『ハングオーバー!!! 最後の反省会』

TOHOシネマズ六本木、階段下に掲示されたポスター。

原題:“The Hangover Part III” / 監督:トッド・フィリップス / 脚本:トッド・フィリップス、クレイグ・メイジン / 製作:トッド・フィリップス、ダン・ゴールドバーグ / 製作総指揮:トーマス・タル、スコット・バドニック、クリス・ベンダー、J・C・スピンク / 撮影監督:ローレンス・シャー / プロダクション・デザイナー:メイハー・アーマッド / 編集:デブラ・ニール=フィッシャー、ジェフ・グロス / 衣装:ルイーズ・ミンゲンバック / 音楽:クリストフ・ベック / 出演:ブラッドリー・クーパーエド・ヘルムズ、ザック・ガリフィアナキスケン・チョンヘザー・グレアム、ジェフリー・タンバー、ジャスティン・バーサジョン・グッドマンメリッサ・マッカーシー、マイク・エップス、サーシャ・バレス、ジェイミー・チャン、ソンドラ・カリー、ジリアン・ウィグマン、オリヴァー・クーパー、オスカー・トーレ / グリーン・ハット・フィルムズ製作 / 配給:Warner Bros.

2013年アメリカ作品 / 上映時間:1時間40分 / 日本語字幕:アンゼたかし / 字幕監修:町山智浩 / PG12

2013年6月28日日本公開

公式サイト : http://www.hangover-japan.jp/

TOHOシネマズ六本木ヒルズにて初見(2013/07/01)



[粗筋]

 ラスヴェガスでの乱痴気騒ぎから4年、命からがらタイでの結婚式を終えて2年。壮絶な二日酔いで自らばかりでなく周囲も危険に晒した“狼軍団”たちも、それぞれに平穏な生活を送っていた――ただひとり、アラン(ザック・ガリフィアナキス)を除いて。すべてのトラブルの発端であるアランは、相変わらず無茶苦茶な言動で何度となく騒動を起こし、警察のお世話になっている。その都度揉み消しをしてきた父親シド(ジェフリー・タンバー)も限界が来た――肉体的に、完璧に。

 保護者を失ったアランの扱いに困った残りの家族たちは、とうとうアランを治療のために施設に預けることを決意する。義理の兄であるダグ(ジャスティン・バーサ)に“狼軍団”の仲間扱いされているフィル(ブラッドリー・クーパー)とステュ(エド・ヘルムズ)が、ほかの僅かな友人たちとともに説得を試みた結果、泣きじゃくりながらも受け入れた。

 そうして“狼軍団”たちは最後の旅路に出た――はずだったが、道中、思いも寄らない災難に見舞われた。高速で、背後から走ってきたトレーラーに襲われ、道端に転落したところを拉致されたのである。被せられた頭陀袋を剥がされたフィルたちの前に立っていたのは、マーシャル(ジョン・グッドマン)と名乗る男――直接逢うのは初めてだが、フィルやステュには覚えがあった。ラスヴェガスでの騒動の際にその名を知った、ギャングのボスだ。

 マーシャルが“狼軍団”を拉致した理由も、彼らにとって因縁の人物にまつわることだった。2度に亘るトラブルで一同を悩ませたクレイジーな中国人チャウ(ケン・チョン)を探し出せ、というのである。チャウは策を用いてマーシャルの手に入れた金塊を奪い、ようやくマーシャルが見つけたときにはタイの刑務所に収容されていたが、最近になって脱走、密かにアメリカに戻ってきた、という情報が入っていた。しかしこの男はなかなか尻尾を掴ませず、唯一密に連絡を取っていた痕跡のあるアランとその仲間たちを狙ったのである。

 マーシャルは3日以内にチャウを見つけ出し、金塊を取り戻せなければ、ダグを殺す、と脅して、他の3人を解放した。バチェラー・パーティの失態に懲りて以来、ラスヴェガスには近寄らず、酒も控えていた一同は、だが酔っ払いもしていないのに、いままで以上の窮地に追い込まれていた――

[感想]

 高いレーティングの定められた映画はヒットしにくい、という定説をものともせず、記録的な興収を残した『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』、『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』に続くシリーズ第3作にして、現時点では完結篇と謳っている作品である。

