原題:“Per Qualche Dollaro in Piu” / 英題:“For a Few Dollars More” / 監督:セルジオ・レオーネ / 脚本:ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ、セルジオ・レオーネ / 製作:アルトゥロ・ゴンザレス / 撮影監督:マッシモ・ダラマーノ / 編集:ユージニオ・アラビソ、ジョルジオ・セラロンガ / 特殊効果:コリドリ・ジョヴァンニ / 音楽:エンニオ・モリコーネ / 出演:クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリーフ、ジャン・マリア・ヴォロンテ、クラウス・キンスキー、ヨゼフ・エッガー、ローズマリー・デクスター、マーラ・クラップ、ルイジ・ピスティッリ、パノス・パパドポロス、ベニート・ステファネッリ、ロベルト・カマルディエル / 配給:UA / 映像ソフト発売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント
1965年イタリア、スペイン合作 / 上映時間:2時間12分 / 日本語字幕:?
1967年1月日本公開
2010年8月4日DVD日本最新盤発売 [DVD Video:amazon|Blu-ray Disc:amazon]
DVDにて初見(2010/10/03)
[粗筋]
西部の集落に、時を同じくして2人の賞金稼ぎが現れた。ひとりは、もともと優れた射撃手として軍で活躍していたが、いまは賞金稼ぎに身をやつしているモーティマー大佐(リー・ヴァン・クリーフ)。もうひとりは、早撃ちの名手であり、若く血気盛んなモンコ(クリント・イーストウッド)。
当然のように両者は、高額の賞金の賭けられた人物に目をつけた。その男の名はインディオ(ジャン・マリア・ヴォロンテ)。投獄されていたが、部下たちの手助けで脱走すると、インディオはさっそく銀行強盗の計画に着手する。牢獄の中で知り合った男から得た情報を元に、彼が狙ったのは、強固な警備態勢で知られるエル・パソの銀行であった。
2人の賞金稼ぎは別々の情報と推測を元にインディオの標的を割り出し、自然の成り行きで対峙する。モーティマー大佐は特製の銃を用いた正確な射撃でモンコを圧倒しながら、だがモンコに対して手を組むことを申し出た。2人の人間が同時に1人の賞金首を狙えば、必然的に自分たちも殺し合わねばならない。ならば、一時的に結託すべきではないか。
稼ぎの取り分について若干のしこりを残しながらも、モンコはこの提案を受け入れた。モーティマー大佐の計画に従い、モンコはインディオに接触し、内側から情報を探ろうとするが、しかしインディオという男も、黙って狩られるほど容易い相手ではなかった……
[感想]
『荒野の用心棒』に続く、セルジオ・レオーネ監督とクリント・イーストウッド主演のコンビによるマカロニ・ウェスタンの2作目である。
物語的に繋がりはないが、恐らく敢えて意識してだろう、様々な要素が繋がっている。イーストウッドが演じる主人公には今回“モンコ”という名前が与えられたが、ポンチョや早撃ちの技倆、腹の底を窺わせない振る舞いなど、前作の名無しのガンマンの人物像を明白に踏襲している。役柄こそ一緒でないものの、印象的な端役を演じた役者たちが再登場して再びコミカルな彩りを添えているし、クライマックスの舞台となる村は明らかに『荒野の用心棒』と同じ場所をロケに用いている。あの作品を喜んでくれた観客の笑みを誘う、こういう趣向は快い。
内容的には、前作のムードを踏襲しつつも、しかしより正統的な西部劇になった印象だ。前作はもとが策略の面白さで引っ張り、重要な何箇所かでアクションの見せ場を用意する、という形で魅せていたが、本篇は腹の探り合いはあるものの策略はシンプルに展開しており、如何にも西部劇らしい対決の場面を多く組み込むことで観るものを牽引する。中心となるモンコ、モーティマー大佐、そしてインディオ、いずれも策略家と見せながら、銀行襲撃の部分を除けばかなり行き当たりばったりなので、前作のように謎の行動が意外な結果に繋がっていく妙味を望むと少々物足りないが、また別の面白さが光っている。
しかしこの作品、主演はクリント・イーストウッドと言うものの、実質の主役はリー・ヴァン・クリーフ演じるモーティマー大佐と言っていい。最初に現れるのがそもそもモーティマー大佐であるし、以降の物語でいちばん策略が光っているのも彼、そして物語の背後に隠されたドラマの中心人物も、クライマックスの決闘に臨むのも彼なのだから。前作のように、イーストウッドが作品を支配しきっていない点には、さすがに不満を抱くかも知れない。
だがそれでも、イーストウッド演じるモンコが物語の上で重要な役回りであることは間違いないし、そうして一歩退いた位置にいながら、決してモーティマー大佐にひけを取らない存在感を示しているのはさすがだ。この頃はまだようやく売れ始めたばかりのはずだが、既に大物の貫禄を漂わせている。
西部劇、と言われて多くの人がいちばん最初に思い浮かべるはずの、あの印象的な口笛による旋律も含め、マカロニ・ウェスタンとは言うものの、まさに西部劇の完成型と呼ぶに相応しい作品に仕上がっている。翻って、わざわざイタリアまで渡らなければこういう作品が生み出せなかったことに対する、当時のイーストウッドの鬱屈も微かに窺える。
関連作品:
『荒野の用心棒』
『許されざる者』
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