原題:“John Carpenter’s The Ward” / 監督:ジョン・カーペンター / 脚本:マイケル・ラスムッセン、ショーン・ラスムッセン / 製作:ダグ・マンコフ、ピーター・ブロック、マイク・マーカス、アンドリュー・スポールディング / 製作総指揮:デヴィッド・ロジャース、アダム・ペタリッジ、リッチ・コーワン / 撮影監督:ヤーロン・オーバック / 特殊メイク:グレゴリー・ニコテロ、ハワード・バーガー / プロダクション・デザイナー:ポール・ピーターズ / 編集:パトリック・マクマーン / 音楽:マーク・キリアン / 出演:アンバー・ハード、メイミー・ガマー、ダニエル・パナベイカー、ローラ=リー、リンジー・フォンセカ、ミカ・ブーレム、ジャレッド・ハリス / 配給:Showgate / 映像ソフト発売元:Happinet
2010年アメリカ作品 / 上映時間:1時間29分 / 日本語字幕:? / R-15+
2011年9月17日日本公開
2012年3月2日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon|Blu-ray Disc:amazon]
公式サイト : http://www.facebook.com/kankinmovie.jc
DVD Videoにて初見(2012/03/14)
[粗筋]
クリステン(アンバー・ハード)は目醒めたとき、燃えさかる炎の前にいた。呆然とする彼女を、警官が捕まえ、クリステンは有無を言わさぬまま、ノースベンド精神病院に収容される。
しかも、クリステンが入れられたのは病院の奥深くにある、厳重に遮られた一画であった。どうして自分がこんなところに収容されたのか理解できないクリステンに、担当医のストリンガー(ジャレッド・ハリス)は「その謎を一緒に解こう」と治療に協力するよう促すが、クリステンには納得がいかない。
同じ病棟には、彼女の他に4人の“患者”が収容されていた。エミリー(メイミー・ガマー)には衝動的な言動が目立つものの、他の娘達は少し神経質なだけで、格別な異常がないように映る。しかも、彼女たちの話に耳を傾けると、どうやらこの病棟では患者である少女が突然姿を消す、という出来事が相次いでいるらしい。そう言えば、クリステンの割り当てられた部屋の黒板には、“タミー”という名前が記されていたのを、放り込まれた当日に見た覚えがあった。
いったいこの病院で何が起きているのか、そして何が行われているのか? 事態を掴みかねているうちに、本当に患者がひとり、姿を消してしまった――
[感想]
何やら非常に意味深なプロット、のようでいて、粗筋を読んだ時点で、ある程度フィクションに慣れた人なら想像するネタがあるはずだ。――その中に正解が混ざっている可能性が高い。
ただ、個人的には“オチが読める”ということを疵とするのは、あまりお薦めできない考え方である。1時間半程度の物語として提示されているのだから、問題は、その結末に至る筋運びの出来映えだ。
如何せん、その真相の性質もあって、本篇には少々“何でもあり”の感が強い。恐怖の対象がどこから現れるか解らず、登場するたびに驚かされるが、正直なところ“ズルい”と思わされるはずだ。ネタ自体は想定内、前例もあるものであっても、もう少し恐怖の中心となる存在の扱い、真相との絡め方に工夫があれば興が増しただろうに、と惜しまれてならない。
だが、演出には味わいがあって、ネタは見え見えだとしても、なかなかに魅せられる作りである。音楽を多用し、背景だけの映像を織り交ぜて不気味さを掻き立て、瞬間の驚きを高める手法は非常に古典的だが、こうしたホラー、スリラーを多く手懸けてきた監督だけあって、そつがない仕上がりである。
ネタ自体は読めるものの、独自のひねりが本篇の結末に一風違った余韻をもたらしていることも指摘しておきたい。クライマックスに至って感じる“逆転”は、その発想自体も決して独創的なものではないが、作品の世界観、そして一見“何でもあり”な恐怖の演出とうまく調和して、衝撃とともに腑に落ちるような感覚を与える。
いい意味でも悪い意味でも突出したところがないので、あまりディープには愉しみにくいのだが、観ているあいだはスリラーならではの緊迫した雰囲気に浸らせてくれる作品。絶賛は出来ないが、憎めない佳作、というところだろうか。
関連作品:
『クレイジーズ』
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