未だに基本は紙書籍が好きで、紙媒体でのリリースがある限りはそちらを優先したいタチです。
しかし、実際そうも言っていられない事情がある。未だに出版業界は不況のただなかにあり、私の好むようなタイプの作品は部数も望めないためにあまり刊行されない。出ても、部数が絞られてしまうためどうしても高くなる。個人的に、過去の知られざる作品の復刊を色々と待ち望んでいるのですが、まさにそういうものが高くなったりするのです。
しかし実は、こういうマイナーなものが、電子書籍ではけっこう揃っていたりするのです。たとえば、いま角川文庫の紙媒体では横溝正史作品は有名作ばかりになってしまってますが、電子書籍には金田一耕助の地味なもの、由利先生のシリーズなどもちゃんと収録されている。実際、このあいだ映画版を鑑賞してきた『吸血蛾』も、電子書籍では入手が容易なのです。
このあいだの『吸血蛾』は、どうも説明不足が多くて、果たしてどの程度原作に沿っているのか知りたくて、電子書籍版をちまちま読んでいました。前述の通り、未だに抵抗があって、何冊か購入しているもののなかなか読み終えられずにいたのですけれど、ここに来てようやく馴染んできて、本日やっと読み終わった。
いざ慣れてみると、基本的に紙であろうと電子媒体であろうと、面白さに変わりはない。現代とは異なる、妙に芝居がかった語り口や、最近眼にしなくなった表現に遭遇できる面白さは、紙と違いはないのです。なので、ここに来て初めて、電子書籍であれこれ読んでみよう、という気分になっております。
そんな矢先に、こんな情報を見つけた。小学館の、P+D BOOKSという新しいレーベル。入手困難になっている書籍を毎月数冊セレクトし、ペーパーバックと電子書籍にて同時にリリースする、という趣旨です。
新作も大事ですが、埋もれてしまった中にも興味深い作品はいくらでもある。そういうものを、手に取りやすいかたちでリリースしてくれるのは大変に有り難い。個人的には出来る限り応援したいところです。
……でも、ペーパーバックと電子書籍とが同時にリリースされるなら、私はやっぱり紙媒体に走りそうだなー。電子書籍だと、読書家の母に貸すのも面倒だし……。
コメント