原題:“Paranormal Activity 3” / 監督:ヘンリー・ジュースト、アリエル・シュルマン / 脚本:クリストファー・B・ランドン / 製作&原案:オーレン・ペリ / 製作:ジェイソン・ブラム、スティーヴン・シュナイダー / 製作総指揮:アキヴァ・ゴールズマン / 撮影監督:マグダレナ・ゴーカ / プロダクション・デザイナー:ジェニファー・スペンス / 編集:グレゴリー・ポルトキン / 衣装:リア・バトラー / キャスティング:テリ・テイラー / 出演:ローレン・ビットナー、クリストファー・ニコラス・スミス、クロエ・センガリー、ジェシカ・タイラー・ブラウン、ダスティン・イングラム、ハリー・フット、ブライアン・ボーランド、スプラグ・グレイデン、ケイティ・フェザーストーン / 配給:Paramount Japan
2011年アメリカ作品 / 上映時間:1時間24分 / 日本語字幕:川又勝利 / PG12
2011年11月1日日本公開
公式サイト : http://www.paranormal.jp/
TOHOシネマズ日劇にて初見(2011/10/31) ※前夜祭
[粗筋]
2005年、クリスティ(スプラグ・グレイデン)とダニエル(ブライアン・ボーランド)の新居に、クリスティの姉ケイティ(ケイティ・フェザーストーン)が古びたダンボールに詰められた荷物を持ち込んだ。やがて、クリスティたちの家に押し入った賊によって奪われたそのテープには、クリスティとケイティの姉妹が忘れていた過去の出来事が、まざまざと記録されていた。
それは1988年の晩夏。幼いケイティ(クロエ・センガリー)とクリスティ(ジェシカ・タイラー・ブラウン)は、母ジュリー(ローレン・ビットナー)とその恋人デニス(クリストファー・ニコラス・スミス)とともに、真新しい家に引っ越した。ジュリーとデニスは未だ籍を入れていないが、デニスと娘ふたりの仲はよく、彼らは新しい生活の幸せなことをまったく疑っていなかった。
だが、次第に奇妙な出来事が起きはじめる。発端は、クリスティが頻繁に“トビー”という、見えない友だちのことを口にしはじめたことであった。そして、デニスが悪戯心を起こして、ジュリーとの熱い夜を映像に記録しようとした矢先、大きな地震が起き、慌てて子供たちを助けに行ったふたりが部屋を飛びだしたあと、倒れたまま回り続けていたカメラは、奇妙な現象を捉える。
この家には何かがある――そう考えたデニスは、ジュリーとの寝室と、子供たちの部屋にカメラを据え、定点観測を試みた。
そしてカメラは、恐るべき現象の数々を目撃する……
[感想]
僅かな製作費で完成されながら空前の大ヒットを遂げ、世界的な社会現象にまでなった『パラノーマル・アクティビティ』の、2度目の続篇である。
前作は、1作目のヒロイン・ケイティの妹であるクリスティの家族を襲った超常現象を描いていたが、関係者が事実上一掃されてしまったこともあってだろう、3作目である本篇は物語を過去に移している。人によって意見は違うだろうが、メタ・フィクションに走ったり奇妙な趣向に逃げることもなく、一家のなかで起きた怪奇現象を、ビデオによって撮影されたものに限定して綴ることに徹し、その枠内で新しい恐怖を描き出そうとする気概は評価出来る。
しかし、時間軸を遡ることで、普通なら一連の怪奇現象の原因や、何らかのきっかけらしきものが明かされる、と考える人は多いはずだが、そういう意味では必ずしも満足のいく内容とはなっていない。いちおうは、前作、前々作の背後に横たわると思しい事実が仄めかされるが、今回急に登場したキーワードが多く、密接に繋がっているとは考えがたい。けっきょく、更に続篇を作るために、意識的に謎を残したように感じられてしまうのだ。これは物足りない、というより、さすがにあざといという印象を受ける。
また、これについてはシリーズを通して相変わらず、ではあるのだが、怪奇現象のひとつひとつがその場限りで、繋がりも意図も感じられないのがやはり引っかかる。本篇はそれが特に顕著で、個々のシーンは素晴らしいが、あとになって振り返るとモヤモヤした気分になる。3作目にして登場した、首振り扇風機の台座にカメラを設置した左右に動く映像で描かれる怪奇現象は、これまでの様式を踏まえつつもユニークで、恐怖も新味も備わっているのに、それを更に活かすアイディアがないのが惜しまれる。なかなか怪奇現象の存在を認めようとしなかったジュリーが翻意するくだりなどは実にいいのだが、私が鑑賞していたとき笑いが湧いた、という事実からも、少々ピントがずれていることがお解りになるのではなかろうか――恐怖と笑いは紙一重、というのも真理だが、少なくともあのタイミングで証明するべきではない。
と、辛いことばかり連ねたが、ホラー映画として決して出来は悪くない、というのは、観ているあいだの不穏な気配、緊迫感、そして恐怖の表現は優秀なのだ。伏線を積み重ね、それを膨らませる、というアイディアこそ不足しているが、表現力は素晴らしい。音楽を極力用いず、本当に素人が撮影したかのような映像を観ていると、撮影者の震えに共鳴し、その暢気さに苛立ちさえ覚える。前述したように、首振り扇風機を用いた新趣向では、絶妙な“肩透かし”の技も組み込んでいて、なかなかに心憎い。
終盤の趣向の幾つかは少々陳腐さを禁じ得ないが、緊迫したなかで意外性を演出し、おぞましい余韻へと繋げているのもいい。旧作へ繋ぐためには未だブラック・ボックスが多い状態で、その“引き”を鬱陶しく感じるのも一面だが、それ故に胸の内に黒い染みのようなものを残す。
もっと洗練された内容にも出来たのに、という気持ちは否定できないが、しかしシリーズとしての長所をきちんと活かし、観ているあいだは存分に恐怖を味わえる、正しいホラー映画に仕上がっている。前2作を評価している人であれば、若干首をひねりつつも愉しめるはずだ。
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コメント
一番気になったのは、せっかく時代をまだ家庭用カメラがそこまで身近じゃない時代に設定したのに、不便さや珍しさが全く描かれない点でした。
特に暗視撮影モードなんてなかった時代に暗闇でも鮮明に撮れたり、バッテリーの持ちやライトの性能がやたらいいのはちょっとなぁと。
前2作を上回る恐怖シーンのアイデアがないのはもったいないですよね。「ブラッディメアリー」のくだりも、もっと戦慄するシーンになりそうなのに、結局いつものでかい音ですし。
同じアイデアなら「ラストエクソシズム」のほうがずっと良くで来てました。
「SAW」シリーズがどれだけ意欲的だったかわかりました。