新耳袋トークライブ80

 昨晩、どうにか『BIUTIFUL ビューティフル』の感想を書き上げたあと、毎度の徹夜イベントのためにお出かけ。さすがに深夜、自転車でえっちらおっちら新宿まで赴き、眠気でふらふらになりながらペダルを漕ぐことを考えるとぞっとしないので、当然のように電車を利用しました。

 記念すべき80回目なので、何かしらの仕掛けが――と期待したかったところですが、今日はそういう訳にはいかない。覚悟はしていましたが、案の定でした。

 これまでこのブログでトークライブのレポートをする際にはずっと名前を伏せていましたが、この数年、木原浩勝氏の“弟子”という位置づけで、聞き役として登壇したり、時々ユニークな経験を披露していた人物がいました。今年の春までKagrraというヴィジュアル系バンドのヴォーカルとして活動していた、一志というミュージシャンです。

 この一志氏が先月18日、突然、この世を旅立たれました。

 師匠として、一志氏がメインとして開催していた『一志耳袋』というイベントでも一緒に登壇し、バンド解散後のソロ活動も木原氏の事務所でバックアップを行っていたようで、18日から数日間、木原氏は本当に大変だったそうです。語られた事情についてはいつも以上に詳述は出来ないのですが、表面的にかなり平静を取り戻したように見受けられても、木原氏の口振りにはまだ動揺が窺えました。

 冒頭1時間ほどはまずこうした事情の説明と木原氏の率直な心情を語るに留まり、オープニング映像と休憩を挟んで、第2部でようやく新耳Gメンのうち映画秘宝に関わるお三方が登壇、DVDが発売されたばかりの劇場版について、新しい発見と裏話が語られました。本篇の映像に奇妙な部分があった、ということで会場にて検証が行われたのですが、私にはいまいちよく解らず、帰宅後自分で再度確認してみたものの……やっぱりよく解らりませんでした。作中でも採り上げられている奇妙な音声のひとつが、表示されているテロップと違った言葉に聞こえる、というのは私にも解ったんですけれど。

 再びの休憩を挟んでの第3部は、ふたたび一志氏の話に戻りました。これも詳しくは書きませんが、最後には会場のあちこちからしゃくり上げる声が聞こえてきた。

 私は本当にこのイベントを通してのみ一志氏を存じていただけです。それでも、『殴り込み』シリーズが好きで、自分でも怪奇スポットに赴いたり、けっこう地味な私生活について語ったりする姿に好感を抱いていました。私がこの報に初めて接したのは、ちょうど各界の著名人の訃報が相次いでいた28日前後だったのですが、間近に見る機会の多かった人物だけに、この1件が何よりも衝撃でした。

 そういったわけで、怪談イベントとしては非常に物足りなかった、と言わざるを得ないものの、長年このイベントに足を運び続けている者としては感慨深く、印象に残る回となりました――出来れば普通に愉しみたかったところですが、それはきっと一志氏当人も感じていることでしょうから、まああまり言いますまい。木原氏も、新作の予定を控えて怪談の取材に臨まねばならないようなので、次回はきっと本来の、笑いと恐怖のない混ざったイベントに戻っていることでしょう。

 最後に改めて、一志氏のご冥福をお祈りします。

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