原作:東堂いづみ / 監督:大塚隆史 / 脚本:村山功 / 美術監督:田中里緑 / キャラクターデザイン原案:稲上晃、川村敏江、香川久、馬越嘉彦 / 作画監督&キャラクターデザイン:青山充 / 美術監督:平間由香 / 色彩設計:澤田豊二 / 美術デザイン:平澤晃弘 / 音楽:佐藤直紀、高梨康治 / 声の出演:水樹奈々、水沢史絵、川田妙子、くまいもとこ、沖佳苗、喜多村英梨、中川亜紀子、小松由佳、こおろぎさとみ、松野太紀、三瓶由布子、竹内順子、伊瀬茉莉也、永野愛、前田愛、仙台エリ、草尾毅、入野自由、朴路美、樹元オリエ、榎本温子、山口勝平、松来未祐、渕崎ゆり子、岡村明美、本名陽子、ゆかな、田中理恵、関智一、矢島晶子、池澤春菜、谷井あすか / 配給:東映
2010年日本作品 / 上映時間:1時間12分
2010年3月20日日本公開
公式サイト : http://www.precure-allstars.com/
[粗筋]
ある休みの朝。花咲つぼみ(水樹奈々)と来海えりか(水沢史絵)は、妖精のシプレ(川田妙子)とコフレ(くまいもとこ)の姿が見当たらないことに気づく。見まわせば机の上に、「探してください」というメッセージと共に地図が置いてある。事情の把握できないまま、ふたりは地図の指し示す場所を訪ねた。……海の上なんだが。
しかし、訪れてみるとそこには、海の上だというのに大きな遊園地が出来ていた。フェアリーパークと名付けられたこの遊園地は、千年に一度だけ現れるレインボージュエルの奇跡の力を借りて作られているのだという。レインボージュエルを封じた貝を中心に、その瞬間をみんなで祝うために、シプレやコフレたち妖精たちによってこの遊園地は開かれたのだ。
不思議な光景に困惑しつつ園内を見物していたつぼみたちは、友達を捜しているという桃園ラブ(沖佳苗)たち4人と巡り逢う。これもなにかの縁、とつぼみとえりかは友達捜しを手伝うことにした。
いつしか意気投合していた6人だったが、そんな彼女たちの前に突如、轟音と共に怪人たちが舞い降りた。暴れ回る怪人たちを前に、つぼみたちが変身しようとしたそのとき、一緒に友達捜しをしていたラブたち4人が先にプリキュアに変身して、怪人たちの前に立ち塞がる。それだけではない――さらに11人のプリキュアたちが登場して、怪人たちは撤退する。ラブたちだけでなく、彼女たちが探していた友達というのも、つぼみたちの先輩に当たる伝説の戦士プリキュアだったのだ。
つぼみは大勢の仲間がいることに喜び、えりかは困惑するが、フェアリーパークを経営する妖精たちは不安を顕わにする。もしレインボージュエルが闇の力を持つ者に奪われれば、世界は危険に晒される。
果たしてそのとき、巨大な影が現れて、レインボージュエルを強奪していった……!
[感想]
『Yes! プリキュア5 GoGo! お菓子の国のハッピーバースディ♪』と同時上映で公開された短篇に始まったプリキュアオールスターズも、これで3作目、長篇としては2作目である。
オールスター、と簡単に言うが、1作目で既に11人、前作では14人、今回は何と17人に達している。前作の時点でかなりギチギチ、全キャラに見せ場が設けられたとはとうてい言えない内容になっていたが、今回はさらに著しい。物語としては、最新作『ハートキャッチプリキュア!』のふたりを中心として、旧作の面々が手助けしてピンチを切り抜け、強大な敵に立ち向かっていく、という構成だが、新人ふたりと主に絡むのは前作『フレッシュプリキュア!』の4人であり、作品の年代が古くなればなるほどに出番は減っている。例えば「プリキュアといえばやっぱり初代だよな」という執着を引きずっている人、「俺は5人組時代の黄色い娘を贔屓にしとるんじゃ」というこだわりを捨てていない人には、物足りなさを禁じ得ないストーリーであろう。
また、どう考えても経験不足、力不足の感が否めない新米ふたりがやたら重用される筋書きそのものに違和感を覚える人もいるはずだ。何せ、他のプリキュアたちは全てボス級の敵役と渡り合い生き延びてきた古兵であるのに対し、新人ふたりは未だ力を使いこなせていない節さえあり、そもそも戦い慣れてさえいない。途中、強いメンバーが敵の足止めを担い、新人たちが一種使いっ走りのような役回りを演じるのはまだ納得がいくとしても、終盤の戦いでああいうポジションにつくのはさすがに不自然だ。
