『ゴーストライダー2』

TOHOシネマズ西新井、施設外壁に掲示されたポスター。

原題:“Ghost Rider : Spirit of Vengeance” / マーヴェル・コミック・ブックに基づく / 監督:ブライアン&テイラー / 原案:デヴィッド・S・ゴイヤー / 脚本:スコット・M・ギンプル、セス・ホフマン、デヴィッド・S・ゴイヤー / 製作:スティーヴン・ポール、アショク・アムリトラジ、マイケル・デ・ルカ、アヴィ・アラド、アリ・アラド / 製作総指揮:E・ベネット・ウォルシュ、デヴィッド・S・ゴイヤー、スタン・リー、マーク・スティーヴン・ジョンソン / 撮影監督:ブランドン・トゥロスト / プロダクション・デザイナー:ケヴィン・フィップス / 編集:ブライアン・バーダン / 衣装:ボヤナ・ニキトヴィッチ / 音楽:デヴィッド・サーディ / 出演:ニコラス・ケイジイドリス・エルバヴィオランテ・プラシドキアラン・ハインズクリストファー・ランバート、ジョニー・ホイットワース、ファーガス・リオーダン / 配給:松竹×Pony Canyon

2012年アメリカ作品 / 上映時間:1時間35分 / 日本語字幕:佐藤恵

2013年2月8日日本公開

公式サイト : http://www.gr2.jp/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2013/02/14)



[粗筋]

 東欧のとある山奥に建つ修道院が、襲撃を受けた。彼らの狙いは、匿われていた少年を拉致すること――僧侶たちの多くが殺害されるが、標的である少年ダニー(ファーガス・リオーダン)は母親のナディア(ヴィオランテ・プラシド)が連れ去り、辛うじて無事だった。

 唯一生き残った僧侶モロー(イドリス・エルバ)は、だが無事だからと安心するわけにはいかなかった。自分を振り切って逃避行に赴いたナディアとダニーを守るために、ある男に接触する。

 その男の名は、ジョニー・ブレイズ(ニコラス・ケイジ)――かつてはサーカスで目覚ましい活躍をするスタントマンだったが、自らの抱えた“業”により、陽の当たる世界から逃げ、郷里アメリカから遠いこの地に潜伏していた。しかしモローには、彼のそんな“業”こそが必要だった。

 ジョニーが孕んだ“業”の正体は、内に宿した“悪魔”である。人間界に転生した悪魔ロアーク(キアラン・ハインズ)がかつてジョニーを騙して契約し、いずれ自らの使徒として利用するために封じ込めたそれは、人間の罪もろとも魂を喰らう、飢えた悪魔。ジョニーは必死の想いでこの内なる悪魔を抑えこんできたが、モローはダニーを救うために、悪魔を解き放つように要求してくる。交換条件は、この業と訣別する術。

 ジョニーに否やはなかった。自らの裡に潜む悪魔――“ライダー”は、ダニーの気配を嗅ぎつけ、すぐさまその場に駆けつける。このときナディアとダニーは、ナディアのもと交際相手である、薬物・銃器の密売人キャリガン(ジョニー・ホイットワース)に捕まり窮地に立たされていたが、全身から地獄の業火を放つ“ライダー”の出現で状況は激変する。

 しかし、復活したてで制御が出来ていないのか、“ライダー”はグレネード弾を受けて昏倒、そのあいだにダニーは連れ去られてしまう。翌る朝、病院で目覚めたジョニーは、ナディアとともにふたたびダニーの行方を追った――

[感想]

 ニコラス・ケイジ主演によるシリーズ第2作である……が、最初にはっきり申し上げておくと、前作とは繋がっていない。確かに同じ主演俳優で、ごく基本的な設定は一致を見ているが、あちこちに細かな食い違いがある。そのため、私のように“予習”のつもりでごく最近前作を観た状態だと、違いにいちいち困惑させられる可能性があることはお断りしておいたほうがいいだろう。

