演出・構成:白石晃士 / 製作:張江肇、鈴木ワタル / プロデューサー:木谷奈津子、大橋孝史 / 演出助手:横田直幸、栗林忍、磯田修一 / 協力:若狭朋宏 / 編集・MA:NEKスタジオ / 編集協力:喜多正俊 / 音楽:D.R.A. / ナレーション:中村義洋 / 配給:パル企画
2003年日本作品 / 上映時間:1時間30分
2003年10月27日日本公開
DVDにて初見(2009/07/18)
[粗筋]
- 携帯電話
とある山中の滝の傍ではしゃぎながら、携帯電話で動画を撮影していた女性3人。その背後、ほんの一瞬だけ奇妙な人影が立つ。このとき映ったうちのひとりは、病に伏せってしまった。
- 首なし
無惨に首をもがれた地蔵の傍までやって来た若者たち、暗がりに、苦悶の表情を浮かべた生首を撮影してしまう。
- 居酒屋
男ふたり女3人の合コン中、壁にうすぼんやりと、女性のものらしき人影が浮かび上がる。
- 事故
結婚式に行く前の道中、事故を目撃した若い男ふたり、同時にカメラを向けて撮影。そのうちの一方の映像に、聞き取りにくい音声が入っていた。奇妙な音声を拾ってしまった男は、その音が何を言っているのか自分で探る、と言ったのちに、忽然と行方をくらます……。
- 腕
室内で談笑する女性2人、その背後の窓にうっすらと見える2本の腕。
- 続・事故
行方をくらました人物が、くだんの事故で亡くなった老人の遺族を訪ねた際の映像が発見される。隠し撮り映像、その終わり間際に、扉の磨りガラスに黒い人影が映っていた。スタッフは例の“声”が何と言っているのか、街頭で100人に聞いてもらって、質問する。結果、いちばん多かったのは「うしろにいくな」と聞こえる、という意見だった。
- 続・携帯電話
一緒に写った女性3人のうち、またひとりが怪我をした。直前に、病に伏せった友人からかかってきた電話で、女性達は奇妙な現象を確認する。まるでファックスを受信するかのような音色、そこに折り重なる呻き声に似た音。怪我をした女性には、それが「うしろにいくな」と言っているように聞こえた、という……
[感想]
視聴者からの投稿を集め、必要に応じてその背景を取材して、ドキュメンタリー形式で紹介していく、というスタイルで作られたオリジナル・ビデオ作品『ほんとにあった!呪いのビデオ』。オカルトものや恐怖映像の愛好家からの支持を受けて、2003年に立て続けに制作・公開された劇場版の、本篇は第2作にあたる。
前作がオリジナル・ビデオ版の第2作で紹介した、観ると災いを呼ぶ、と言われる映像の影響を改めて追う、という形で制作されていたのに対し、本篇は最初のうち、通常のオリジナル・ビデオ版とほとんど変わらないスタイルで、新しい映像が紹介される。率直に言えば、わざわざ劇場版で採り上げるほどにインパクトの強い映像がなく、DVDで借りて自宅で観ている私でさえ「いいのか? これ」と首を傾げるほどだった。
だが、シリーズでは恒例の“続・〜”が2本続いたあたりから様相が変わっていく。この経緯にはさすがに度胆を抜かれた。確かに、好評を博し方々から映像が寄せられるようになった今なら、こうした形で別々に撮影された怪奇現象が奇妙な形でリンクしていっても不思議ではない。それぞれの映像は携帯電話やデジカメで撮られたものなので、大スクリーンで観ると相当に粗いだろうとは思うが、これほど込み入った経緯になれば確かに大々的に紹介したくなるのも無理はないだろう。
とはいえ、引っ掛かる部分はある。既にシリーズを20本以上制作してきて、退っ引きならない影響を及ぼす映像があることは劇場版の前作でも充分理解していたはずなのに、実験やアンケートのつもりで無関係な人に被害を広めてしまうような真似をしたり、検証のためとはいえ友人ふたりに被害が及んで苦しんでいる投稿者を、事態の核心に近い場所へと連れて行く軽率さは度しがたい。
また、この締め括り方だと、本篇で語られる怪異はまだ決着していない、ということになる。なのに、劇場版という形で大々的に紹介し、その後回収をしていないのは無責任と言わざるを得ない。関係者の行方を辿ることが完全に不可能になり、それ以上累が及ぶ危険がなくなったというならともかく、関係者が何も知らずに本篇を観てしまった場合の不快感を考慮しないのは、怪奇現象を追うドキュメンタリーを制作する者の姿勢としては問題だろう。
……と、内容そのものよりも製作者の姿勢に対する不満ばかり連ねてしまったが、単純に恐怖を味わいたいと言うなら、間違いなくオリジナルのビデオ版シリーズよりもレベルは高い。ただ観るだけでは伝染しないが、ある条件を満たしたときに波及する“呪い”は、観る側を傍観者のままに留めておかないからだ。それを偶然とか気のせいだ、と切って捨てられるような人には失笑ものだろうが、想像力の豊かな人、感受性の鋭い人ならば、相当な恐怖を味わえるだろう――本気で囚われてしまったとしても、私は責任を負えないが。
……それにしても、紹介するときここまで書き方に困るシリーズもありません。とりあえず、このシリーズについてよくご存知の方は、こういう書き方をした胸中を汲んでいただけると幸いです。
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