『放送禁止6 デスリミット』

放送禁止6 デスリミット [DVD]

監督・脚本・企画:長江俊和 / プロデューサー:春名剛生(フジテレビ)、角井英之、棚橋裕之、中村和樹 / 撮影監督:平尾徹 / VE:名取征 / 編集:本郷孝之 / 選曲・効果:樋口謙 / 音楽:王健治 / 出演:名越康文、吉川誠司、紀藤正樹 / ナレーター:鈴木ゆうこ / 制作:フジテレビ、イースト / DVD発売元:Pony Canyon

2008年日本作品 / 上映時間:48分

2008年6月23日フジテレビ系列にて放映

2008年8月20日DVD最新盤発売 [bk1amazon]

DVDにて初見(2009/08/08)



[粗筋]

 平成19年。映像ジャーナリストの古茂田俊作は、ある主婦から受け取った手紙をきっかけに、DVに関する取材に着手する。

 手紙の主、宋野真津は夫・登津雄からの暴力に苦しめられていた。エリートサラリーマンである登津雄は、かつては優しい夫であったが、最近は些細な点に突如苛立つと、そのあたりのものを投げつけたり、酷いときは手を上げるようになってしまったのだという。

 古茂田は宋野夫妻の暮らすマンションに定点カメラを設置、夫が妻に暴力を振るう決定的瞬間を捉えようとする。だが、取材を続けていくうちに、事態は意外な展開を見せていく……

[感想]

 2003年、フジテレビ系列の深夜帯にて突如放送されてから5年目の2008年、『放送禁止』シリーズは遂に劇場版が公開されるまでに至った。深夜の放送からゴールデンへ、という過程を踏むテレビ番組は多いし、ドラマでもたまにそういうケースがあるが、不定期放送のシリーズが劇場版にまで発展したケースは恐らく初めてだろう。如何に人気が高かったか、またスタッフに意欲があったかが窺える。

 本篇は、そうして満を持して公開された『放送禁止 劇場版〜密着68日 復讐執行人』にリンクする作品として、公開に先駆ける2008年6月に放送されたものである。

 ――と、こうした予備知識を持ったうえで鑑賞したため、最後のショットでちらっと見せられた“違和感”についてはあまり気にならなかった。むしろ、投げ出しっぱなしのようでいて、基本的には単発である先行作と大きな違いはない、と感じたほどである。確かに説明がついていない部分はあるが、それは第1作から存在した特徴で、いまさら問題視するほどのものではないと思う。

 むしろ気になったのは、これまででいちばん、『放送禁止』というシリーズの特質を見失った内容に感じられる、という点である。確かにこんな経緯があれば放送には適さない、と判断されるのは当然だろうが、そもそも放送が可能か、テレビ局が判断し、お蔵入りに出来る種類の映像ではないのだ。何故なら、本篇で使用された映像は、単独で行動している映像ジャーナリストが撮影したものである。それがテレビ局でお蔵入りするためには、テレビ局とのあいだで何らかの契約が行われ、引き渡されていたことが大前提として存在しなければいけない。

 或いはまさに、これらの映像がテレビ局で死蔵されるに至った過程こそが劇場版で描かれているのかも知れないが、他にも存在する疑問点が解消されるかどうかは謎だし、もっと言えば、折角別々の媒体で公開するのなら、残してもいい謎と残すべきでない謎はきちんと分けて欲しかった。

 シリーズの特徴である、ゲーム的なヒントの鏤め方、仕掛けの埋め方も失敗していると言わざるを得ない。何せ、かなり早い段階で極端なヒントが示され、あとはそれがすべて、という作りになっているのだ。他にも幾つか趣向は盛り込まれているが、こちらはそもそも真相とある種の矛盾を来しているために、読み解けたところで却ってモヤモヤした印象を残す。或いはこれも劇場版で解消されることなのかも知れないが、翻ってそれは劇場版を単体で鑑賞する人間には意味不明のポイントとなっているのではないか、と怪しまれる。

 いちばん問題なのは、役者の演技力が内容の要求する水準に達していないことだ。DVの被害者として登場する女性の表情からは切迫感が伝わってこないし、ジャーナリスト役に至ってはバラエティ番組の再現ドラマ程度で、必要以上に悪ふざけの印象を残す。第3作から第5作あたりまでは、演技力とリアリティのバランスがある程度保たれていただけに、逆行してしまったのが勿体ない。

 シリーズらしさはあり、それ故に愉しむことは出来るのだが、初見の人が惹きつけられ、衝撃を受ける、というレベルにないのは、歓迎すべき状態ではないだろう。或いは、劇場版と併せて鑑賞すると印象が変わるのかも知れないが、単体では失敗作と言うほかない。

 深夜帯の不定期放送、という発表形式としては異例の創意を示していただけに、劇場版が製作されると決まった途端にいささか日和ったように映るのが惜しまれる。2009年8月現在、テレビで放送されたのは本篇が最後となっているが、是非ともまた深夜帯に低予算で、しかし意欲的な趣向を施した作品を披露していただきたい。

関連作品:

放送禁止

放送禁止2 ある呪われた大家族

放送禁止3 ストーカー地獄編

放送禁止4 恐怖の隣人トラブル

放送禁止5 しじんの村

ニッポンの大家族 Saiko! The Large Family 放送禁止 劇場版

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