作で、米軍に所属する中心人物が初めて悪意を持つトランスフォーマーと遭遇したのも砂漠であり、またクライマックスが都市を舞台にした決戦であったことを思うと、有名な史跡を派手に荒らしている面白さはあれど、ヴィジュアル的なインパクトという意味では物足りない。終盤の成り行きも少々乱暴すぎる印象だ。
そうした欠点以外にも、観終わったあとに何ら考えさせられるものがないとか、観終わったあとの余韻が乏しい、という嫌味はあるが、むしろだからこそ一時的な娯楽として充分に堪能できる、理想的な作品だとも言える。また、手の込んだヴィジュアルや緻密な音響効果などは、家庭よりも劇場でこそ本当に味わえるものだろう。前作が好きだった人、テレビやDVDで鑑賞してお気に召したという方なら、是非とも劇場に足を運んでいただきたい。
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