原題:“少林小子” / 英題:“Kids of Shaolin” / 監督:チャン・シン・イェン / 脚本: 何樹華、梁治強 / 製作:フー・チ、ラオ・フォン / 撮影監督:周柏齢 / 出演:リー・リンチェイ(ジェット・リー)、フー・チェンチャン、ユエ・ハイ、ユエ・チェンウェイ、ホアン・チューイェン、ティン・ナン、チ・チュアンホワ、チョン・チンウ / 配給:松竹富士 / 映像ソフト発売元:KING RECORDS
1983年中国、香港合作 / 上映時間:1時間42分 / 日本語字幕:進藤光太
1984年3月3日日本公開
2005年8月3日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]
DVD Videoにて初見(2011/05/16)
[粗筋]
川を挟んで居を構える龍家と鳳家は微妙な関係にある。
龍家は少林寺で修行を積んだテンルン(ユエ・ハイ)と弟のアールン(フー・チェンチャン)が、10年前に村が襲撃された際、親を失った子供たちを引き取って育てているが、女手がない。対する鳳家は、家長のパオ(ユエ・チェンウェイ)が男の子を切望して妻とのあいだにたくさんの子を設けるが、ことごとく女の子ばかりだった。
テンルンは鳳家の長女タイを、アールンは次女のアル(ティン・ナン)を嫁に欲しいと前々から願い出ているが、少林派にライヴァル意識の強い武当派の師範でもあるパオは、貢ぎ物に牛10頭を用意する、という条件を突きつけていた。或いは鳳家に世継ぎの男子が生まれればもう少し話し合いの余地は出来そうだが、新たに生まれた子供はまたしても女児で、鳳家も龍家も落胆する。
男手だけで自分たちを育ててくれた恩に報いるため、サンルン(ジェット・リー)を筆頭とする龍家の子供たちは、何とか父と叔父が結婚できるよう、様々な作戦を立てた。ちょっとした悪ふざけが原因で怒らせてしまった鳳家の三女シャン(ホアン・チューイェン)に取り入ろうとしたり、他の娘達となるべく仲良くなろうとしたり……パオによって少林派に対する偏見を植え付けられている娘達はなかなか靡こうとしなかったが、お互い異性に興味のある年頃ゆえ、争いながらも次第に親しくなっていく。
ある意味では長閑な対立を龍家と鳳家が繰り広げているその頃、かつて村を襲撃した禿鷹(チ・チュアンホワ)一派が、ふたたび村を襲撃するべく機を窺っていた。しかし、少林派と武当派というふたつの流派が存在する村を襲撃するのは今となっては容易ではない。そこで部下の老二が一計を講じた。村の近くの寺に侵入すると、住職を殺害して入れ替わり、信仰心の強いパオに取り入ったのである……
[感想]
2、と銘打っているが、ジェット・リーを輩出した『少林寺』と内容的に続き物になっているわけではない。監督や主要キャストが一緒であり、少大人達は無論、登場する子供たちの多くもどうやら武術を修得していることが窺えるぐらいで、あとはすっきり別の話、と言っていい。
むしろ、続篇のつもりで観ると、あまりの毛色の違いに少々戸惑うほどだ。前作にもコメディの匂いはあったが、本篇は誰の振る舞いもほとんど道化でコメディそのもの、ときおりキレのいい型の披露がなければ、アクション映画という認識も怪しくなってくる。何せ序盤、少しではあるがいきなり子供たちがミュージカルを始めるのだから。
ただそれでも、終始カンフーの匂いをさせている作品である。冒頭の悪ふざけでも、たぶん凡人がやればあんなアクロバティックな状態にはならないだろうし、当然のように訓練の風景があるかと思うと罰の内容も人間離れしており、そのうえ昼寝のときでさえ、筒のなかに身体を折り曲げて潜って眠る子がいるほどだ。絶対に落ち着いて眠れないと思うが。とにもかくにも、武術の基礎があるからこそ成り立つ暮らしをしている人々を描いている、という意味では、間違いなくカンフー映画である。
彼らを狙う盗賊が鳳家にスパイを潜りこませたあたりから若干話は動き始めるが、相変わらず基本的にはコメディのまま話は進む。何せ話の焦点が「結婚したい」「恋したい」というストレート極まりない願望なので、深刻になりようがないのだ。だいいちこのスパイもことあるごとに寄り目になってみたり、振る舞いがいちいちユーモラスなので、悪巧みをしているには違いないし最後には凶悪な素顔を見せるが、そのあたりまではいまひとつ憎めないのだ。
立派なのは、そこで精神論であったり、カンフー映画によくある“修行で強くなった”という趣向を加えず、あるがままにクライマックスまで繋いでしまった点だ。変に王道に戻したりせず、ユニークなまま話を膨らませている。如何せん全体のムードがシュールになってしまっているが、そこに徹した点は、好き嫌いはさておき評価すべきだろう。
それまでの鬱憤を晴らすべく、絶え間なく激しいアクションの応酬が繰り返されるクライマックスは圧巻である――が、ちょっと盛り込みすぎた結果、少々流れが間延びしてしまっているのがもったいない。個々の戦いをきっちりと締めくくるか、役割分担を明確にするかして、メリハリをつければもっと強烈なインパクトを発揮できたのではなかろうか。
とは言い条、カンフーを基底にした大家族コメディ、というユニークな物語を目指し、ある程度まで完成させたことは評価出来る。あのリー・リンチェイの主演第2作で、しかも『少林寺2』と銘打ってこの内容、というのは引っ掛かるかも知れないけれど――後者は日本の問題ではあるが。
ところで。
私が鑑賞したDVDには、オリジナル版の他に、日本で公開された当初のヴァージョンが、北京語及びテレビ放映時の吹替の2種類収録されている。私はオリジナルで鑑賞したのだが、折角なのでちょっとだけ日本公開ヴァージョンを少し鑑賞してみた。
……音楽の違和感が凄まじかった。
オリジナルでは龍家と鳳家の関係をアニメーションで綴るオープニングを用意しているが、日本版ではこれがすっぱり省かれている。二胡を用いたと思しいエキゾチックな音楽に至っては、かるーいフュージョン風ロックに置き換えられていた。
……これも売る工夫であり、リアルタイムでこのヴァージョンを鑑賞している人には嬉しいサービスなのだろうが、正直、いま観ると無茶すぎて、失笑を禁じ得なかった。吹替自体は、作品のコミカルな部分がいっそう引き立っていたので、こっちで観てもいいかも、とさえ思ったのだけど。
関連作品:
『少林寺』
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