原題:“Kingsman : The Golden Circle” / 原作&製作総指揮:マーク・ミラー&デイヴ・ギボンズ / 監督:マシュー・ヴォーン / 脚本:マシュー・ヴォーン&ジェーン・ゴールドマン / 製作:マシュー・ヴォーン、デヴィッド・リード、アダム・ボーリング / 製作総指揮:スティーヴン・マークス、クラウディア・ヴォーン、ピエール・ラグランジェ / 共同製作:ジェーン・ゴールドマン / 撮影監督:ジョージ・リッチモンド / プロダクション・デザイナー:ダーレン・ギルフォード / 編集:エディ・ハミルトン / 衣装:アリアン・フィリップス / キャスティング:レジナルド・ポースキャット・エドガートン / 音楽:ヘンリー・ジャックマン、マシュー・マージェソン / 出演:タロン・エガートン、コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、マーク・ストロング、ハル・ベリー、ペドロ・パスカル、エドワード・ホルクロフト、ソフィー・クックソン、チャニング・テイタム、ジェフ・ブリッジス、エルトン・ジョン / クラウディ製作 / 配給&映像ソフト発売元:20世紀フォックス
2017年アメリカ作品 / 上映時間:2時間21分 / 日本語字幕:松崎広幸 / PG12
2018年1月5日日本公開
2018年4月6日映像ソフト日本盤発売 [DVD&ブルーレイ2枚組:amazon]
公式サイト : http://www.foxmovies-jp.com/kingsman/
TOHOシネマズ上野にて初見(2018/01/06)
[粗筋]
エグジー(タロン・エガートン)が職場であるテイラー“キングスマン”を出た途端、かつての同輩であるチャーリー(エドワード・ホルクロフト)が襲撃してきた。壮絶な死闘の挙句に辛うじて撃退するが、そこに罠が潜んでいたことに、エグジーも“キングスマン”の頭脳であるマーリン(マーク・ストロング)も気づかなかった。
残された手懸かりから、チャーリーが“ゴールデン・サークル”と称する麻薬組織に関わっていることは判明する。だが、秘密諜報組織でもある“キングスマン”がその背景を探るよりも先に、“ゴールデン・サークル”は動いた。
ある計画を準備していた“ゴールデン・サークル”の首領ポピー(ジュリアン・ムーア)は、その障害となることが予測される“キングスマン”の殲滅をまず目論んだ。エグジー襲撃の際、密かに施した仕掛けで諜報員たちの情報を得ると、一斉にミサイル攻撃を仕掛けたのである。
幸いにしてそのとき、交際している彼女の両親と会食中だったエグジーと、スタッフとして軽視されたマーリンだけは難を免れるが、この攻撃で“キングスマン”は壊滅状態となった。
だが“キングスマン”には、最悪の事態に直面した場合のマニュアルも存在している。それが示唆したのは、アメリカ、ケンタッキー州に拠点を置く酒造業“ステイツマン”という組織。しかしその実態は、かつて“キングスマン”と同じ志の元、アメリカで密かに結成された、もうひとつの秘密諜報組織であった――
[感想]
前作がもたらしたインパクトは強烈だった。“ジェイソン・ボーン”シリーズのヒットにより現実的で重い方向性にシフトしていたスパイ映画の潮流にあえて逆らい、SF風のギミックを多用、かつての“ジェームズ・ボンド”映画の面白さを蘇らせる一方、意外性に富んだプロットと意表をつくアイディアで彩った。そうして誕生した前作は熱狂的な支持を集め、続篇の製作を可能にしたわけである。
ただ、『キングスマン』の続篇を作る、というのは、決して容易ではなかったはずだ。物語的には続篇があっても何も不思議はないが、しかし1作目のクオリティの高さとインパクトの強烈さは、上回ることはもちろん、比肩するレベルに持っていくことも厳しい。ごく一部の例外を除き、続篇はおおむね第1作より劣る、と言われるのは、大ヒットや内容的成功から生まれる期待に、応えるのが難しい、ということも大きく、内容でも興収でも大成功を収めていた本篇の場合、難易度は特に高い。
率直に言えば、やはり完璧に応えた、と評するのは無理だろう。やはり前作の、ノンストップで昂揚を誘うような展開のあとに繰り出される、クレイジーなクライマックスの衝撃は超えていない。
しかし、この異様に高く数の多いハードルから、本篇は決して逃げることなく全力で挑んでいる。それは冒頭から激しいアクション描写と、かなり早い段階で訪れる衝撃からも明白だ。前作で育ったキャラクターの一部を文字通りスイッチひとつで鮮やかに退場させると、この世界観なら存在していても不思議でない別の組織を登場させ、予測困難な展開へとなだれ込んでいく。
決して前作以上とは断言できないながらも、それに匹敵するレベルを目指した、というのがよく解るのが、ここで登場するある人物の存在である――様々な情報から察しはつくにしても、この流れはなかなかのインパクトがある。そしてこのことが、前作では望むべくもなかったクライマックスのシチュエーションに繋がっていくのだ。
前作もアクションのクオリティは高かったが、ことこの点に限って言えば、本篇は前作を凌駕している、と断じてもいい。想定外の経緯により“キングスマン”のエージェントになったエグジーと“あの人物”が、大量の敵と渡り合うくだり、そしてボスを前にしての最後の戦い。前作でも披露した、縦横無尽に動き回るカメラワークで捉えられるアクションは、細かにユーモアを鏤め緩急をつけつつもスピード感充分で、呑まれてしまいそうなほどだ。作品全体のアイディア、構成もさることながら、アクションシーンそれ自体のクオリティの高さ、激しさは現代の映画界においても最高水準だろう。
どうしても前作と比較するとやや小振りとは言い条、ちゃんとショックも仕掛けている。PG12とやや高めのレーティングに相応しく、いささかえげつない趣向ではあるが、そこには前作を評価するファンの期待に応えたい、という意志が明確に感じられるし、超えた、とは言えないまでも、充分なインパクトを備えている。
全体を通してのインパクトはどうしても前作には及んでいない、と感じてしまうが、しかしその実、アクションや細かな展開のインパクトなど、ひとつひとつの要素には前作を超えているものも多い。ファースト・インパクトの強さを充分に認識したうえで、極限までそれを乗り越える工夫を重ねてきたことがはっきりと窺えるのだ。だから、総評としては前作ほどではない、と感じたとしても、恐らく多くの、前作に魅せられ本篇に接したひとを喜ばせる仕上がりは実現している。
本篇が一定の成功を収めたことで、どうやらスタッフは『キングスマン3』に向かって動き始めた、という噂がある。第3作であっても相変わらずそのハードルは厳しいままだろうが、もし実現するならば、きっと全力で臨んでくれるに違いない。
関連作品:
『キングスマン』
『キック・アス』/『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』
『ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館』/『X−MEN:フューチャー&パスト』/『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』
『SING シング』/『英国王のスピーチ』/『シングルマン』/『ブラインドネス』/『サバービコン 仮面を被った街』/『リボルバー』/『記憶探偵と鍵のかかった少女』/『悲しみが乾くまで』/『クラウド アトラス』/『エージェント・マロリー』/『サイド・エフェクト』/『クレイジー・ハート』/『トゥルー・グリット』
『ボーン・スプレマシー』/『007/慰めの報酬』/『マチェーテ・キルズ』/『トリプルX:再起動』
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