『28日後…』

監督:ダニー・ボイル / 脚本:アレックス・ガーランド / 製作:アンドリュー・マクドナルド / 編集:クリス・ギル / 撮影:アンソニー・ドッド・マントル,DFF / 音楽:ジョン・マーフィ / 出演:キリアン・マーフィナオミ・ハリスクリストファー・エクルストン、ミーガン・バーンズ、ブレンダン・グリーソン、ノア・ハントリー / 配給:20世紀フォックス

2002年イギリス作品 / 上映時間:1時間53分 / 日本版字幕:松浦美奈

2003年08月23日日本公開

2004年03月10日DVD発売

2007年10月24日DVD最新盤発売 asin:B000VRXILU

DVDにて初見(2004/03/13)
TOHOシネマズ六本木ヒルズにて再鑑賞(2008/01/18) ※『28週後…』公開に合わせたイベント上映



[粗筋]

 ケンブリッジにあるとある研究施設に、動物愛護運動家たちが侵入した。彼らの目的は、ここで実験のために用いられているチンパンジーたちを解放すること。だが、檻から解き放たれたチンパンジーは彼らに襲いかかり、最初に噛みつかれた女性は瞳に不気味な光を宿らせ、そして……

 ……それから28日後。

 自転車メッセンジャーのジム(キリアン・マーフィ)は病院の集中治療室で目醒めた。事故で怪我を負い、ここに運ばれたことまでは覚えているが、そのあとの記憶はない。裸の彼の腕には点滴が挿してあり、治療を施された形跡はあるが、近くに医者の姿はなかった。それどころか、病院の廊下にも、受付にも、ロビーにも――ロンドン市内にも、たった一人の姿さえ見出すことが出来ない。自動販売機は壊され中身をすべて吐き出しており、町中にはゴミや放置された車があちこちに転がっていて、商店のほとんどは入り口が破壊され蹂躙されている。まるでジム一人が世界に取り残されたような、異様な光景が広がっていた。

 呆然と彷徨っているうち、教会に辿り着いたジムは、更に驚くべき有様を目の当たりにする。祈りを捧げるべき聖堂に無数の人々が横たわり、どうやらその多くは息絶えている。だが、動くひとつふたつの人影にジムが呼びかけると――彼らは異様な眼差しでジムを見上げた。そして、やはり瞳を不気味な赤に染めた神父を皮切りに、彼らはジムに襲いかかってきた。訳も解らずに逃げ続けた彼を助けたのは、完全武装した男女ふたり。

 命からがら逃げ込んだ雑貨店で、マーク(ノア・ハントリー)とセリーナ(ナオミ・ハリス)は事情を語った。ある日突然、その奇妙な病が顕れ、瞬く間にイギリスを席巻したという。病に感染した者は“凶暴性”を身につけ、正常な者を見境なく襲撃する。感染者に噛まれた者、或いはその血液を何らかの形で体に取り込んでしまった者もまた等しく感染し、やがて死に至る。マークの家族もセリーナの家族も、そうして命を奪われたのだという。ジムの家族も恐らくは、という言葉に、彼は激しく抵抗する。

 そんなジムを納得させるために、翌る日マークとセリーナは、ジムの家に同行した。果たして、ジムの両親は既に息絶えていた――未来を悲観し、ベッドに身を横たえ、自ら毒を呷って。

 帰るには遅すぎたため、ジムの家に泊まった3人だったが、物音を察した感染者に襲撃され、どうにか斥けたものの、手傷を負ったマークをセリーナはその場で殺さざるを得なかった……

 途方に暮れつつ都市部に戻ったふたりは、とあるマンションのベランダに、奇妙な電飾を見つける。この発見が、ふたりを新たな出会いに導くのだった……

[感想]

 ゾンビ映画は数多あるが、その中で本編の占める地位は特異である。

 そもそも本編に登場するのはゾンビではない。近年、映画マニアであるロバート・ロドリゲスが自らの趣味を爆発させて製作した『プラネット・テラーinグラインドハウス』もそうだが、厳密には“生ける死者”ではなく“感染者”(シッコ)なのだが、いずれもゾンビ映画の定石をよく理解したうえで、パターンや捻りを随所に盛り込んでいるので、その系列に加えて差し支えあるまい。

 そうして見たとき、最も特徴的であるのは、変容した人間が走って非感染者を追いかける点である。のちに『ドーン・オブ・ザ・デッド』や『バイオハザードIII』でも踏襲されるこの方向性に先鞭をつけ、緩慢であった恐怖にスピード感を齎した点で画期的であった。

 だがもっと如実なのは、本編がホラーの表現を採り入れながら、あくまで極限状況の人間ドラマを構築することに腐心している点である。実際、ロンドンにおいては、各所に身を潜めた感染者達との追いかけっこが興味の焦点となっているように見えるが、次第に物語は偶然に巡り逢った生存者達の感情のやり取りが中心となり、最後には、こうした極限状態であればあり得そうな、人間の薄汚い目論見に切りこんでいく。

 本編をきっかけに頭角を顕していくキリアン・マーフィを筆頭に、そうした切羽詰まった状況での人間を巧みに演じきれる俳優が揃っている点でも、しばしば若いスター俳優の顔見せや、ホラー映画馴染みの怪優の起用などで話題を作ろうとする従来のゾンビものと一線を画している。

 あまりに序盤がお約束を踏まえた上に巧みに構築されている分、終盤でどんどん“感染者”が脇役に退いていくことから、根っからのゾンビ映画愛好家には必ずしもいい印象を齎さない面もあるが、既にジョージ・A・ロメロ監督が仄めかしていた、ゾンビという際物のシチュエーションを軸としても、人間の心理に食い込み、深い主題を盛り込み文芸的に作品を構築していくことが可能だ、ということをより明確に示した点において、従来の作品群とは別種の存在感を示す傑作と言えよう。

 さて。

 当初劇場で鑑賞するつもりが、あまりのロングランに甘えているうちに逆に見逃してしまう、という奇怪な、しかし私にとってはありがちな経緯で見逃してしまった本編。公開時の評価の高さからそれをずっと悔やんでいたため、DVDで購入後すぐさま鑑賞して噂通りのクオリティの高さに感心したのですが。

 実はこれ、DVD発売にあたって、エンディングを差し替えたのだそうです。どうやら製作者たちは最初から結末には悩んでいたようで、DVDには劇場公開当時のものを含め都合四つの別エンディングが収録されています。

 そして、DVDで鑑賞した当時、粗筋と上の感想の一部だけ書き上げたのですが、何だかんだに紛れて全文仕上げることが出来ずそのままほったらかしになっておりました。実に約4年を経てようやくアップ。結局、きっかけがないと終わらないんですこーいうものは。

コメント

  1. […] [感想]  もはや映画界における定番のモチーフとなった感のある“ゾンビ”だが、ほんの20数年まではそこまで一般的ではなかった、と記憶している。 […]

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