 このシリーズは、物怖じせずに繰り出される過激なギャグの数々に、独身男性の煩悩や、飲み明かした直後に記憶がない、という恐怖など、随所に男達の生々しい姿を織りこんだ描写、ハチャメチャのようでいて芯の通ったストーリーなど、コメディとしての矜持を保ちながらも長篇として完成されていることが大きな魅力だ。やもするとただハチャメチャなだけで、現実味の異常に乏しい展開になることもままあったコメディ映画のジャンルにおいて、突き抜けた笑いと納得のいくプロットを用意した、というのが、本篇が突き抜けた要因ではなかったか、と個人的には分析している。

 完結篇となる本篇は、だが3作目にして初めて定石を外している。題名に“二日酔い”を意味する“ハングオーバー”を冠しているにも拘わらず、本筋のなかで酩酊する場面がないのだ――ただ、過去から残っているモノ、という意味に取れば間違いではないのだが、2作目まで敢えてパターンを踏襲してきたことを思うと驚きであり、かなり意外に感じる。

 もっと顕著なのは、クライマックスでの“謎解き”がなくなったことだ。このシリーズは1作目も2作目も、ただ単に筋が通っている、というだけではなく、そこにある謎を解く、という趣向があった。ミステリ的趣向にはうるさいほうだ、と自認している私だが、さり気なく伏線が設けられ、実に合理的な謎解きが行われることに感嘆を禁じ得なかった。なまじっかな逆転劇を売りにしているミステリ映画などより、遥かに質は高かったのだ。そのカタルシスが失われたのは少々勿体ない。

 とは言え、基本はコメディでありながら、プロットに芯が通っていることは変わりない。また、謎解きのカタルシスこそないものの、ミステリ映画に通じる趣向はきちんと設けられている。第1作から登場する犯罪者であるチャウの、前作までのクレイジーさを思うと意外なほどの――だがどうして生き残ってきたのかとても納得のいく知恵者っぷりは、本篇の持ち味を従来と異なったかたちで留めていると言えよう。

 そう、本篇で特徴的なのは、これまで影の主役とさえ言えるほどに優れた存在感を発揮してきたチャウが、実質的に主人公たちのグループに加わった感があることだ。酒を呑まなくても充分すぎるほどにクレイジーなこの男が、“狼軍団”の名付け親にしてすべてのトラブルの根源であるアランと共に、壮絶な大騒動を巻き起こす。前作までにもそういう傾向はあったが、本篇はこのふたりの問題児のキャラクターに焦点を当て、魅力を徹底して引き出すと共に、巧みに組み合わせて、先読みの出来ない物語に仕立てている。酔っ払っているわけでもないのに制御不能で、身も蓋もないがしかし芯が通っている――表面に見える構造は異なっていても、世界観、作品のムードは決して変わっていない。

 そして本篇の特に評価すべきポイントは、きちんとこの3部作をシリーズとしてまとめるために、第1作からの因縁を可能な限り踏まえていることだ。第1作でのある意外性を演出した人物が顔を出したかと思えば、会話のなかでちらっと名前が出ただけの人物が初めてメインキャストたちの前に姿を現し話を転がす。第2作で登場しなかったことが逆に意外な人物が3作目にして復活を遂げ、コメディ主体の本篇にちょこっと情感をもたらす一方で、別の笑いどころを生み出しているのも感慨深い。しかもクライマックスの舞台に、当然のようにあの場所を選んでいるのも気が効いている。

 前述した通り、酔っ払っている場面はほとんどないし、謎解きの趣向も薄まっている。アランとチャウの破壊力は遺憾なく発揮されているが、そのぶんフィルやステュが割りを食い、もうひとつ弾けきれなかったのが惜しまれる。しかし、それでも本篇は、シリーズが生み出してきた空気を完璧に引き継ぎ、色々なものに決着をつけようとした、正しい完結篇に仕上がっていると言えよう――基本、人間はそう簡単に変われるものではない、ということを語っている、という意味においても、この結末は作品として正しい。ひととして間違っている、というかかなり駄目ではあるが。

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