原題:“How to Train Your Dragon 2” / 原作:クレシッダ・コーウェル(小峰書店・刊) / 監督&脚本:ディーン・デュボア / 製作:ボニー・アーノルド / 製作総指揮:ディーン・デュボア、クリス・サンダース / 美術監督:ピエール=オリヴィエ・ヴィンセント / デジタル・スーパーヴァイザー:マイケル・ネッシ、ウェイ・シャオピン / 編集:ジョン・K・カー / 音楽:ジョン・パウエル / 声の出演:ジェイ・バルシェル、ケイト・ブランシェット、ジェラルド・バトラー、クレイグ・ファガーソン、アメリカ・フェレーラ、ジョナ・ヒル、クリストファー・ミンツ=プラッセ、T・J・ミラー、クリステン・ウィグ、ジャイモン・フンスー、キット・ハリントン / 声の出演(日本語吹替版):田谷隼、深見梨加、田中正彦、岩崎ひろし、寿美菜子、淺井孝行、宮里駿、南部雅一、村田志織 / ドリームワークス・アニメーション/マッド・ハッター・エンタテインメント製作 / 映像ソフト発売元:20世紀フォックス ホーム エンターテインメント ジャパン
2014年アメリカ作品 / 上映時間:1時間42分 / 日本語字幕&吹替翻訳:岸田恵子
日本劇場未公開
2015年7月3日映像ソフト日本盤発売 [2D DVD&ブルーレイセット :amazon|3D ブルーレイセット:amazon|1&2 2D ブルーレイBOX:amazon]
公式サイト : http://video.foxjapan.com/release/httyd2/
第8回したまちコメディ映画祭in台東 カウントダウンイベント 野外上映会にて初見(2015/08/08)
[粗筋]
あれから5年の時を経て、ヴァイキングの里・バーク島はすっかり様変わりしていた。
ヒック(ジェイ・バルシェル/田谷隼)が実用化したドラゴン馴致の技術は島中の人々に浸透し、かつてバーク島で害獣として駆逐されていたドラゴンは、いまや島民たちの良き友人となっていた。
ひ弱でひとりぼっちだったのは昔の話、いまや島の英雄として尊敬されるようになったヒックに、父親のストイック(ジェラルド・バトラー/田中正彦)はバーク島の長の地位をヒックに譲ることを決意する。しかし、父の偉大さと、民を率いる難しさを充分に知っているヒックは咄嗟に受け入れられず、相棒であるドラゴンのトゥースと共に遠乗りに赴く。
心配してやって来たアスティ(アメリカ・フェレーラ/寿美菜子)と共に、新たに発見した島を探索していたとき、突如彼らは襲撃を受ける。その島の人々はドラゴン狩りを行っており、どうやらドラゴという人物に脅され、多数のドラゴンを捕獲して収めねばならない状況に追い込まれているらしい。
どうにか脱出に成功したヒックとアスティは島に戻ると、ストイックに事情を報告する。最初は放っておけばいい、という態度だったストイックだが、ドラゴという名前を聞いた途端に顔色を変え、島民やドラゴンに籠城を命じる。どうやらストイックは、ドラゴが極めて危険な人物であり、遠からず戦争が始まることを予感したようだった。
害獣といわれていたドラゴンと絆を作り、島の人々の価値観さえ変えたことのあるヒックは、話し合いで解決する可能性を信じた。制止を振り切り、島を飛び出して、ドラゴのもとへと向かおうとする。
その道中、ヒックが巡り会ったのは、彼が想像もしていなかった人物だった――
[感想]
上にも記しているとおり、本篇は日本で劇場公開されていない。映画祭や各地の企画で上映はされているが、一般の劇場で通常のプログラムとして上映されたことはない。
決して駄作だったわけではない。本国ではきちんとヒットを果たし、アカデミー賞長編アニメ部門にもノミネートされ、ゴールデン・グローブ賞ではアニメ作品賞をしっかり獲得するなど、高い評価を受けている。実際に鑑賞してみて、そうした好成績も頷ける名作だった。
物語は前作から5年後の出来事を描いている。前作では冒頭、有害なものとして描かれていたドラゴンが人々に受け入れられ共存している姿は、前作を観たうえだと感慨深い。仮に前作を知らなくとも、人間とドラゴンの共棲ぶりや、レースという形で織り込まれた飛行シーンの爽快感で、すぐさま作品世界に惹きこまれてしまう。
前作の世界観を踏まえた上で、主題を拡張しているのも好感が持てるところだ。前作はノウハウがない段階からドラゴンとの共棲の道を探る過程が面白かったが、今回はそれ以上の次元が描かれている。ヒックに先んじて、他のひとびととは違うドラゴンとの生き方を追求したふたりの人物の対立、という構図が、一見したところシンプルな本篇のドラマに、厚みと膨らみをもたらしている。最初観ただけだと安易に感じられるクライマックスの逆転劇も、しかし大前提となる前作の物語、それを抜きにしても本篇序盤で描かれるヒックとトゥースの絆、といったものを考え合わせると、必然的であり、感動を呼ぶのも道理なのだ。いささかあざとさが見え隠れするので、あそこがピンと来ない、という受け止め方もありそうだが、筋道はきちんと立てられている。
そしてこれも重要だが、物語が佳境に進むに従い、あらゆるモチーフが大きく膨らみ、現実世界では体感出来ない規模の冒険、スペクタクルが表現されているのが秀逸だ。中盤以降増えていくドラゴンの繊細な描写、大型ドラゴンの壮絶な戦い、それらもクライマックスで見事に結実している。
近年、日本の映画業界の状況は決して芳しくない。どれほどの大作であっても本国より公開が遅れがちだ、という事実も(あえて遅らせて他国での成績を宣伝材料に用いる意図などがあるようだ)あるが、公開前からどこかで「日本の市場には向かない」という判断が下され、劇場公開されない例が増えている。そういう状況にあって、映像ソフト直行とは言い条、曲がりなりにも輸入された本篇はまだしも幸運なほうだと言える。
だが本篇は間違いなくスクリーン向け、もっと言えば3Dで鑑賞する価値のある作品だと思う。残念ながら劇場公開は適わなかったものの、映画祭に始まり、各地で企画上映が実施されている。私は野外上映での鑑賞だったが、理想的とまではいかないものの、非日常感が作品空間に馴染んで、これはこれで得がたい体験だった。もし機会があるようなら、是非とも大きな画面でご覧いただきたい。
結果、こんなことなら普通に公開しておくべきだった、と業界を悔しがらせたらしめたものだ。そうすれば、既に企画が動いている、と噂の第3作は、映画館で当たり前に観られるかもしれない。
関連作品:
『ヒックとドラゴン』
『ロボコップ(2014)』/『ロビン・フッド』/『完全なる報復』/『ウルフ・オブ・ウォールストリート』/『トランスフォーマー/ロストエイジ』/『LIFE!』/『ワイルド・スピード SKY MISSION』/『ポンペイ』
『カールじいさんの空飛ぶ家』/『メリダとおそろしの森』/『パラノーマン ブライス・ホローの謎』/『STAND BY ME ドラえもん』
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