原題:“Dead & Buried” / 監督:ゲイリー・A・シャーマン / 原案:ジェフ・ミラー、アレックス・スターン / 脚本:ロナルド・シャセット、ダン・オバノン / 製作:ロナルド・シャセット、ロバート・フェントレス / 製作総指揮:リチャード・R・セント・ジョンズ / 撮影監督:スティーヴ・ポスター / 美術:ビル・サンデル、ジョー・オーベル / 編集:アラン・バルサム / 特殊メイク:スタン・ウィンストン / 音楽:ジョー・レンゼッティ / 出演:ジェームズ・ファレンティノ、メロディ・アンダーソン、ジャック・アルバートソン、デニス・レッドフィールド、ナンシー・ロック・ハウザー、リサ・ブロント、クリストファー・オールポート、ロバート・イングランド、マイケル・パタキ / 配給:ヘラルド / 映像ソフト発売元:Victor Entertainment ※鑑賞したのはPioneer LDCが2002年にリリースしたもの
1981年アメリカ作品 / 上映時間:1時間34分 / 日本語字幕:?
1981年6月日本公開
2009年11月27日DVD日本最新盤発売 [bk1/amazon]
DVDにて初見(2009/12/02)
[粗筋]
アメリカの田舎町ポッターズブラフで、奇怪な事件が発生した。単独事故かと思われた現場にて、自動車の中から救出された男が、どうやら事故以前に焼かれたらしいことが判明したのである。明くる日にはボート置き場で、旅行者と思しき男が惨殺屍体となって発見される。
着任間もない保安官のダン(ジェームズ・ファレンティノ)はそれらの事件が何らかの繋がりを持っていると推測、最初に発見された男の身許を探り出そうとするが、彼が泊まっていたホテルに残された持ち物には、名前や出身地の手懸かりが一切見いだせなかった。だが、男を泊めていた民間旅館の経営者であるベン(メイコン・マッカルマン)は意外な証言をする。ダンの新妻ジャネット(メロディ・アンダーソン)が、事故に遭った男と接触していた、というのである。
ジャネットは、勤める学校にて、男が販売する写真器材を購入しただけだと弁解した。では、学校での出来事が事件に関係しているのか? もはや残された手懸かりは、ジェームズ・ルモイン(クリストファー・オールポート)という名前らしいと判明した、最初の事件による全身火傷で入院中の男だけだが、ダンが担当医師に協力を仰いでいるあいだに、何者かによって殺害されてしまう……
……ダンは未だ知らない。善良にしか見えないポッターズブラフの住人たちが、日々訪れる旅人や闖入者たちを殺害、その光景をルモインより購入した機材で撮影している、ということを。
[感想]
この邦題についてはかなり批判を耳にする。製作年が近いこともあって、まるでジョージ・A・ロメロ監督『ゾンビ』の二番煎じを狙ったかのように見受けられる――実際、あの作品のヒットと内容に影響されて製作されたものには違いないのだろうが、パロディや亜流のように感じさせるこの邦題のために、かなり損をしているように思われる。それが未だに、発売元を変えても採用されているのは、響きのインパクトが強く、既に印象が固定してしまっているせいだろうか。
だがこの邦題のいちばんの問題点は、本来なるべくギリギリまで伏せておくべき主題を、観客に対して予め明かしてしまっていることだ。
もはや手遅れなのではっきり言ってしまうが、本篇はれっきとしたゾンビ物である。しかし物語の中では中盤あたりまで、採り上げているのがゾンビであることをはっきりと示していない。異様な雰囲気を漂わせつつ、なかなかその正体が判然としない――ポッターズブラフの多くの住民が何かをしでかしていることは随所で直接描かれるものの、その意図、目的は明示せず、主人公である保安官にじわじわとその脅威が迫っているのを観客に感じさせることで恐怖感、サスペンスを醸成する、という作り方だ。
この表現の妙味を充分に味わうためには、本篇がゾンビ物であるということ自体を知らない、先入観が最小限の状態であることがいちばん望ましい。それをタイトルの時点で半ば明かしてしまっていることを思うと、やはりこの邦題は劣悪な部類に属する、と言わざるを得ない。
しかしそれでも本篇の評価が下がらないのは、この時期陸続と製作されたゾンビ物のなかにあって、きっかけとなったロメロ版『ゾンビ』から僅か2年の段階で、ロメロ流の恐怖、テーマ性とは異なったアプローチでゾンビを採り上げているが故だろう。題材がゾンビであることをなかなか直接的に示さないこともそうだが、終盤における感情を揺さぶるシークエンスと、物語の最終的な決着が、ゾンビの設定をうまく活かして、ドラマとして昇華させている点で、かなり出色である。
無論、現代の目から見ると色々とつたない部分も多くある。あまりにクラシカルな演出もそうだが、前述のような本篇の価値を高めている要素について、伏線をあまり丁寧に張り巡らせていないことが引っ掛かる。序盤の出来事と終盤での真相にところどころ整合性を欠いているし、特に衝撃的な結末については、もっと伏線を張っておけば、より効果的だったろうにと惜しまれる。
だが、ゾンビを虚仮威しや、常識を逸脱した恐怖を醸成するものとしてではなく、物語としての起伏や意外性に用い、新たな可能性を示唆したという意味で、高く評価するべき1本だろう。ホラー映画という括りの中ではもはや珍しくなく、処理も未熟ながら、ゾンビ物としては未だに決して多くない種類の驚きを演出している点においても、貴重な作品と言っていいと思う。
関連作品:
『サンゲリア』
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