原題:“Cannonball Run 2” / 監督:ハル・ニーダム / 脚本:ハーヴェイ・ミラー、ハル・ニーダム、アルバート・S・ラディ / 製作:アルバート・S・ラディ / 製作総指揮:アンドレ・モーガン、レイモンド・チョウ / 撮影監督:ニック・マクリーン / プロダクション・デザイナー:トム・アザーリ / 編集:ウィリアム・D・ゴーディーン、カール・クレス / 衣装:ノーマン・セイリング / 視覚効果:フィリップ・コーリィ / 音楽:アル・キャプス / 音楽監修:スナッフ・ギャレット / 出演:バート・レイノルズ、ドム・デルイーズ、ジャッキー・チェン、シャーリー・マクレーン、ディーン・マーティン、サミー・デイヴィスJr.、マリル・ヘナー、スーザン・アントン、キャサリン・バック、リカルド・モンタルバン、テリー・サヴァラス、ジェイミー・ファー、ジャック・イーラム、フランク・シナトラ、ジム・ネイバース、リチャード・キール / 配給:東宝東和 / 映像ソフト発売元:Warner Bros.
1983年アメリカ作品 / 上映時間:1時間48分 / 日本語字幕:?
1983年12月17日日本公開
2010年4月21日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon]
DVD Videoにて初見(2014/03/08)
[粗筋]
アラブの豪族・フェラフェル家の王(リカルド・モンタルバン)は憤っていた。最速であることを誇りにする一族の矜持にかけて、アメリカで開催される大陸横断レース“キャノンボール”チャンピオンという称号を手に入れるべく息子のシェイク(ジェイミー・ファー)を送りこんだが、優勝を逃してしまった。今後こそ優勝してこい、と命じる王にシェイクは、今年は開催されない、と訴えるが、王はこう提案した――自分で主催すればいい。
その報はアメリカ各地のスピード狂たちのあいだに、瞬く間に響き渡った。
前回は救急車を利用したJ・J(バート・レイノルズ)とヴィクター(ドム・デルイーズ)は将軍と軍人に扮し、核燃料輸送の極秘使命に携わっている、という設定で切り抜けることを目論む。文無しのコンビは中古車販売の叔父を頼って、オランウータンつきの車を借りて参加した。ジル(スーザン・アントン)とマーシー(キャサリン・バック)の美女ふたりは、毎度ながらお色気を駆使して速い車を乗り継いでいくつもりらしい。ジャッキー(ジャッキー・チェン)は新たな相棒アーノルド(リチャード・キール)と共に、日本製の高性能改造車で満を持して挑む。
他方、ブレイク(ディーン・マーティン)とフェンダーバウム(サミー・デイヴィスJr.)のコンビは、当人たちも気づかぬうちにトラブルのタネを蒔いていた。前回同様に聖職者のふりをするつもりだったが、彼らが借金をしているドンドンの部下に見つかり、キャノンボールが開催されることを漏らしてしまう。だが、ドンドンもまたマフィアのカネローニー一家に巨額の借金をしており、その返済のためにシェイクを誘拐することを目論んだのだ。
各人の思惑が入り乱れるなか、お祭り騒ぎが始まった――
[感想]
正直に言って、粗筋を書くのが億劫になる。そのくらい、魅力に乏しい出来映えである。
第1作はそれなりにヒットしたとはいえ、面子を集めてドタバタを繰り広げるだけの微妙な仕上がりだった。本篇は主なメンバーの再結集が実現し、更にシャーリー・マクレーンやフランク・シナトラといった大物を加えているが、出来映えは更に劣化している、と言わざるを得ない。
前作にもそういう印象があったが、今回は余計に導入がだらだらとしているように感じる。前作のメンバーたちの現在の様子と、レースに参加するまでのエピソードを盛り込み、後半でのクライマックスに繋がる伏線を設けている、というのは解るが、肝心のクライマックスがレースとほとんど連携しておらず、ダラダラっぷりだけがそのまま繋がっているので、盛り上がりに欠ける。
基本的にコメディ映画というのは、時代や土地柄、観る側の世代、更にはそれぞれ特有の感性にもよって、受けるか受けないか大きく分かれる、というリスクがある。だから作品を評価するのなら、そこはある程度割り引いて、知識があるのなら当時の流行なども踏まえて判断すべきなのだが、考慮したうえでも本篇はコメディとしていまひとつだ。あちこちでドタバタを繰り広げるが、さながら一発芸の応酬で、笑いがほとんど膨らまない。折角マフィアを介して複数のエピソードが絡んでいるのだから、クライマックス以前にもっと活かせばいいものを、バラバラにしてしまっている時点で論外なのだが、場面場面でさえもうまく膨らまないのだ。シャーリー・マクレーンがわざわざ尼僧姿で出ているのも、『真昼の決闘』に絡めた、という以上の効果を上げていないし、シナトラに至っては本人役で出ているのに、その面白みにも乏しい。
レースものなのに駆け引きがなく、いま誰が首位を走っているのか、どれほど頑張れば勝利できるのか、といった緊張や興奮がないのも勿体ない。これは前作にもあった問題点のはずだが、そこをまったく看過して、更に退屈な展開にしてしまったのは、そこから魅力を引き出すことなどはなから考慮していなかったのだろう――他の要素が秀でていればともかく、この有様では余計に惜しまれるポイントだ。
そして個人的に何よりも残念なのが、ジャッキー・チェンの扱いである。前作はそもそも、彼のハリウッド進出を企図した香港の制作会社が旗振りをして、オールスター・ムービーのなかにジャッキーやマイケル・ホイを加えることで、飛躍の足掛かりにしたような感があるが、本篇はクレジットでアルバート・S・ラディの名前が製作と脚本を兼ねているあたり、香港からラディに主導権が渡り、前作のオールスター・ムービーという性質を押し出すかたちで踏襲することを選んだ、と勘繰りたくなる。だからジャッキーのアクションを際立たせる、という部分で後退したのかも知れないが、折角のクライマックスの大暴れのくだりでも、ちゃんと生身で挑む彼より、ワイヤーを駆使して人間離れした攻撃を披露するリチャード・キールのほうが目立っているのが、ファンとしてはどーにも癪に障る点である――別にキールは悪くないし、キャラクターとしては魅力的なのだが。
そのユルさをだらだらと愉しむ、という程度の感覚なら別に問題はないと思うが、真面目に批評しようとすると問題点ばかり論わねばならなくなる。今後も、出演者の関連作コンプリートを目指すファンや、ユルい映画を愛するひとびとには観られるだろうけれど、世間的には忘れられていく作品になるのではなかろうか――少なくとも、何の予備知識もなく本篇を愉しめるのは、どちらかと言えば珍しい部類に属すると思う。
関連作品:
『キャノンボール』
『ゴッドファーザー』/『ロンゲスト・ヤード』/『ミーン・マシーン』/『ミリオンダラー・ベイビー』
『シティヒート』/『デス・リベンジ』/『リオ・ブラボー』/『プロジェクトA』/『猿の惑星・征服』/『ザッツ・エンタテインメント』/『カプリコン・1』/『真昼の死闘』/『バーニー/みんなが愛した殺人者』
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