『クライモリ デッド・エンド』

クライモリ デッド・エンド [DVD]

原題:“Wrong Turn 2 : Dead End” / 監督:ジョー・リンチ / キャラクター原案:アラン・B・マッケルロイ / 脚本:テューリ・メイヤー、アル・セプティエン / 製作:ジェフ・フライリック / 製作総指揮:エリック・フェイグ、ロバート・クルツァー / 撮影監督:ロビン・ローウェン / プロダクション・デザイナー:ブレンタン・ハロン / 編集:エド・マークス / 衣装:ヒサミ・ヤマモト / 特殊メイクアップ効果デザイナー:ビル・テレザキス / 視覚効果スーパーヴァイザー:アンドリュー・カー / キャスティング:コリン・クラーク、ナンシー・ネイアー・バティーノ,CSA、ケリー・マーティン・ワグナー / 音楽:ベアー・マックレアリー / 出演:エリカ・リーセン、ヘンリー・ロリンズ、テキサス・バトル、ダニエラ・アロンソ、スティーヴ・ブラウン、アレクサ・パラディノ、マシュー・カリー・ホームズ、クリスタル・ロウ、キンバリー・コードウェル、ケン・カージンガー、ウェイン・ロブソン / サミット・エンタテインメント/コンスタンティン・フィルム製作 / 映像ソフト発売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント

2007年アメリカ作品 / 上映時間:1時間37分 / 日本語字幕:?

2008年4月4日DVD日本盤発売 [amazon]

DVDにて初見(2010/05/03)



[粗筋]

 世界大戦により崩壊した社会でのサヴァイヴァル、という設定で行われるリアリティ・ショーの新番組『アポカリプス』。ウェストヴァージニア州の広大な森で、その撮影は始まった。

 出演者はオーディションで選ばれた6人。だが、その中でただひとりの芸能人であるキンバリー(キンバリー・コールドウェル)が、何故か集合時刻になっても姿を現さなかった。番組のホスト役であり、元海兵隊員であるデイル・マーフィー(ヘンリー・ロリンズ)とカメラ・クルーのマイケル(マシュー・カリー・ホームズ)は、新米プロデューサーであるマーラ(アレクサ・パラディノ)を説得して、代役として参加させることを決める。

 ゲームはまず、ふたりひと組で行動することから始まる。森の中には仕掛けがあり、それを反応させると、参加者にはミッションが下される。それをこなしていくことで、生き残る可能性を高められる。最終日の時点で“生き残り”となった者が勝者として、賞金を手にすることが出来るのだ。

 かくして、新しいサヴァイヴァル・ゲーム『アポカリプス』は幕を開ける。だが、彼らは知らなかった――これが本当の、“生き残り”のゲームであることを。森の中に、人間を狩る一家が棲みついていたことを……。

[感想]

 続篇、という体裁を取っているが、恐らく前作をあえて観る必要はない。劇場公開の際に鑑賞した前作について、あまり思い出せないまま本篇に臨んだ私だが、ほとんど戸惑うことはなかった。単体でもきちんと成立する。

 その点は好感が持てるし、前作の悪役たちのモチーフを活かしつつも、『悪魔のいけにえ』以来のパターンにはまり切らないよう出だしや人物配置に工夫を凝らしたのはいいのだが、惜しむらくはあまり効果を上げていないことだ。

 日本ではあまり普及しなかったが、アメリカでは一大ブームとなったリアリティ番組をベースにし、キャラクター紹介を番組の映像という体裁で盛り込むのはなかなかの着想だが、いざ悲劇が始まると、ほとんど意味を為していない。せっかく随所にカメラが仕掛けてあるのだから、それを応用して、ひとつの惨劇を多角的に描くことで緊張や恐怖を演出することも可能だったはずなのに、ピンポイントでしか用いていないのは勿体ない。ゲーム進行のための仕掛けも、作中で利用したのは一箇所だけ、番組がどのような企画をどんな風に見せたかったのか、さえ窺えないので、作品世界をかなり軽くしてしまっている。

 だが、続篇ものホラー映画に多い、予算の制約のきつそうな作品ながら、スラッシャーの恐怖、インパクトをきちんと盛り込んでいるのも確かだ。ところどころ具体的な犯行場面を撮さない、という趣向を盛り込みつつ、グロテスクな容貌をした一家の異様な行為で薄気味悪い雰囲気を掻き立てる。ピンポイントで凄惨な犯行や犠牲者の姿を織り込んでいるが、その取捨選択も巧い。

 リアリティ番組の設定が最も活きた部分と言えるのが、襲撃者たちに抵抗し、確実に成果を上げられるキャラクターを組み込んだことだろう。そのお陰で先読みがしづらくなったし、終盤の緊迫感の醸成とカタルシスの演出にも貢献している。

 とはいえ、手触りはある意味有り体のスラッシャーでしかなく、突出したアイディアが盛り込まれている訳でも、『ヒルズ・ハブ・アイズ』のアレクサンドル・アジャ監督のように傑出した表現力を示している訳でもない。先鋭的な新作との出逢いを求めるようなホラー愛好家ならば歯痒い想いを抱くだけだろうが、ただスラッシャーものが好き、という素直なファンなら一定の満足は得られるだろう――無論、耐性のない人には間違ってもオススメしないが。

関連作品:

クライモリ

悪魔のいけにえ

ヒルズ・ハブ・アイズ

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