『アクシデント』

『アクシデント』

原題:“意外 Accident” / 監督:ソイ・チェン / 脚本:セット・カムイェン、ニコール・タン、ミルキーウェイクリエイティヴ・チーム / 製作:ジョニー・トー / 製作総指揮:ジョン・チュン / 撮影監督:フォン・ユエンマン(HKSC) / 美術&衣裳:シルヴァー・チョン、スタンリー・チョン / 編集:デヴィッド・リチャードソン / スタント指導:ジャック・ウォン / 音楽:ザヴィエル・ジャモー / 出演:ルイス・クー、リッチー・レン、ラム・シュー、ミシェル・イェ、フォン・ツイファン、モニカ・モク、ハン・ユイチン、チャン・モンワー、ライ・チョンウィン / 銀河映像(香港)有限公司製作 / 配給:Broadmedia Studios

2009年香港作品 / 上映時間:1時間26分 / 日本語字幕:上田綾乃 / PG12

2011年10月8日日本公開

公式サイト : http://www.accident-igai.net/

新宿武蔵野館にて初見(2011/10/08)



[粗筋]

 最も巧妙な暗殺の手段は、殺人であると悟られないことだ。

 ブレイン(ルイス・クー)、オヤジ(フォン・ツイファン)、太っちょ(ラム・シュー)、女(ミシェル・イェ)の4人組は“悟られない暗殺”のプロフェッショナルである。対象者の生活を調べ尽くし、その性格や生活習慣を利用して、緻密に計画を施す。命の炎が消えるその瞬間でさえ、対象者は自分が暗殺されたと気付くことはない。

 だが、ある犯罪組織のボスを始末する計画で、危うく綻びが生じかけた。オヤジが吸殻を現場に捨ててしまったのだ。ブレインがそれとなく回収して事なきを得たが、4人のあいだには不協和音が響きはじめる。

 そこへ舞い込んだ新たな依頼は、脚が不自由で車椅子を利用している男の暗殺であった。依頼人は、一見したところ献身的に父親の介助をしている息子。しかし、ブレインは私情を挟むことなく、暗殺の準備にかかった。

 4人組が計画したのは、巧みに父親を感電死させる、というものである。しかし、天候まで利用して偶然の事故を装う計画は、なかなか実行する機会を得られなかった。

 待ちに待ち続け、ようやく訪れた千載一遇の好機――しかしそこで、思わぬ事態が発生した……

[感想]

 たとえ監督が誰でも、製作にジョニー・トーが加わると、基本的に彼の作品のテイストが加わると捉えていいのかも知れない。本篇の監督はホラーで注目され、サスペンス『ドッグ・バイト・ドッグ』で一躍その名を知られた俊英だが、本篇の雰囲気は見事にジョニー・トー監督のそれに迫っている。

 映画ではお馴染みとなっている、暗殺者を軸としたストーリーである。粗筋の冒頭に記したように、暗殺であると悟られない方法を用いるのが特徴だが、これも最近ジェイソン・ステイサム主演によってリメイクされた『メカニック』で取り扱っており、珍しいが作例のある趣向だ。

 しかし本篇は、暗殺者を扱った映画の常道を辿っていない。観ながら次第に気づく、その感覚こそが見所なので詳しくは書かないが、この切り口はかなり珍しく、優れた着眼だ。

 脚本家にジョニー・トー作品の脚本にときおり加わるミルキーウェイクリエイティヴ・チームの名前がクレジットされており、エンドロールには、“ジョニー・トー組の頭脳”と呼ばれるヤウ・ナイホイの名前も見られる。そうしたことからも、本篇は脚本の根底にもジョニー・トー監督作品と繋がるスタイルが組み込まれていることが窺えるが、実際この作品終盤の展開は『マッスルモンク』や『MAD探偵 7人の容疑者』に似た、晦渋なひねりが施されている。

 ただ、こうした作品よりも本篇はよりリアルで、解りやすい趣向を取っている。そのために、一種シュールとも言える余韻を残す前述の2作品と比べると、その趣向が持つ悲劇性が際立った格好だ。

 本篇の秀逸なところは、終盤で明かされる趣向が、誰にとっても不明瞭とは言い難いことである。人によっては、その描写の意味がかなり早いうちに理解できるが、主人公であるブレインがなかなかなかなか気づかないことに訝しさを覚えるはずだ。しかし、だからこそ最後に彼が味わう衝撃が、静かに重くのしかかってくる。徹底して難解に描いていたとしたら、恐らく焦点が暈けて、本篇の余韻も違ったものになっただろう。

 全体的に、音楽を抑え加減に用いているのも効果的だ。暗殺計画を遂行している最中の緊迫感にも、時計の針が刻むような音を静かに響かせることで緊張を高めているが、その静けさが最後まで作品の持つ、知性的だが空虚で、それでいて情緒豊かな空気に貢献している。特にクライマックス、日蝕を用いたくだりは鮮烈で印象深い。

 物語は更なる悲劇で締めくくられ、観終わった直後は遣る瀬なく感じられる。しかし同時に、その結末がほんの少し恩寵のように思えるのも、説明過多にならない中で、必要なドラマをきっちりと織りこんでいるが故だ。

 尺は短めだが、内容の濃い、傑出したスリラーである。

関連作品:

柔道龍虎房

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冷たい雨に撃て、約束の銃弾を

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