『REC/レック4 ワールドエンド』


原題:“[REC]4 : Apocalypse” / 監督:ジャウマ・バラゲロ / 脚本:ジャウマ・バラゲロ、マヌ・ディエス / 製作:フリオ・フェルナンデス / 撮影監督:パブロ・ロッソ / 編集:ダビ・ガラルド / 音楽:アルナウ・バカレル / 出演:マヌエラ・ベラスコ、パコ・マンサネド、エクトル・コロメ、イスマエル・フリッチ、マリアーノ・ヴェナンシオ、マリア・アルフォンサ・ロッソ、クリスペロ・チャベザス / 配給:Broadmedia Studios / 映像ソフト発売元:Happinet
2014年スペイン作品 / 上映時間:1時間35分 / 日本語字幕:岡田壯平 / R15+
2015年1月31日日本公開
2016年4月2日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon|Blu-ray Disc:amazon]
公式サイト : http://www.rec4.jp/ ※閉鎖済
ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2015/01/31)


[粗筋]
 感染者の巣窟となったアパートで辛うじて生き残ったTVレポーターのアンヘラ(マニュエラ・ヴェラスコ)は特殊部隊によって救出され――目醒めたときには、病室で拘束されていた。
 恐怖を覚え逃亡を図ったアンヘラは、途中で彼女を救出した特殊部隊のグスマン(パコ・マンサネド)と再会するが、辛うじて飛び出した先は、甲板――彼女たちは何故か、船の中に隔離されていた。
 船長のオルテガ(マリアーノ・ヴェナンシオ)によれば、この船はアパートに端を発して、結婚式場でもパニックを引き起こした感染症の研究を行うため、医師のリカルテ(エクトル・コロメ)を中心とする医療チームが契約したものだという。既にアンヘラ、グスマン、そしてグスマンの相棒であるルーカス(クリスペロ・チャベザス)は陰性が確認されているが、未だ研究は終わっておらず、帰港することは出来ない、という。
 感染症の治療薬は必要だが、何故わざわざ海の上で行うのか? 不信感が拭えないグスマンとルーカスは、船内で電子機器のエンジニアを務めているニック(イスマエル・フリッチ)の協力を得て、医療チームや、彼らが警護のために引き連れてきた軍隊の動向を窺う。
 リカルテたちは既に治療薬の試薬を完成させていた。いよいよ治験、という段階に入ったその日、しかし最悪の事態が起きてしまう――


ユナイテッド・シネマ豊洲、スクリーン5入口脇に掲示されたポスター。
ユナイテッド・シネマ豊洲、スクリーン5入口脇に掲示されたポスター。


[感想]
 劇中で存在するカメラの映像によって綴る“P.O.V.”スタイルがホラー映画のジャンルで持てはやされるようになって久しいが、そのなかで代表格として挙げられるべきはこのシリーズだろう。
 前作で全篇P.O.V.に徹することを止めることで、ホラー映画ならではのアクロバティックな趣向を採り入れ新たな魅力を示したが、本篇では完全にP.O.V.のスタイルから離れている。だが、やはり“REC”というタイトル自体に意味を持たせたかったのだろう、しっかりと劇中に存在するカメラでの映像を活かした趣向も採り入れている。
 本篇で重要な意味を持つ劇中のカメラのひとつは、監視カメラだ。極秘の研究を実施している船の中、という設定なので、当たり前のように重要なポイントに監視カメラが設置されている。登場人物がリアルタイムでは把握出来ない他の人物の動き、気配を、監視カメラの映像を駆使することで織り込み、謎やサスペンスの醸成に活かしている。
 もうひとつは、第1作で活躍したカメラの映像だ。第1作で酷使され、機体にダメージを被っているが、映像の存在にこだわるアンヘラはエンジニアのニックに修復を依頼する。これが劇中で繰り返し、事態を動かすトリガーとして機能しているのだからそつがない。
 いずれも映画の見せ方としてはさほど珍しいものではなくなっているが、本篇の場合、その活かし方が秀でている。第1作にしても、ゾンビ映画の端緒を局所的に抽出しているだけに見せかけて、別種のホラー映画の要素も持ち込み混成種めいた面白さを醸しだしていたが、本篇でもこうした洗練された趣向、馴染み深いアイディアを融合し、ひねりと衝撃を作り出している。
 一方で、前作のクライマックスにも似た、残虐にして痛快な見せ場も欠かしていない。終盤、様々な制約によりまともな武器も用意できないなかにおいて、最凶で最高な武器を栗出してくるあたり、このスタッフはやはりセンスがある、と思う。
 P.O.V.に拘泥することなく、シチュエーションの妙味を留めながら新たな趣向を考案し異なるインパクトを演出し続けた意欲は間違いなく評価に値するし、その発想のセンスも認められて然るべきだろう。
 その気になればまだまだ続けられそうな結末だが、少なくとも一区切りとしては充分なカタルシスも用意されている。期待を背負ったシリーズの完結篇として、いい形で締めくくっていると思う――誰しも納得するものではないにせよ。


関連作品:
REC/レック』/『REC/レック2』/『REC/レック3 ジェネシス』/『REC:レック/ザ・クアランティン
ダークネス』/『機械じかけの小児病棟』/『スリーピング タイト 白肌の美女の異常な夜
ダイアリー・オブ・ザ・デッド』/『パラノーマル・アクティビティ』/『POV ~呪われたフィルム~』/『スピーク』/『グレイヴ・エンカウンターズ』/『ダイナソー・プロジェクト』/『クロニクル』/『アンフレンデッド』/『ある優しき殺人者の記録』/『fuji_jukai.mov』/『ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!

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