『11:11:11』

11:11:11 [DVD]

原題:“11-11-11” / 監督&脚本:ダーレン・リン・バウズマン / 製作:ウェイン・アラン・ライス、リチャード・ヘラー、フェラン・モニエ、ヴァレリア・マリーニ、クリスティアンモリーナ / 製作総指揮:パトリック・ワルド、シェイクド・ブレンソン、ラッセル・ホランダー、ローラ・バウズマン / 共同製作:マリーヴィ・デ・ヴィラヌーヴァ、カルロス・ガリ / 共同製作総指揮:ロリス・クルチ / 撮影監督:ジョセフ・ホワイト / プロダクション・デザイナー:マニ・マルティネス / 編集:マーティン・ハンター / 衣装:トニ・マルティン / 特殊効果:サルヴァドールサンタナ / 視覚効果:ジェイコブ・アクナ、パトリシオ・ホター / 音楽:ジョセフ・ビシャラ / 出演:ティモシー・ギプス、マイケル・ランデス、ウェンディ・グレン、デニス・ラフター、ルイス・ソレル、ブレンダン・プライス、サロメヒメネス、アンヘラ・ロサル / カノニゴ・フィルムズ製作 / 映像ソフト発売元:ODESSA ENTERTAINMENT

2011年アメリカ、スペイン合作 / 上映時間:1時間37分 / 日本語字幕:?

日本劇場未公開

2013年2月2日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon]

DVD Videoにて初見(2013/05/04)



[粗筋]

 ベストセラー・スリラー作家のジョセフ・クローン(ティモシー・ギブス)は妻と長男を火事で喪って以来、ずっと鬱ぎこんでいる。宣教師を務める父親を持ちながらももともと無神論者であったが、いまや完全に信仰を失っている状態だった。家族に先立たれたひとびとの互助会に参加し、日誌を欠かさずつけているが、未だに己の心を解き放つ術が解らずにいる。

 2011年11月8日、ジョセフは奇禍に遭った。互助会からの帰りに交通事故に遭い、相手は死亡したが、自身は無傷で生還した。事故のとき、壊れた時計が指し示した時刻は11時11分であった。事故を目撃した互助会の会友セイディ(ウェンディ・グレン)に送られて帰宅すると、遠く離れたスペインの地で布教活動をしている弟のサミュエル(マイケル・ランデス)から連絡が届く。父・リチャード(デニス・ラフター)が危篤状態だ、というのだ。かつて父に捨てられた、という忌まわしい記憶のあるジョセフだったが、さすがに無視できず、すぐさま飛行機でスペイン・バルセロナへと飛んだ。

 父の体調を心配しながら、久々に兄が訪れたことを喜ぶサミュエルだったが、しかし話をしてみると、しばらく前からサミュエルの身辺では、ジョセフと同様に奇妙な出来事が相次いでいた。監視カメラには深夜、家の様子を窺う何者かの姿が捉えられ、ジョセフが到着した晩、サミュエルは得体の知れないものに襲撃される。

 ジョセフはいつしか気づき始めていた。我が子と妻の死も、自らが事故に遭ったのも、不審者の姿が記録されたのも、サミュエルが何者かに襲われたのも、すべて11時11分の出来事だった、と……

[感想]

 本篇は作中の出来事のクライマックスと同じ、2011年11月11日に北米で劇場公開されている。『SAW』シリーズの功労者であるダーレン・リン・バウズマン監督の作品であっただけに、日本でも似たような最善のタイミングで公開してくれないものか、と願っていたが、紹介される様子もなくその日を過ぎ、1年以上経ってようやく、劇場公開なしのDVD直接リリースとなった。

 スターはおろか、脇役で渋く活躍しているような役者もほとんどいないあたりから製作の規模も窺え、アメリカ以外での理想的なリリースが難しかったのだろう、と察せられるが……ぶっちゃけた話、そうしたイベント化が計画されないのは当然の、内容的にもあまり振るわない出来栄えだった、と言わざるを得ない。

 趣向は悪くない、と思う。こういう背景はあり得そうだし、積み上げたものが一気に覆されるような結末は戦慄を誘う。

 ただ、その描き方が、お世辞にも効果的とは言いにくい。この仕掛けで“怖い”と感じられるのは恐らくかなり想像力のあるひとに限られるだろう。

 また、場面それぞれの怪奇現象、不気味な予兆などもあまり効果を上げていない。あちこちで思わせぶりな描写があるが、怖さも衝撃も薄く、いざ全体像が明らかになってからも、それらが濃密な意味を帯びる感覚がないので、ぼんやりとした印象しか残らない。私の鑑賞した環境に合わなかったのか、画面が暗過ぎ、肝心の恐怖を誘うモチーフがよく見えないのも災いしていたように思う。

 繰り返すが、アイディア自体は悪くないのだ。同様の発想こそ前例があるが、本篇のような掘り下げ方は優れた着想と言っていい。細かな台詞、描写が、真相を知ったあとでは別の様相を見せる、その組み立ての妙も、サプライズをお家芸とした『SAW』シリーズの監督らしい巧さがある。しかし、これを怖いとか、驚きに感じるには、観客にかなり踏み込んで読み解く意欲を求めねばならず、それが作品の規模やムード、何より2011年11月11日にわざわさ公開する、という遊び心と合っていないのがいちばんの問題だろう。

 作り手の意欲は窺えるが、それが盛大に空転した、惜しい作品、というのが私の率直な評価である。ムードもアイディアも意欲もとても好感が持てるのだが……

関連作品:

SAW2

SAW3

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