『五福星』

五福星 デジタル・リマスター版 [DVD]

原題:“奇謀妙計 五福星” / 英題:“Winners & Sinners” / 監督:サモ・ハン・キンポー / 脚本:サモ・ハン・キンポーバリー・ウォン / 製作:レイモンド・チョウ / 撮影監督:リッキー・リュウ / 音楽:クリス・バビダ、フランキー・チェン / 出演:サモ・ハン・キンポー、ジョニー・シャム、リチャード・ン、チャールズ・チン、フォン・ツイファン、チェリー・チャン、ジャッキー・チェン、ユン・ピョウ、イップ・トン、ムーン・リー、ジェームズ・ティン、ラム・チェンイン、タイ・ポー / 配給:東映 / 映像ソフト発売元:Paramount Home Entertainment Japan

1984年香港作品 / 上映時間:1時間40分 / 日本語字幕:?

1984年8月4日日本公開

2011年4月8日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]

大成龍祭2011上映作品

DVD Videoにて初見(2011/07/25)



[粗筋]

 キュウス(サモ・ハン・キンポー)はそれなりに腕のある盗賊である。だがある晩、ちょっとした手違いで逮捕され、刑務所に送りこまれてしまった。

 そこで同時期に収容された、社会運動家のジャック(ジョニー・シャム)、車上荒らしのパイプ(リチャード・ン)、詐欺師のラム(チャールズ・チン)、真面目なのに何故か別荘暮らしをしていたランクス(フォン・ツイファン)の4人となんとなく意気投合、出所した時期も同じだったこともあり、ジャックの親戚の家に厄介になりながら、清掃業を営むことにした。

 デブで要領の悪いキュウスは他の4人から軽く見られがちだが、ずっと孤独だったキュウスはそんな生活にも幸せを感じる。ジャックの妹で、ラムやパイプから秋波を送られているメイ(チェリー・チャン)も、そんなキュウスにいちばん好意を抱いているようだった。

 色々と揉め事や騒動を起こしつつも愉しくやっていたある日、清掃を頼まれたマフィアの大物チウ(ジェームズ・ティン)の家でパーティが開かれることを知ったキュウスたちは、策を弄して潜入した。そこで客たちに清掃業の宣伝をしていたところ、突如チウに呼び出され、「ケースは何処だ」と脅しをかけられる。

 ケース、っていったい何? なんでこんなきな臭い空気になってるの? 実はキュウスたち、知らず知らずのうちにとんでもないトラブルの火種を抱えこんでいたのだ――

[感想]

 データに記した通り、ジャッキー・チェン出演作ばかりを集めた“大成龍祭2011”上映作品である――が、はっきり言って本篇のジャッキーの扱いはカメオに近い。本当の主演であるサモ・ハン・キンポーを中心とする仲間たちの輪にも加わってはいないので、ジャッキーの活躍を、と期待するとどうにも物足りない。

 だが、そんなジャッキーながら、作中では最大の見せ場の一つを任されているので、彼目当てで観てもある程度は納得のいく内容だ。ローラースケートで犯人を追い始め、車に掴まって超高速で走り、バイクを接収して追いすがり、とどめは大パニックに至る。普通なら題名にもある“五福星”、中心人物の誰かが担っていたほうがいい役割だが、ストーリーの必要性も多少あるとは言え、こういう場面を任せ、引き受けるあたりに、ジャッキーとサモ・ハン監督の信頼関係を窺わせる。少なくとも演じている当人が愉しげなので、観ている方も快い。

 仮にジャッキー目当てで鑑賞したとしても、彼が『蛇拳』以降に完成させたコメディ・アクション路線とほぼ同じライン上にある内容には、さほど不満を抱かないだろう。基本的にはアクション抜きでコメディを演じているが、ブルース・リーの『燃えよドラゴン』に出演していたほどのキャリアと優れた身体能力を持つサモ・ハンが監督と主演を兼ねているだけに、アクションが始まると息を呑むほどの迫力が漲る。ジャッキー演じる警官と初対面ながら息の合った戦いぶりを見せる序盤のくだりと、クライマックス、倉庫の設備や構造を駆使した暴れぶりは圧巻だ。

 物語自体は、いかにも香港映画的と言おうか、雑で大仰、あまり細部の平仄を合わせることを考慮していない。伏線はちゃんと考えてあり、一見縁のない出来事に見えたものが合流して盛大なクライマックスに至る、という流れは巧いが、その一方でまるで必然性のないギャグシーンがあったりするし、何より最後に明かされる新事実は、そのときは驚くし笑いも誘うのだが、よくよく考えると何故あんな細工をしたのか、かなり意味不明だ。

 しかし、その一種支離滅裂なストーリー展開が、破天荒なアクションやコメディ描写の数々とはしっくり来る。変に現実的であったり、穏当なアクションでまとめていたら、この突き抜けたような愉しさはなかっただろう。

 同じサモ・ハン、ジャッキー、そして本篇ではほぼオマケ的出演だったユン・ピョウが全力を発揮している『プロジェクトA』が次に来てしまっただけに、どうも色褪せてしまった感があるが、アクションにもコメディにもきっちり力を注いだ、好篇であることは確かだ。

関連作品:

燃えよドラゴン

メダリオン

少林寺木人拳

ヤング・マスター/師弟出馬

プロジェクトA

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明

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