丸の内ピカデリー、Dolby Cinemaスクリーン入口に投影されたイメージ映像……たぶん映画本篇とは関係ない。
原題:“Apocalypse Now : Final Cut” / 原作:ジョセフ・コンラッド『闇の奥』 / 監督&製作:フランシス・フォード・コッポラ / 脚本:ジョン・ミリアス、フランシス・フォード・コッポラ、マイケル・ハー / 撮影監督:ヴィットリオ・ストラーロ / プロダクション・デザイナー:ディーン・タヴォラリス / 美術監督:アンジェロ・P・グラハム / 編集:リチャード・マークス、リサ・ブラックマン、ジェラルド・B・グリーンバーグ、ウォルター・マーチ / キャスティング:テリー・リーブリング、ヴィク・ラモンズ / 音楽:カーマイン・コッポラ、フランシス・フォード・コッポラ / 出演:マーロン・ブランド、ロバート・デュヴァル、マーティン・シーン、フレデリック・フォレスト、サム・ボトムズ、ローレンス・フィッシュバーン、アルバート・ホール、ハリソン・フォード、G・D・スプラドリン、デニス・ホッパー、クリスチャン・マルカン、オーロール・クレマン、ジェリー・ジーズマー、トム・メイソン、シンシア・ウッド、コリーン・キャンプ、ジェリー・ロス、ハーブ・ライス、ロン・マックイーン、スコット・グレン / 配給&映像ソフト発売元:KADOKAWA
2019年アメリカ作品(オリジナル1979年) / 上映時間:3時間2分 / 日本語字幕:戸田奈津子 / PG12
2020年2月28日日本公開
2020年6月5日映像ソフト日本盤発売 [Blu-ray Disc:amazon|Amazon Prime Video]
公式サイト : http://cinemakadokawa.jp/anfc/
丸の内ピカデリーにて初見(2020/06/30)
[粗筋]
1969年、ウィラード大尉(マーティン・シーン)はベトナムのサイゴンにあるホテルで燻っていた。いちどはアメリカに帰国したが、妻に離婚を切り出され、既に居場所がないことを実感し、ジャングルのなかにある戦場に戻ることを望んだが、待機を命じられたままひたすらに時間を浪費する毎日だった。
ようやく基地に呼び出され、与えられた指令は、驚くべきものだった。最前線の更に奥、カンボジアにまで潜入したカーツ大佐(マーロン・ブランド)の暗殺である。
カーツ大佐はかつて極めて優秀で高潔な軍人だったが、戦況が混沌とするうちに正気を失い、ベトナム人のスパイ4名を二重スパイと断じて処刑を行った。軍部はこの一件でカーツ大佐を殺人罪で告発したが、当人は現地人たちの崇拝を集め、ジャングルの奥に籠もっている。そこで、これまでも特殊任務に携わり、着実に果たしてきたウィラード大尉に軍部は目をつけた。
ウィラード大尉は“チーフ”ことジョージ・フィリップス(アルバート・ホール)が指揮する河川哨戒艇に同乗し、ジャングルの深部へと川を遡行した。
最初に訪ねたのは第一騎兵師団のビル・キルゴア中佐(ロバート・デュヴァル)である。
[感想]
まずお断りしておくと、私は劇場公開版は観ているが、特別完全版は観ていない。しかも公開版にしても、午前十時の映画祭にていちど鑑賞したきりだ。それ故、衝撃や細かな名場面は記憶に残っていても、細部やそれぞれのシーンの尺などはしっかり記憶していない。だから、監督が“ファイナル”と銘打つカットを入れる前の特別公開版はおろか、30分は嵩増ししているはずの劇場公開版とも、的確に比較することは出来ない。
ただ、細かに覚えていないからこそ断言できることもある――追加したことで、間延びしたりだれたりすることを危惧するひともいるだろうが、それは間違いなく杞憂だ。この尺であっても本篇は隙がなく、絶え間なく衝撃がもたらされる。
むしろ、このファイナル・カットを観ると、はじめからこの尺だったのでは、と思ってしまうほどだ。場面ごとのインパクトは強烈で、それが幾つも積み重なっていくことで、ウィラード大尉が味わう恐怖や絶望にじりじりと共鳴させられる。
劇場公開版を観たときも感じたが、この作品を観る限り、彼らがいったい何の為に、何を目指して戦っているのかがまったく解らない。ウィラード大尉が最初に接触するキルゴア中佐はサーフィンを楽しむためにベトコンの制圧を狙っているように映るし、川を遡行しているなかで起きる銃撃戦も、互いを敵と認識しているのか解らない。果てには、ずっと指揮官を欠いたまま、それぞれの持ち場で勝手に応酬を繰り広げている。通常ならば、指揮官がそれぞれに作戦目標を掲げ、達成したところでその戦線は閉じるはずだが、この物語の戦いに終わりは見えない。そして、そういった現実の先に、カーツ大佐が沈んだ深い闇がある。“地獄”というフレーズは劇中にも出てくるが、これを乗せた邦題は実にしっくり来る。
今回のヴァージョンは日本公開に際して、ハイクオリティのスクリーンを中心に上映が展開された。私が鑑賞したのは、お家芸の音響の凄さに加え、黒の表現に優れたDolby Cinemaであったが、確かに本篇はいい設備で観るべきだろう。映画史に残る名場面である“ワルキューレの騎行”のくだりは、音響設備が優れた劇場ならまさに戦場ならではの振動までが(たとえ4D対応劇場でなくとも)体感できるし、闇が随所にわだかまる本篇の映像は、それだけの色彩表現力があるスクリーンでなければ充分には味わえまい。
既に4k ULTRA HDの映像ソフトが日本でもリリースされている本篇だが、もし近隣の劇場でかかっているなら、まずそちらで鑑賞した方がいい。自宅でそのポテンシャルを堪能するには、設備投資がそうとう必要になる。
関連作品:
『地獄の黙示録 劇場公開版<デジタルリマスター>』
『ゴッドファーザー』/『ゴッドファーザー PART II』/『Virginia/ヴァージニア』
『アメイジング・スパイダーマン2』/『スコア』/『アウトロー(2012)』/『シービスケット』/『運び屋』/『ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記』/『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』/『エレジー』/『ガーゴイル』/『ザ・エージェント』/『父親たちの星条旗』/『スペンサー・コンフィデンシャル』/『ボーン・レガシー』
『タクシードライバー』/『ディア・ハンター』/『M★A★S★H マッシュ』/『プラトーン』/『キプールの記憶』/『ブラックホーク・ダウン』/『戦争のはじめかた』/『ハート・ロッカー』/『グリーン・ゾーン』/『戦火の馬』/『30年後の同窓会』/『1917 命をかけた伝令』
『未知との遭遇 ファイナル・カット版』/『アマデウス ディレクターズ・カット版』/『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ<ディレクターズ・カット>』/『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』
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