『パラノーマル・アクティビティ4』

TOHOシネマズ渋谷、スクリーン5の前に掲示されたポスター。

原題:“Paranormal Activity 4” / 監督:ヘンリー・ジュースト、アリエル・シュルマン / 原案:チャド・フィーハン / 脚本:クリストファー・ランドン / 製作:ジェイソン・ブラムオーレン・ペリ / 製作総指揮:アキヴァ・ゴールズマン、スティーヴン・シュナイダー / 撮影監督:ダグ・エメット / プロダクション・デザイナー:ジェニファー・スペンス / 編集:グレゴリー・プロトキン / 衣装:リア・バトラー / キャスティング:テリ・テイラー / 出演:ケイティ・フェザーストーン、キャスリン・ニュートン、マット・シヴリー、ブラディ・アレン、スプラグ・グレイデン、スティーヴン・ダンハム、アレクソンドラ・リー、エイデン・ラヴカンプ、ブライアン・ボーランド、ウィリアム・フアン・プリエト / ルーム101製作 / 配給:Paramount Japan

2012年アメリカ作品 / 上映時間:1時間28分 / 日本語字幕:川又勝利

2012年11月1日日本公開

公式サイト : http://www.paranormal.jp/

TOHOシネマズ渋谷にて初見(2012/10/31) ※トークイベント付前夜祭



[粗筋]

 15歳の少女アレックス(キャスリン・ニュートン)の周辺に、近ごろひとりの少年の陰がちらついている。最近、アレックスの向かいの家に越してきた、ロビー(ブラディ・アレン)という男の子である。母はシングルマザーだとかで、常に忙しくしているようで、ロビーはよくひとりでふらついていた。アレックスの家の庭にまで潜入してくる彼を、アレックスはいささか薄気味悪く思っていた。

 ある日、ロビーの母親が倒れ、病院に担ぎ込まれる、という事態が起きた。母子には身寄りがなく、やむなくアレックスの一家でロビーを一時的に預かることとなる。

 そうして、ロビーがアレックスの家で起居するようになった頃から、家の中で奇妙な現象が相次ぐようになった――

[感想]

 一種の伝説を打ち立てた第1作ほどではないが、未だにこのシリーズは低予算を旨に製作されているらしい。圧倒的な収益効率が幸いし、この第4作でも一定の成果を上げ、日本で劇場公開されるよりも前に2013年の第5作公開が決定したようだ。

 このシリーズがヒットしているのは、一般のホラー映画のような、どこか遠い世界の出来事ではなく、一般人が暮らしている家の中で怪奇現象が発生し、恐怖に晒される、という観客に近い場所で物語が展開していることが理由の1つに挙げられるだろう――もちろん、日本人には該当しないのだが、それでもドライヴ先の孤立した集落であるとか、森深い山中、などよりも、映画館などに足を運ぶことの出来る層には理解しやすい世界であるのは確かなはずだ。

 加えて、毎回のように、シチュエーションや撮し方に細工を凝らし、違ったテイストを添える創意工夫を絶やさないことも美点になっている。本篇の場合、ノートパソコンにはじめから仕掛けられているWebカメラや、ゲーム機から放たれる特殊な光を捉えることの出来るカメラを用いた映像が特徴的だ。そこで日常の光景を描き出したあと、少しずつ違和感を組み込んで、不気味さを醸していく、という基本のスタイルを維持しつつ、常にある程度の挑戦を仕掛けているのだ。その点は実に快い。

 しかし惜しむらくは、せっかくのアイディアを活かすための工夫がもうひとつ乏しいのだ。ノートパソコンの映像は、被写体がパソコンの前にいる、或いはパソコンを持って移動している、ということを伝える程度で、ほとんど一般のカメラと変わりない。ゲーム機から放たれる特殊な光については、目には見えないが立体的な何かが動いている、ということを描くことは出来ても、それ以上の発想はあまりない。もう少し、それを周囲の行動、反応と併せて表現していれば、更に薄気味悪さを演出しえたはずなのだが、あと一歩を疎かにしているのが勿体ない。

 このシリーズ初期からの問題点である、その場限りであまり効果を上げている怪奇現象がないことも、改めて引っかかる。特に今回、ノートパソコンがキッチンに持ち込まれた状況で繰り広げられる異変は、完全にカメラの向こうで一部始終を眺めている人間を意識しているのがありありで、不自然さが際立ってしまっている。あそこであえて踏み込んだ出来事を織りこんでいれば、アレックスの一家に“何者か”が害意を抱いている、という可能性を仄めかすことが出来、恐らくもっと緊張感は増したことだろう。キッチンでのひと幕はあまりに極端、かつ大雑把で、失笑してしまいそうなほどだった。

 この第4作は、これまで以上に不透明な要素を残している。低予算であるからこそきっちりと採算を取れる、という確信を得たからこそあえて次作以降に繋げるものを意識的に残しているのだろう。個人的に、それはそれで構わないと思うのだが、伏線をちりばめるにしても、物語の中である程度は消化しておいたほうがいいのではなかろうか。本篇はこういう“引き”が過剰すぎて、一般的な観客は呆気に取られる可能性が高い。

 創意工夫は認められるし、どれほど大ヒットとなろうとあえて低予算で、無名のキャストを中心に撮る、という姿勢は評価したいので、私は今後も出来るだけ追うつもりである。ただ、この調子で掘り下げが足りないまま繋いでいると、クリエイターの努力など斟酌しない観客からは確実に見放される。似たような低予算、閉鎖状況での怪奇現象を描きながら、より振り切れた感のある『グレイヴ・エンカウンターズ』のような追随者も続篇を繰りだしているのだから尚更に、そろそろ一歩上のレベルに突き進んで欲しいところだ。

関連作品:

パラノーマル・アクティビティ

パラノーマル・アクティビティ2

パラノーマル・アクティビティ3

パラノーマル・アクティビティ第2章 TOKYO NIGHT

グレイヴ・エンカウンターズ

コメント

タイトルとURLをコピーしました