 もともと私は、個人的に偏愛する『アドレナリン』シリーズの監督コンビが新たに着任する、と知って本篇を鑑賞する気になり、それ故に予習もしたのだが、内容的にも仕切り直しをしている、と言っていい。“ライダー”のヴィジュアルがよりダークに変更されているのは序の口で、主人公ジョニー・ブレイズに呪いをかけた悪魔が別の“人物”になっているし、前作において、ジョニーが“ライダー”という運命を受け入れた経緯自体がそっくりなかったことになっている。あちこちで仄めかされる、ジョニーが悪魔と契約をした際の背景にも、前作と齟齬が生じており、スタッフ側も意識的に別のものとして製作していることが窺える――実際、邦題は『ゴーストライダー2』だが、原題に“2”の文字が認められないのは、そういう意識の表れなのかも知れない。

 だから、“続篇”としては失格に近い作品、と言えるのだが、世界観の新たな解釈としては優秀だ、と私は思う。

 いちばん重要なのは、“ライダー”という設定の持つ狂気が、前作以上に濃厚に描かれていることだ。前作でも“ライダー”の特殊能力を活かしたアクションを幾つも盛り込むことできっちりと個性を表現しているのは間違いないのだが、“悪魔”というわりには言動が既にヒーローめいていて、クールではあるがいささか道化っぽさがつきまとい、題材の黒さに対してちょっと幼稚さが感じられた。それに対して本篇は、変身する時のクレイジーさ、完全に変化したあとの鬼気迫る振る舞いがあまりに魅力的だ。炎を吹き上げ疾走するバイクに跨りながら奇声を上げて変身するくだり、悪党どもの目を覗き込み、罪に染まった魂を喰らう際の動きは、異様さで前作を存分に上回っている。

 思うに、ネヴェルダイン&テイラーのコンビが本篇の監督として抜擢されたのは、この“狂気”を描く才能を見出されたからなのではなかろうか。本篇のジョニー・ブレイズと“ライダー”の示す突き抜けたクレイジーさは、『アドレナリン』シリーズの主人公シェブ・チェリオスを彷彿とさせる。あのブチ切れぶりに痺れた人間であれば、本篇はかなり楽しめるはずである。

 回想やイメージの場面でコミック風の絵柄を用いてみたり、従来のスローモーションではあり得なかったトリッキーな動きをわざわざ組み込んだり、ヴィジュアル表現の発想も前作より豊富だ。“ライダー”の特殊能力を魅せる、という部分では、“乗ったものであれば、バイクでなくても自分のモノにできる”という点以外に目立った着想はないのだけれど、そんなのはどーでもいい、というくらい絵のインパクトが強い。

 ストーリー的には前作以上に目立った工夫は見られない。終盤でちょっとした逆転が起きるが、その発想のベースはありふれたもので、早いうちに察してしまうひとも多いだろう。だから本篇の意図は、改めて“ゴーストライダー”というキャラクターの魅力を掘り起こすことに尽きている、と私は考える。ストーリー面での新機軸を欲しているひと、破壊力を求めているひとの期待には応えられないだろうが、しかしネヴェルダイン&テイラーの名に惹かれて鑑賞したがるようなひと、もっとクレイジーな絵が見たい、というひとの期待にはかなり応えてくれるはずである。

 ……ただ、ひとつ残念なことがある。本篇はどうやら3Dで製作されていたらしいのだが、日本では2D版のみの上映となっているのだ。3Dにそれほど価値を見出しているわけではないし、果たしてネヴェルダイン&テイラーの作風が3Dに合っているのか? という疑問もあるが、出来ればそういう判断も観客にさせて欲しかった――まあたぶん、予算や確保出来るスクリーンの数、などといった切実な事情もあるのだろうけれど。

関連作品:

ゴーストライダー

アドレナリン

アドレナリン:ハイ・ボルテージ

GAMER

ドライブ・アングリー3D

キック・アス

プロメテウス

ラスト・ターゲット

ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館

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