『タイタンの戦い(3D・字幕版)』

『タイタンの戦い(3D・字幕版)』

※今回は撮影を忘れたため、画像は手持ちの素材で簡単にでっち上げたイメージです。

原題:“Clash of the Titans” / 監督:ルイ・レテリエ / 脚本:トラヴィス・ビーチャム / 脚本&ストーリー原案:フィル・ヘイ、マット・マンフレディ / オリジナル脚本:ビヴァリー・クロス / 製作:ベイジル・イヴァニク、ケヴィン・デ・ラ・ノイ / 製作総指揮:リチャード・D・ザナック、トーマス・タル、ジョン・ジャシュニ、ウィリアム・フェイ / 撮影監督:ピーター・メンジースJr. / プロダクション・デザイナー:マーティン・レイング / 編集:マーティン・ウォルシュ、ヴァンサン・タベロン / 衣装:リンディ・ヘミング / 視覚効果監修:ニック・デイヴィス / 特殊効果&アニマトロニクス監修:ニール・コーボールド / 特殊造形監修:コナー・オサリヴァン / ヘア&メイク:ジェニー・シャーコア / 音楽:ラミン・ジャヴァディ / 出演:サム・ワーシントンジェマ・アータートンマッツ・ミケルセンアレクサ・ダヴァロスジェイソン・フレミングレイフ・ファインズリーアム・ニーソン、ティン・ステイペルフェルト、ルーク・エヴァンスイザベラ・マイコリーアム・カニンガム、ハンス・マシソン、アシュラフ・バルフム、イーアン・ワイト、ニコラス・ホルト、ヴィンセント・リーガン、ポリー・ウォーカー、ルーク・トレッダウェイ、ピート・ポスルスウェイトエリザベス・マクガヴァン / サンダーロード・フィルム/ザナック・カンパニー製作 / 配給:Warner Bros.

2010年アメリカ作品 / 上映時間:1時間46分 / 日本語字幕:太田直子

2010年4月23日日本公開

公式サイト : http://www.titan-movie.jp/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2010/06/03)



[粗筋]

 時は遙か昔、まだ人と神が近かった頃の物語。

 人間は、創造主である神に対して敬意を払わなくなってきた。暴虐を繰り返し、いたずらに人の命を奪う神に、アルゴスの王ケフェウス(ヴィンセント・リーガン)が遂に宣戦布告し、岬に建立されたゼウス像を破壊する、という不敬に及ぶ。

 だが、その場にゼウス(リーアム・ニーソン)の兄であり、冥府の王であるハデス(レイフ・ファインズ)が眷属ハーピーと共に襲来、アルゴスの兵たちを一掃した。

 このとき、不運にも巻き添えで命を落とした者たちがいた。漁師のスパイロス(ピート・ポスルスウェイト)とその妻子である。一家で生き残ったのは、赤子のときスパイロスに拾われ育てられたペルセウス(サム・ワーシントン)ただひとり。彼はアルゴス兵の生存者たちに救われ、そのままアルゴスの都へと連れられた。

 多くの犠牲を払ったにも拘わらず、王都の人々は「神々の勢力を追い払った」と喜び祝杯を掲げていたが、そこへまたしてもハデスが襲来する。神よりも美に恵まれた、と増長するケフェウスの妻カシオペア(ポリー・ウォーカー)の容貌から輝きを奪うと、アルゴスの人々に二者択一を突きつけた。

 間もなくハデスは自らの分身である魔物クラーケンをアルゴスに放つ。助かりたければ、アルゴスの王女アンドロメダ(アレクサ・ダヴァロス)を生贄に捧げよ、と。

 そして、おののく人々をしり目に去ろうとしたそのとき、ハデスはペルセウスに、思いがけない言葉を放つ。

 お前は、神と人とのあいだに生まれた子供だ、と。

[感想]

 近年、最もコンスタントにアクション映画を製作しているのは、リュック・ベッソン率いるヨーロッパ・コープである、と言い切っていいだろう。『レオン』や『ジャンヌ・ダルク』など自らの監督によりクセがあるが独自の美学に彩られた作品を発表してきたリュック・ベッソンは、のちに監督は新人や撮影監督出身の人物に委ね、自らは製作や原案・脚本を担当するようになった。

 そういう形でリリースされたなかで、最も成功したのは『トランスポーター』シリーズだろう。リュック・ベッソン作品と共通する新鮮な美女にカーアクション、それらをハードボイルドな雰囲気で固めた作品群は人気を博し、現在までに第3作まで製作されている。その2作目までを担当したのが、本篇のルイ・レテリエ監督であった。

 ハリウッド初進出となった『インクレディブル・ハルク』でもドラマ部分の穏やかな表現とCGを主体としたダイナミックな演出をうまく噛み合わせる技を見せていたが、本篇では実写によるドラマ部分を比較的クラシカルな画面作りで仕上げることで、映像としての完成度は現代のものながら、往年の冒険映画に近い雰囲気を醸成している。広大な大地を旅するペルセウスたちの姿をロングショットで捉えたり、思い悩む姿を鮮やかな空を背景に撮したり、という構図は有り体だが、それ故に観客に妙な不安や居心地の悪さを与えず、作品世界に浸りやすくしている。

 そしてその分だけ、アクション部分の派手さ、大胆さ、迫力は出色だ。無数の巨大スコーピオンとの死闘は、誰がどこにいるのか把握できないほど混沌としているが、それだけに異様な場面に居合わせている、という臨場感をもたらすし、逆に敵の出方を終始窺いながらの戦いであるメデューサとのひと幕は、静と動のメリハリが巧みで見応えに富んでいる。クライマックス、街を覆い尽くさんばかりの魔物クラーケン出没に至っては、主人公・ペルセウスが空飛ぶ馬ペガサスに跨り、クラーケンの触手が街を蹂躙するなかを訳あってハーピーを追って飛び回る、という趣向で、スコーピオン戦以上のど派手な映像が展開する。本篇のオリジナルは1981年に公開されており、パペットにコマ撮りで動きをつけていく、というごくシンプルな方法を採っていたが、本篇ではクリーチャーや動きの特徴を踏襲しつつも、それでは決して出来ない映像に仕上げている。

 率直に言えば、ドラマとしての奥行きはない。神と人間の差違について考察をする者はいないし、戦いを巡る運命論が展開されるわけでもない。ペルセウスは自らの“異能”を安易に受け入れているわけではなく、自らを育ててくれた家族と同じ人間たらんとしながらも、アルゴスの人々からは特別視され悩むが、いざ受け入れたあとはあまり悩んでいない――そうする暇もない、という話運びであるとは言え、ちょっと拍子抜けではある。だがこれも、現実にはあり得ないスペクタクルを観客に心置きなく堪能させるための意識した単純さであり、娯楽映画たらんとする潔さ、そういった映画に対する敬意の証でもある。

アバター』と異なり、もともとは2Dで製作されていたため、3D版のクオリティには疑問が残ったが、それでも戦闘場面のインパクトなど、3Dに加工されたことで迫力を増しているのも事実だ。――生憎と、私が劇場に足を運ぶのがそこでの上映終了の回であったため、ほとんどの人にとっては遅きに失してしまったが、これは間違いなく映画館で観る甲斐のある作品である。現実を吹き飛ばすほどの迫力にしばし身を浸し、爽快な結末に憂さを忘れ、あとには何も残さない。ある意味では娯楽映画の鑑と言える1本である。

関連作品:

トランスポーター

トランスポーター2

ダニー・ザ・ドッグ

インクレディブル・ハルク

ターミネーター4

アバター

ハート・ロッカー

96時間

コメント

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