ただ、忘れてはならないことがある。このシリーズはいわゆる“大きなお友達”の支持も厚いが、それ以前に小さな子供向けに作られている、ということだ。第1作から続けて観ている、大人の歓心を惹くのではなく、子供達を惹きつけ楽しませることが第一義なのである。小さすぎて、或いは生まれてさえいなかったかも知れない頃のキャラクターが活躍するよりは、記憶にあり馴染み深いキャラクターたちが巡り会い語り合う、という内容のほうがよほど親しみやすい。中心を現在テレビで活躍しているふたりに設定し、従来のプリキュアたちとの架け橋をついこの間まで跳ね回っていた4人に委ねるのはごく当然の配役だろう。そのうえで、他のキャラクターたちにも一定の出番を与えているのだから、充分に“いい仕事”をしている。
このシリーズの劇場版は、というよりテレビシリーズから一貫した美点として、見せ場の作り方が大変に上手い。あざとい、とも言えるが、ちゃんと伏線を用意して、最後にグッとくる展開に仕立てあげてしまう。今回でいえば、ポイントは“観覧車”だ。考えてみると、これがクライマックスでの不自然なくらいの見事な呼吸を裏打ちしている、とも捉えられる――まあ、それでも強引には違いないのだが。
各個の見せ場が乏しいとは言い条、そこに工夫を怠っていないので、旧作のファンでも決して強い不満は覚えないはずだ。プリキュアたちについて言えば、レギュラーでは使い回しで済まされているはずの変身や必殺技のシーンを、新たに書き起こしたり、まったく違う見せ方をしてみたりしている。
また、本筋に関わらないまでも、存在の大きかった脇役をなるべくあちこちに登場させてくれているのも嬉しい。本格的に観始めたのがプリキュア5以降である私の場合、敵キャラで唯一二期続けて登板したブンビーさんがちらちらと顔を見せているのが妙に快い――考えると、プリキュア以外で複数の劇場版作品に登場した唯一のキャラクターになった、ということでもあるし。
もうひとつ、3DCGを使う場面が作を追うごとに増え、どんどん洗練されていることも、“大きなお友達”側としては注目したいところだ。劇場版プリキュアとしての先行作『フレッシュプリキュア! おもちゃの国は秘密がいっぱい!?』でもボス級の敵はほぼフルCG、それに立ち向かうプリキュアの姿が一部3DCGを用いて描かれていた。あれでもかなり高水準だったと思うが、本篇に至っては、意識しなければ気づかないようなところにまで用いられているようで、私もすべて把握できたのか心許ない。ボスや最後の大技は無論、ロングショットでの決めポーズなども3DCGと見られる。気づかせないのも見事だが、気づいたとしても、そのクオリティの高さには感嘆させられるはずだ。
3DCGといえば、やはり出色はエンディングだろう。テレビシリーズでは2009年の『フレッシュプリキュア!』で3DCGによるダンスつきのものが採用され、2010年の『ハートキャッチプリキュア!』でもこれが踏襲されているが、このオールスターズDXでは、各作品のオープニングテーマのメドレーに乗せて、すべてのプリキュアたちが3DCGとなって踊っている。この絢爛豪華な一幕だけでも、ファンならば一見の価値がある、と言っていい。
圧縮率が高いだけに、どのシリーズ、どのキャラクターが好きか苦手か、によって多少ならず感想に差が生じてくるだろうが、シリーズを2作以上観ていて、なおかつ現在も楽しんでいるような人ならば、まず確実に一定以上の満足が得られるだろう。極めて良質の、オールスター・ムービーである。
しかし、2年連続でオールスターが公開されたということは……もしかしたら、秋頃公開が定着した通常の劇場版とともに、こちらも恒例にしていくつもりかも知れない。まだ『ハートキャッチプリキュア!』が始まって間もないので何とも言えないが、仮にハートキャッチのふたりが続投したとしても、またメンバーが増えるのは確実と思われる(いまのテレビシリーズを観ていても、引退済に敵役を含めると実は5人のプリキュアがひしめいている)。
本篇の初日舞台挨拶で出演者は、AKB48に対抗、などと言っていたそうだが、あながちあり得ない話でもない――さすがに、限度があると思うんだが、いったいどこまで続くのやら。
関連作品:
『Yes! プリキュア5 GoGo! お菓子の国のハッピーバースディ♪』
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