週末は封切り鑑賞……とはいえいちばん観たいのはきのう観てきた、今日封切りした作品の中では、特に優先しておきたいものは今のところない。なので本日は、押さえておきたいもののなかから、空模様やついでに片付けておきたい用事の兼ね合いで選びました。
出かけたのは夕方、向かったのは渋谷。昼間降り出した雨はもう止んでいましたが、ついでの用件の都合もあるので、電車にて移動です――電車移動だと書き物も出来るしね。お陰で感想仕上げられたしね!
残念ながらついでのほうの用事は不首尾に終わりましたが、目当ての映画のチケットは無事に確保出来ました。同じヒューマントラストシネマ渋谷、しかも同じスクリーンで続けて上映なので、移動時間を考慮しなくて済むのは有り難い。
本日鑑賞したのはどちらも、スペインのアレックス・デ・ラ・イグレシアという監督の作品です。配給会社のサイトで新作をチェックしていたとき、松竹のページに載っていた原題と簡単な説明に惹かれて記録しておいたのですが、だんだん情報が明確になるにつれどんどん気になってきました。本国スペインではゴヤ賞を多く受賞する人気と評価を備えながら、日本ではあんまり大々的に上映されているイメージがなく、私自身はちゃんと名前を意識したのは今回が初めて。設定だけ聞いても非常に好みだったもので、せっかく同時公開してくれるなら、と一気に押さえてきたわけです。
1本目は2012年作品、事故で工事現場の鉄の棒が頭に刺さって動けなくなった男と、彼を巡って右往左往する人々の様子をブラックなユーモアに彩って描いた『刺さった男』(松竹配給)。
外国のコメディはいまいち理解出来ない、というのはよくあるパターンですが、これは問題なく笑えます。そしてそのブラックぶりがいっそ痛快なほど見事。金銭的に追い詰められていた男が自らの窮地をチャンスに変えようと試みる一方で、そんな彼の取材や、救出の展開を巡って様々な思惑が交錯する。そんなことしている場合か、と思いながらも、すべてがありそうな話で、笑いながら慄然としてくる。わずかながら情を優先して動くひとびとの姿がまた切なくなります。極めて限られた舞台で目紛しくスピーディに展開する90分に、心地よく翻弄されました。
これはいい、と期待を募らせつつ、トイレに行ったり軽食を買ったりしてふたたび同じ座席に戻り鑑賞した2本目は2013年発表、子連れの強盗と大事な儀式を前にした魔女達が交錯して起きる大騒動をハチャメチャに描く『スガラムルディの魔女』(松竹配給)。
こちらもまた素晴らしく面白い。強盗シーンから追跡劇に入ったあたりで充分に笑えるんですが、きちんとオカルトの定石を踏まえつつも全く予測出来ない展開に、登場人物と一緒になって振り回される。『刺さった男』以上にどこに行くか解らず、もう最後にはただただ笑うしかない。これはほんとーに素晴らしかった。
他の作品が同じくらいのクオリティなのかは解りませんが、今回公開された2本を観る限り、一部の好事家だけが楽しむには勿体ない才能だと思います。DVDもけっこうリリースされているので、今後積極的にチェックしてみようっと。
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