原題:“Aliens” / 監督&脚本:ジェームズ・キャメロン / 製作:ゲイル・アン・ハード / 製作総指揮:ゴードン・キャロル、デヴィッド・ガイラー、ウォルター・ヒル / 撮影監督:エイドリアン・ヒドル / プロダクション・デザイナー:シド・ミード / 特撮:スタン・ウィンストン / 編集:レイ・ラヴジョイ / 音楽:ジェームズ・ホーナー / 出演:シガーニー・ウィーヴァー、マイケル・ビーン、キャリー・ヘン、ランス・ヘンリクセン、ポール・ライザー、ジャネット・ゴールドスタイン、ビル・パクストン、ウィリアム・ホープ、アル・マシューズ、マーク・ロルストン、リッコ・ロス、コレット・ヒラー、ダニエル・カッシュ、シンシア・スコット、ティップ・ティッピング、トレヴァー・スティードマン、ポール・マクスウェル、ビル・アームストロング、ジェイ・ベネディクト、ホリー・デ・ジョン、マック・マクドナルド、エリザベス・イングリス / ブランデーワイン製作 / 配給&映像ソフト発売元:20世紀フォックス / デジタルリマスター版配給:HOLLYWOOD CLASSICS
1986年アメリカ作品 / 上映時間:2時間35分(オリジナル版・2時間17分) / 日本語字幕:?
1986年8月30日オリジナル版日本公開
2013年6月14日デジタルリマスター完全版日本公開
2012年7月18日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon|Blu-ray Disc:amazon|DVD Videoシリーズ4枚組BOX:amazon|Blu-ray Discシリーズ4枚組BOX:amazon]
公式サイト : http://eirian-eirian2.com/
TOHOシネマズ西新井にて初見(2013/06/18)
[粗筋]
貨物船ノストロモ号の奇禍から57年。命からがら惑星LV-426を脱したリプリー(シガーニー・ウィーヴァー)は、だが身を委ねた救命艇が地球の軌道を外れて漂流していた。
サルベージ船によって発見され、ようやく地球へと帰還したリプリーだったが、彼女たちを派遣した企業は、リプリーの証言の信憑性を疑い、彼女が見舞われた悪夢よりも、その過程で貨物船と積荷を爆破したことを問題視する。刑にこそ問われなかったが、宇宙航海士としての資格を剥奪され、既に家族も失っているリプリーは途方に暮れる。
だがやがて、企業でリプリーの対応を請け負っていたバーク(ポール・ライザー)が、惑星LV-426の環境最適化に携わっていたスタッフが連絡を断っていることを知らせに来た。ここに及んで彼女の証言を重要視したバークは、リプリーに同行を求めたのである。交換条件として、宇宙航海士の資格の回復を提示され、悪夢との対決を促されたリプリーは、かなり逡巡したあとで、申し出を受けた。
ゴーマン中尉(ウィリアム・ホープ)率いる植民地海兵隊とともに降り立った惑星LV-426は、大気生成装置だけが不気味に唸りを上げる、寒々とした世界になっていた。兵士たちが居住区に突入すると、そこは交戦の痕跡があるだけで、ひとの姿は見当たらない。ようやく発見したのは、幼い少女ニュート(キャリー・ヘン)ただひとり。その彼女も、隊員たちに多くを語ろうとはしなかった。しかし、居住区に残された痕跡から、最初はリプリーの話にろくに耳を貸さなかった海兵隊員も、彼女の語った“脅威”が植民地を襲った、と判断せざるを得なくなる。
やがて一同は居住区の管制室を押さえ、駐在員たちが居場所を特定するために身体に埋め込んだ発信機が、大気生成装置の内部で大量に反応していることを発見した。非常事態に備え、編隊を組んで潜入した海兵隊が目撃したのは、異様な光景であった……
[感想]
