4月から営業を開始したTOHOシネマズ新宿ですが、約2ヶ月間、第2スクリーンだけはずっと閉まっていた。それは、都内では六本木と同時に初導入となる、体感型シアター・システム“MX4D”の導入が遅れて始まる予定となっていたためでした。基本的に新し物好きの私としては、ずーっと体験してみたくてうずうずしていたのです。
が、いざオープンしてみると、私にはちょっとチケットを確保しづらい代物だった。私は係員に確認してもらわないと効かない割引を使用しているため、どうしても劇場の有人窓口でチケットを購入する必要があるのですが、オープン直後で話題となっていることに加え、システムの性質上どうしても座席数は少なくなってしまうので、必然的に席が埋まるのは早い。窓口は朝、劇場がオープンしなければ利用できないのに対し、オンライン販売は日付が変わった瞬間から、2日後のチケットが購入可能になりますから、どうしても利用したい人はネットで押さえてしまうに決まっている。結果、先週末のスタート当日は早々と席が埋まるし、それ以降も私にとっては非常に確保しづらい状態だったわけです。
これはもう割引にこだわっているとずっと確保し損ねる、と直感したので、とうとう奥の手を使いました――シネマイレージのポイント鑑賞を利用したのです。これだと、窓口でなくても安く購入出来る(支払うのはMX4Dなどの追加料金だけ)。最悪、割引無しで買う、ということも考えましたが、700円は差が出るので、どうしても二の足を踏んでしまうのです。
というわけで、本日夕方からTOHOシネマズ新宿へ。MX4D初体験に選んだのは、伝説の近未来アクション久々の最新作、荒廃した世界で生き延びるための逃避行に赴く女達と、成り行きから彼女らと行動を共にする男の冒険を描いた『マッドマックス 怒りのデス・ロード(字幕・3D・MX4D)』(Warner Bros.配給)。……実は先週のオープン以来、新宿ではもうひとつ、『極道大戦争』もMX4D対応スクリーンで上映してたんですが、なんかあちらは初体験の作品としてはピンと来なかったので。三池崇史監督嫌いじゃないけど。
肝心の初体験の感想は、というと……これはやっぱり作品を選ぶ、というのが正直なところ。実は序盤、座席の動きやギミックの反応が気になってしまって、内容に集中出来ませんでした。
観る前から気にはなっていたことですが、このシステムは、作中のどのあたりに、観客の視点を置くか、という点が重要です。特に本篇序盤は、いったい自分がどこで作品世界を感じているのかが解らず、どうも没頭できなかった。
ただ、いざアクションが主体となっていくと、その辺は気にならなくなる。少なくともカメラと同じくらいの位置で観ている、というのが飲み込めるし、アクション自体にインパクトがあれば、振動や風が臨場感を底上げしてくれます。映画をアトラクション的に楽しむ、という観点から捉えれば、間違いなく現時点で最高のシステムではある。
しかしこれ、作品を観ているときよりも、劇場側、観客側それぞれの対応の面倒くささのほうが個人的には気になったのです。座席が振動し、風が拭いたり水滴が吹き付けられたり、という趣向があるために、座席の下や隣席に荷物を置く、というのは絶対に許されない。そこで、観客のために専用のロッカーが設けられているのですが、観客が出入りするたびに係員が手荷物に目を光らせている。私は3Dメガネを、ペットボトルを細工して自作したケースに入れて携帯しているのですが、それを持って入るときでさえいちど呼び止められました。正直、鬱陶しかったのですが、万一手荷物を足許に置かれて、座席に挟まったりしたら故障を招くわけで、係員側の行動も理解できる。そして、そうした細々なことに対処するために、通常のスクリーンでの上映よりも数倍タスクが増えることが容易に想像されるので、なんだか気の毒で仕方ない。これで客が入らない作品だったら、やってられんだろうなー……。
序盤こそ戸惑いはあったものの、慣れれば映画を新しい形で楽しめるシステムであるには違いない。ストーリーのほうに没頭したい、という場合は避けた方がいいでしょうが、はじめからアトラクションとして楽しむつもりである、或いは内容を知った上で更に臨場感を楽しみたい、という作品なら、今後も利用してみていいかも。公開が予定されている対応作品で、これは絶対に文句なく楽しめるだろう、と思えるのは――たぶん、『ジュラシック・ワールド』ではなかろうか。今週末からは『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』が始まりますが、私はとりあえず、IMAXでいちど観ておくことにします。まずはもうちょっと冷静に観たい。
なお、肝心の映画本篇ですが、こちらも楽しかった。世界観のクレイジーさに対し、登場人物の設定やストーリーの構成が思いのほか真面目だったのがやや物足りなかったんですが、それを差し引いてもあの荒廃した近未来のヴィジュアルや破天荒なアクションは一見に値する。
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