原題:“Cityheat” / 監督:リチャード・ベンジャミン / 原案:サム・O・ブラウン(ブレイク・エドワーズ) / 脚本:サム・O・ブラウン、ジョセフ・C・スティンソン / 製作:フリッツ・メインズ / 撮影監督:ニック・マクリーン / プロダクション・デザイナー:エドワード・カーファグノ / 編集:ジャクリーン・カンバス / 衣装:ノーマン・セーリング / 音楽:レニー・ニーハウス / 出演:クリント・イーストウッド、バート・レイノルズ、ジェーン・アレクサンダー、アイリーン・キャラ、マデリーン・カーン、リップ・トーン、リチャード・ラウンドトゥリー、トニー・ロー・ビアンコ、ウィリアム・サンダーソン、ロバート・ダヴィ、アート・ラフルー、ニコラス・ワース、ジュード・ファレス、ジョン・ハンコック / マルパソ/デリヴァランス製作 / 配給:Warner Bros.
1984年アメリカ作品 / 上映時間:1時間38分 / 日本語字幕:岡枝慎二
1985年4月27日日本公開
2009年9月9日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]
DVD Videoにて初見(2012/04/05)
[粗筋]
1933年のカンザスシティ。
元刑事で、現在は探偵をしているマイク・マーフィ(バート・レイノルズ)には気懸かりがあった。共同で探偵事務所を経営しているデール・スウィフト(リチャード・ラウンドトゥリー)が突然、羽振りがよくなったのである。しばらく滞っていた、助手のアディ(ジェーン・アレクサンダー)の給料を気前よく支払い、更にマイクの車のローンまで手助けしようとする。マイクは、デールが危険な橋を渡っているのを感じ、不安を覚えていた。
マイクの危惧は的中し、デールは殺害されてしまう。ほどなく、マイクは暗黒街の大物ピット(リップ・トーン)から呼び出しを受けた。デールはどうやら、ピットの隠し帳簿をどこかから入手し、それを用いてピットを恐喝すると同時に、対抗勢力であるコル(トニー・ロー・ビアンコ)からも金をむしり取ろうと目論んでいたらしい。しかし、デールはよほど巧妙に帳簿を隠していたようで、ピットもコルもデールの周辺を荒らし回っていた。
相棒を殺され、その恋人ジニー(アイリーン・キャラ)も危険に晒されており、マイクは懸命に帳簿の行方を捜し始めたが、そんな彼に、かつての相棒スピアー警部(クリント・イーストウッド)もまた目を光らせていた。スピアーも目的は悪党の一掃だと承知していても、マイクはどうしても反りの合わないスピアーを頼らず、デールの行動を辿って帳簿を探し出そうとする……
[感想]
クリント・イーストウッドと、『ロンゲスト・ヤード』などで人気を博したバート・レイノルズとの共演ということで、期待を寄せられながらも不発に終わった作品である。そもそもスター俳優を一緒のスクリーンに映しだすだけでヒットするとは限らないが、本篇が低評価になってしまったのは、観てみると頷けるところがある。
個人的には、これはこれで面白い、と言える。1930年代を背景としたやり取り、古典的な銃撃戦はなかなかに味わいがあるし、それぞれの個性を活かしたイーストウッドとレイノルズの演技、掛け合いは一風変わったバディ・ムーヴィの趣があって悪くない。物語として成功していれば、或いは偶然にでも当たっていれば、何本かシリーズで作っても良かったのではないか、と思うほどだ。
しかし、もともと『ピンクパンサー』シリーズのブレイク・エドワーズが監督まで手懸けていたが、訳あって降板してしまった、という本篇は、軽めのハードボイルドなのか、それともコメディにしたいのか、判断に迷う内容になってしまっている。
イーストウッドとレイノルズが掛け合いを繰り広げる場面は、比較的コメディ色を滲ませている。冒頭のバーでの格闘もそうだが、マイクの窮地に飄然と容喙するスピアー警部の姿など、『ダーティハリー』を彷彿とさせるだけに妙なおかしみがある。だが、それ以外の部分は全般に“緩めのサスペンス”といった風情で、細かくユーモアを鏤めてはいても、コメディの領域にまでは踏み込んでいない。ところどころ、半端に緊張感ばかりが高まってしまって、いったいどういう方向性の話なのか、終盤までいまひとつ理解しがたい。そこへクライマックス、少々スラップスティックな味わいが強まりすぎて、余計に焦点が暈けている。主役ふたりの掛け合い、クライマックスの見せ方はどう考えてもコメディとして作品を育てようとしていたのに、過程での見せ方が足りずに、どっちつかずの代物になってしまった。
前述したように、コメディ部分にはところどころ見所がある。サスペンスとしてはいささか温いが、イーストウッドが西部劇のヒーローとしての貫禄を示す銃撃戦のくだりは、趣向としても悪くない。また、イーストウッド自身の監督作と比べて、女性が多く、いずれも独特の魅力を発揮している点も興味深い。美点は細かくあげつらうことが出来るが、トータルでは焦点がぼやけてしまったのが残念だ。
個人的にはそれなりに魅力はある1篇だとは思うが、全体を評しようとすると辛い点をつけざるを得ない。大量生産で送り出された軽めの娯楽映画めいた味わいがあるので、そういうものを欲しているなら手を出してみるのもいいだろうけれど、強いてはお薦めしない。
関連作品:
『マンハッタン無宿』
『タイトロープ』
『キャノンボール』
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