星を託したひとり、安藤がギリギリで開司を裏切った。星を使って開司を助ける、という約束を反故にし、自分たちの借金を解消するために彼を切り捨てようというのだ――ガラスの向こうからその様子を見ていた開司は絶望に咆哮する。そんな彼を嘲笑う、瀬戸際の男がひとり。しかし開司はこの逆境で、最後の活路を見出していた……
ちょうどGyaOで配信されている『闘牌伝説アカギ』を並行して鑑賞しているから余計にそう感じるのですけれど、どちらが好みかと言えば私は『アカギ』なのです。何故なら、あちらはハードボイルドであり、ピカレスクであるから。はじめから圧倒的な実力を持つアカギの言動というのはそのままハードボイルドに通じる美学があり、本質的に悪党である以上、ピカレスクになる。その複雑な腹の読み合いが見所となっている反面、けれど基本的にアカギという絶対的な人物があって成り立っているわけです。本格ミステリ信奉者であると同時に、実はチャンドラーとか原りょうに愛着のある私には魅力的であるのも当然と言えましょう。
他方、このカイジというのは、間違いなく頭は切れ才能もあるわけですが、完璧ではない。どちらかというと不完全であるからこそ、駆け引きに緊張感と逆転の醍醐味が強まっている。ルールが麻雀よりもシンプル、しかし独自であるために唯一無二の面白さが演出できている本編ですが、その行き方はどちらかというとサスペンスに近い。伏線は謎解き以上に、“驚き”に奉仕しているわけです。
実際、この“限定ジャンケン”完結編などはその傾向が強い。確かにどうにか起死回生に成功したわけですが、序盤から張られていた伏線ではなく、開司の意志がそれを発見した、というカタルシスのために、かなりギリギリで提示されている。この動きを“謎解き”と言うのはちょっと違う。
――まあいずれにしても、最後まで血が沸きっぱなしで、充分楽しませていただいたのですけれども。なんか『アカギ』のあの人っぽい姿が過ぎったところで、新章に続く。引き続き楽しみです。
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