一本目は『貧乏神と福の神』。働けど働けど暮らしの楽にならない男の家には実は貧乏神が住み着いていた。もう諦めかかっていた男だが、ひょんなことから嫁がやって来て、男は働く意欲を取り戻していく。次第に活気を取り戻していく男の様子に、だんだん貧乏神は居たたまれなくなってしまい……という話。やたらと人の良さそうな貧乏神に、俗物を絵に描いたような福の神の姿がなんだかおかしい。どうして男と嫁が貧乏神のほうに肩入れしたのかについては語らず、けれどそれでもちゃんと幸せになった、ということで、幸せが必ずしも富とペアになっているわけではない、と教えるための話なのでしょう。去り際の福の神の、キツネにつままれたような態度がいい。
二本目は『きつねがわらった』。漫画調だった一本目から変わって、味わいのある水彩画風の映像で展開します。おじいさんがまんじゅうを作り、孫娘のおさとが甲斐甲斐しく手伝っているお茶屋に、妙な時分に武者修行中の侍がやって来る。だが、実はその侍は化けたキツネであって……。こちらは教訓も何もなく、けれど不思議と心温まる民話。ただ笑って去っていくだけなのに、なんて快いのでしょう。怪異を当たり前に受け止めている世界観の寛容さが素敵です。
コメント
2本目、埼玉県となぜかご縁が深い池原さんですね。あの画風が好きなら、この辺も楽しめるかと思います。
tp://www.jade.dti.ne.jp/~miyoshir/sakuhinsyuu/ikehara.html
tp://www.hanajyukai.co.jp/folk/gashu-pr.htm
秩父にある「ちちぶ巡礼と民話のやかた」には池原さんの絵と民話が多数展示されており、なかなかに楽しいですよ。
ときどき某所のお姉さんが民話ネタをやっているのも、元々はあれの影響らしい。