すっかり毎年夏の恒例となっている、茶風林氏企画・演出による、声優が怪談を朗読するイベント、5回目となる今年もお邪魔してきました。……昨年、一昨年とご一緒していた方が、今年はどう考えても地元を離れられないので、今年はひとりで参加です。自由が利くから自転車で! と一瞬思いましたが、しかしよく考えるとこれはお酒を嗜むこと前提のイベントなので、自転車で行くわけにはいかないのでありました。
以下、ざっとですが構成に触れますので、もしこれからご覧になる予定で、ネタばらしは回避したい、という方はこの項を飛ばしてください。
場所は昨年と同じ、密蔵院もっとい不動というお寺です。昨年のイベントがいたく住職のお気に召したとかで、あちらから声がかかったのだとか。最後がバス、というのがなかなか渋いのですが、私としてはオトズレヤスイ立地なので有り難い。昨年訪れているぶん、道に迷う恐れも少ないし。お陰で、余裕をもってでかけたら時間が余りすぎました。
上演する場所も昨年と同じお堂でしたが、今回は座席がステージ、というか演者の使用する5本のマイクを取り囲むような構成になっている。本来、法事などに用いるスペースで、こんな舞台を行うための場所ではないですから非常に手狭で、それを逆手に取ったような演出。今回も、観客の後ろのデッドスペースを用いた立体的な表現で冒頭からぞわぞわさせてくれます。私ゃこれが好きなのです、このイベント。
本篇第一部は、怪談ではお馴染み、肝試しをきっかけとするエピソードの連作。しかし、肝試しと言ってもそこは木原浩勝氏の原作ですから、安易な内容のはずがない。特に最後の一篇は、個人的にはこのスタイルでこそいちばん効果的だ、と思っていたので、ちょっと興奮しました。朗読のスタイル、かつ演劇的に上演するが故の脚色が施されてましたが、それはそれで効果的。
休憩時間に、このイベントのある意味肝である酒食の提供がありました。例年、食事の方はわりと軽めだったので、今年もそのつもりでいたら、今回は明治座との提携が叶ったそうで、思いのほかしっかりと量がある。私は食べられましたけど、食の細いかたや、茶風林氏が中心となってのトークに気を取られていたかたは、食べきるのがちょっと大変だったのではないでしょうか。
休憩後の第二部は、ここ以外では語らない、という但し書きつきで木原氏が提供した、昨年の震災にまつわるエピソード。このくだり、怖さもありますが、それ以上にかなり胸にくる話が連続する。ラスト、茶風林氏が単独で語るくだりでは、しゃくりあげる声が聞こえるほどでした。
最後はこれも昨年同様、住職による早回し版の般若心経で締めくくり。
初めて訪れたとき、如何にも舞台経験者らしい立体的な演出が、こういう怪談の精髄を味わうには最適、という確信を得て、以来毎年訪れているわけですが、今年も変わらず工夫のある、怖くも愉しい一夜でありました。アンケートに、「来年もお待ちしております」と記して、急ぎ帰宅……明日のために作業を早めにアップせねばならないので、のんびりもしていられないのです。
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