浄水槽で、3ヶ月以上水に浸かりグズグズに溶けた遺体が発見される。十代にもならないのに、コルセットで骨格を矯正し、すべての歯をエナメルで加工した死者の正体は、コンテスト常連の“クイーン”だった。死因は親の虐待なのか、ストーカーなのか――しかし、捜査を進めていくにつれ、ブレナン博士とブース捜査官は、コンテストに参加する少女や親たちの複雑な心理に翻弄されていく……
今回はしばらく前にあった、地下世界の住人たちのエピソードにも通じる、異世界の物語、と言っていいでしょう。ジェファソニアンの面々は、幼くして改造を施されたも同然の少女の状態に痛々しい想いを抱きますが、当事者たちはむしろ望んでいる節がある。その感覚の乖離が終始見所となっています。
それにしても前回といい今回といい、ブースに振り回されて、本来の骨の調査ではないところで使われて戸惑ったり、妙な成果を上げたりするブレナン博士の姿がちょっと微笑ましい。ダンス教室の子供たちに専門用語バリバリで歴史的遺体の調査の話をして逆に慕われ、求めていた情報をちゃんと手にしてしまったあと、更に踏み込んで子供たちに困惑されたところで、ブースに脇を抱えられて起こされるくだりは最高です。
しかしその一方で、真相はむしろ直感的に理解しやすく、それ故に痛ましい。ブランコのまわりで形成された人間関係ならここまでこじれなくて済むものを、ある意味で大人達の歪んだ価値観を凝縮したような世界に押しこまれたが故に巻き込まれた悲劇です。
……ブランコといえば、その何気ない台詞をきっかけに、アンジェラとホッジンスの関係に大きな変化が訪れました。この件でアンジェラは終始悩みっぱなしですが、その心情も最後の決断も理解できるだけに、事件の真相とは別のほろ苦さが漂います。で、その後味を少し改善するのがブレナン博士とブース捜査官のひと幕というのがまたこのシリーズの面白いところ。こいつらはいつまでこんな微妙な関係を続ける気だ。
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