のちに独自のヴィジュアル感覚に満ちた作品群で巨匠に名を連ねるようになるリドリー・スコット監督が、SF・ホラーの分野で優れたアイディアを多数残したダン・オバノンの脚本、H・R・ギーガーのデザインによるクリーチャーを得て製作した、SFホラーの名作『エイリアン』の、当時『ターミネーター』を発表して間もないジェームズ・キャメロン監督が担当した続篇である。
ヴィジュアル的にも設定的にも強烈なインパクトを備えたクリーチャーを徹底的に活かし、未知の存在によって蹂躙される者の恐怖を追求した前作と比較すると、本篇は怖さこそあるものの、それはあまり重視されていない。リプリーという目撃者の存在が、最初は信用されていないとはいえ、主要登場人物にこのクリーチャーの特徴、恐ろしさを先に伝えてしまうので、いまさら恐怖を主題にする必要はない、と考えたのか、或いは『ターミネーター』において既に濃厚だった監督の娯楽志向を追求しようと考えたのか、本篇は生き残りを賭けた人間側の戦いぶりに焦点を当てている。
動体検知装置や、同様の機能を用いた自動火器を用いた防衛や、未だ開発が万全ではないが故に、複雑に構築された建物の構造を利用した逃避行、そして膨大な熱源を必要とする装置があるからこその危険性が促すクライマックスの緊迫したひと幕など、同じSFという着眼点ながら、想像を絶した生態がもたらす恐怖に着目した前作よりも、より娯楽の王道を狙ったような作りだ。『タイタニック』や『アバター』を経た時点で鑑賞すると、この時点でキャメロン監督の求める娯楽映画の理想像が窺え、そしてその基本スタイルが完成されていることが興味深い。
特にこのあとの『ターミネーター2』や『アバター』などと比較すると、細かなモチーフはほぼ共通している、と言ってよく、乱暴に解釈すればワンパターンとも考えられるのだが、しかし実際には決してまるっきり似たようには感じさせない巧さが確かに感じられるのだ。序盤で仄めかされた要素の活用法はあからさますぎるくらいだが、しかしそのことがクライマックスで見事に観客の血を滾らせる。
人物配置の絶妙さも特筆しておくべきだろう。物語の発端にして目撃者であり続けるリプリーはもちろん、同じ会社を代表して救援隊に加わるバークや、それぞれに個性が際立った海兵隊員たちの、様々な思惑や入り乱れる人間関係が、随所で発生するトラブルの緊迫感、意外な展開をきちんと裏打ちする。よくこうしたSFアクションでは、定番の人物配置があり、それを承知の上で踏まえてお約束の愉しさを演出したり、意外性を生み出したりするが、本篇はこの定番にあまり囚われていない。この段階で普通は死なないだろう、という人物が死ぬことで混乱が生じるかと思うと、犠牲者にかまけている余裕もなく逃走を続けなければならないひと幕もある。時期的には先駆者にあたり、まだまだお約束が確立されていなかった、と捉えるべきなのかも知れないが、しかしお約束が存在する、という前提で鑑賞しても、決して安易な驚きに繋げていない成熟した語り口に、余計な勘繰りなどしているいとまもなく引っ張られてしまう。
本篇の弱さを敢えて挙げるなら、結末が思いのほかあっさりとしていることだろう。ギリギリまで持続する緊張が独特の余韻を残すが、これだけの出来事、厚みのあるドラマが繰り広げられたわりには、急に断ち切られたような終わり方は物足りなく感じられる。しかし、それこそ監督が本篇でひたすらに娯楽を追求し続けた、その姿勢のストイックさを象徴しているとも捉えられ、そう考えるとあの潔さこそ本篇には相応しいものだろう。
発表から27年を経て鑑賞すると、未来像や、特撮の手法の古さはさすがに目につく。しかし、やや長めの尺の長さを意識させず、その尺が無駄にならない密度と質の高さを実現した、完成されたエンタテインメントであることはいまも変わらない。グロテスクさが強調されていた前作に抵抗があったひとでも、本篇はきっと虚心に楽しめるのではなかろうか。
関連作品:
『エイリアン』
『プロメテウス』
『タイタニック3D』
『アバター』
『宇宙人ポール』
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