レンタルDVD鑑賞日記その509。

  • 『ほんとにあった!呪いのビデオ71』(BROADWAY[発売])

 今月リリースされたばかりのシリーズ最新巻です。ドライブレコーダーに残った奇妙な映像“タクシー”、何故か家屋の内部を映した監視カメラに残された不可解な映像“老人”、母を亡くし孤児となる前に映された怪奇映像の背景を探るうちにやり切れない事実が浮かび上がる前後篇“瑕疵”など6篇を収録。

 けっこう長期に亘った菊池宣秀演出が離れて、新たに着任したのは、たぶんシリーズでは初めて演出として出戻りとなった福田陽平と、演出補として携わっていた経験のある寺内康太郎――何と、私がちかごろいちばんお気に入りだった『ほんとうに映った! 監死カメラ』のコンビです。これはさっさとチェックしないと、と思い、久々に実店舗にて借りてきました。

 ……演出が替わっただけでこんなに質が上がるもんなの?

 長期シリーズだからこそ出来るはずの工夫が構成に乏しかったり、ドキュメンタリー部分で随所に手際の悪さが窺えたりしつつも、終盤ではまあまあ納得のいく水準まで上がってきた菊池演出ですが、こうしてみるとやっぱりまだ力不足だった、としか言いようがない。

 この71巻に収録されたエピソードは、映像自体はけっこう類型的とも言えるのですが、確認された状況、その後の展開に顕著な違いがあるために、そのことをほとんど意識させない。映像のみでドキュメンタリー部分がないものでさえ、シチュエーションが特徴的でインパクトがあり、ドキュメンタリー部分での補強が加わったものは純粋に質が高い。たとえフィクションだったとしても、状況や語り口にしっかりとした現実味があることに唸らされますし、何よりそのシチュエーション自体が実に興味深い。

“タクシー”は著名なタクシー怪談が映像で確認された例として面白いし、続く“シルエット”は段階を踏んでくる怖さがある。映像に状況証拠が加わることで不気味さを増している“シリーズ監視カメラ 老人”、シチュエーションそのものが特異な“かくれんぼ”も秀逸。

 しかし何と言っても白眉は前後篇のエピソード“瑕疵”です。観終わってこんなにおぞましい印象を留めるエピソードは、あれこれ言いつつも全体の質は低くなかったこのシリーズにおいても珍しい。ある事実が判明する場面で思わず声が出てしまうほどでした。

 演出ふたりとも外部で力を積んでの再登板ですから、よほど気合いが入っていた、とも考えられますから、果たして次巻以降もこの水準を維持できるか、というのはやや心許ない気もしますけれど、それでもしばらくは安心して楽しめそうです――どうやら『ほん呪』復帰に伴い、楽しみにしていた『〜監死カメラ』のほうは完結扱いになってしまったっぽいので、尚更このシリーズの今後に期待せざるを得ない。

 それにしても菊池演出は今後、どういう活動を予定しているのでしょーか。あれこれ文句をつけつつも、終盤はかなり実力をつけていたと思うので、このままフェイドアウトされてしまうのは惜しい。もし他のシリーズに参加されるようなら是非とも拝見したいんですが……。

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