原題:“Wall Street” / 監督:オリヴァー・ストーン / 脚本:スタンリー・ワイザー、オリヴァー・ストーン / 製作:エドワード・R・プレスマン / 共同製作:A・キットマン・ホー / 製作補:マイケル・フリン / 撮影監督:ロバート・リチャードソン / プロダクション・デザイナー:スティーヴン・ヘンドリクソン / 美術:ジョン・ジェイ・ムーア、ヒルダ・スターク / 舞台装置:レスリー・ブルーム、スーザン・ボード / 編集:クレア・シンプソン / 衣装:エレン・マイロニック / キャスティング:リサ・ブラモン・ガルシア、ビリー・ホプキンス / 音楽:スチュワート・コープランド / 出演:マイケル・ダグラス、チャーリー・シーン、ダリル・ハンナ、マーティン・シーン、ハル・ホルブルック、テレンス・スタンプ、ショーン・ヤング、シルヴィア・マイルズ、ジェームズ・スペイダー、ジョン・C・マッギンレー、ソウル・ルビネック、ジェームズ・カレン、リチャード・ダイサート、ジョシュ・モステル、ミリー・パーキンス、タマラ・チュニー、フランクリン・カヴァー、チャック・ファイファー、レスリー・ライルズ、ジョン・カポダイス、アンドレア・トンプソン、セシリア・ペック、ポール・ギルフォイル、アニー・マッケンロー / 配給&映像ソフト発売:20世紀フォックス
1987年アメリカ作品 / 上映時間:2時間4分 / 日本語字幕:戸田奈津子
1988年4月16日日本公開
2010年12月23日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon|Blu-ray Disc:amazon]
公式サイト : http://www.wallstreet-movie.jp/
DVD Videoにて初見(2011/01/31)
[粗筋]
1985年、ウォール街。
J・スタイナム証券会社で働くバド・フォックス(チャーリー・シーン)は、顧客の指示通りに行ったはずの取引で言いがかりをつけられ、7,000ドルの赤字を肩代わりさせられる。そこで彼は、かねてから接触を図っていたゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)により積極的なアプローチをかける決意をした。
ゴードンはマネーゲームで巨財を成した、バドのみならず若き証券マンにとって憧れの存在である。実に50回に及ぶ粘り強い訪問の末、誕生日プレゼントを渡す名目でようやく面会を成し遂げるが、バドの持ち込んだ商談はゴードンを喜ばせなかった。思いあまったバドは、彼の父カール(マーティン・シーン)が勤務し、かつてはバド自身も働いていたブルースター航空についての内部情報を提供する。同社は前年の墜落事故以来株価を落としていたが、調査の結果、事故の原因が飛行機の設計ミスにあり、航空会社の整備不良はなかったことが認められたのだ。
この一件でバドはゴードンに目をかけられるようになる。だが、ゴードンがバドに吹きこんだのは、証券マンとしては危険な行動だった――同業他社の尾行に、情報に関する故意の漏洩。
最初、僅かに感じた抵抗は、唸るほど転がり込んでくる大金を前に吹き飛ばされてしまった。バドはゴードンのもと、極めてダーティな取引の世界に身を浸していく……
[感想]
公開当時、その描写のスタイリッシュさと、魑魅魍魎蠢くマネービジネスの世界を活写したことで好評を博し、ウォール街に新たな若者たちを送りこむきっかけを齎した話題作である。
作中、証券取引に関する用語についてあまり解説を施していないので、多少でも知識がないと事態の把握に戸惑うだろうが、それでもマネービジネスに携わる人々の常識とは隔絶した価値観、変化の激しさ、そしてある種の禍々しい気配は強烈に伝わってくる。
その瘴気めいたものを滲ませた雰囲気を誰よりも体現しているのは、マイケル・ダグラス演じるゴードン・ゲッコーだ。広々としたオフィスで、何台も設置したパソコンの画面を睨みながら電話口で怒鳴りつけ、レストランやバーで青臭さの目立つバドに向かって鷹揚かつ豪快に振る舞う様は、マネービジネスの世界が孕む怪しさ、危うさを人の形に凝縮したかのようだ。物語としては全篇一貫してバドの視点で綴られているが、作品を支配しているのはゴードンと言っていい。
解りづらさはあるものの、欲に翻弄される人々の姿を重厚に描き出したドラマは圧巻だが、個人的にいまひとつ物足りなく思えたのは、画面作りだ。
まず、全体に色遣いが妙にくっきりしすぎている。フィルムではなく、テレビなどで用いられるVTRで撮影されたように感じられる。そのうえ、被写体と距離を保って構図を組み立てるのではなく、近い距離からアップを基調にして撮影しているので、なおさらに小さな画面で鑑賞されることを前提としたテレビドラマ、もっと言ってしまえば、ドキュメンタリー番組の再現ドラマのように見えてしまう。シンセサイザーを多用した音楽も、いま聴くと非常にチープだ。なまじ、往年の名作の貫禄ある画面作りに立て続けに触れてしまった目には、どうも安っぽく感じられるのが残念に思える。
とはいえ、それでも惹きつけられるのはやはり人物描写、そしてやや解りづらいながらもマネービジネスの世界の深淵を巧みに織りこんでいるが故だろう。
また、23年を経たこの時点から鑑賞すると、随所に意味深なモチーフやフレーズが混ざっているように思えるのも、興味を掻き立てるところである。クライマックスの展開の鍵を握っているのが航空会社、しかもそこにキーワードとして年金が絡んでくるあたりはその最たるものだが、他にも登場人物たちがあちこちで口にする銘柄の多くが現在も耳にする企業ばかりで、現在の状況と比べて眺めるのも一興だろう。
何よりも象徴的なポイントは、本篇がプロローグ部分で、あのワールド・トレード・センターを撮していることだ。僅か23年しか経ていないのに、これほど時の流れを強烈に実感させる映画も珍しい――そして恐らく、23年振りに製作され、2011年2月4日に日本でも公開される続篇『ウォール・ストリート』を鑑賞すると、その感慨はより深められるに違いない。
関連作品:
『ブッシュ』
『ディパーテッド』
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