原題:“The Top Gun” / 監督:トニー・スコット / 脚本:ジム・キャッシュ、ジャック・エップス・Jr. / 製作:ジェリー・ブラッカイマー、ドン・シンプソン / 製作総指揮:ビル・バダラート / 撮影監督:ジェフリー・キンボール / プロダクション・デザイナー:ジョン・F・デキュアー・Jr. / 編集:クリス・レベンソン、ビル・ウィーバー / キャスティング:マージェリー・シンプキン / 音楽:ハロルド・フォルターメイヤー / 出演:トム・クルーズ、ケリー・マクギリス、ヴァル・キルマー、アンソニー・エドワーズ、トム・スケリット、マイケル・アイアンサイド、ジョン・ストックウェル、バリー・タブ、リック・ロッソヴィック、ティム・ロビンス、クラレンス・ギルヤード・Jr.、ウィップ・ハブリー、ジェームズ・トーカン、メグ・ライアン / 配給:Paramount / UIP / 映像ソフト発売元:Paramount Pictures
1986年アメリカ作品 / 上映時間:1時間50分 / 日本語字幕:戸田奈津子
1986年12月6日日本公開
午前十時の映画祭9(2018/04/13~2019/03/28開催)上映作品
2018年3月20日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon|Blu-ray Disc:amazon|3D & 2D Blu-ray セット:amazon]
TOHOシネマズ日本橋にて初見(2018/9/18)
[粗筋]
ミサイル戦が主流となり、廃れつつあった空戦の技術を継承させるため、各地から優れたパイロットを集め、最高レベルの技術を教育するエリート校空戦訓練学校が存在する。そのエリートのなかでも、5週間のテストで最高の成績を収めたモノにだけ、“トップガン”の称号が与えられる。
インド洋で艦上戦闘機F-14のパイロットを務めていたマーヴェリック(トム・クルーズ)は、才能と直感で優れた操縦を行うが、危険行為が多く、成績ではクーガー(ジョン・ストックウェル)の後塵を拝していた。だが、間もなく訓練学校への推薦者が決定するという時期、マーヴェリックとクーガーに、突如出没した正体不明のMIG-28機の追跡が命じられる。
クーガーがロックオンされた恐怖によって反応出来なくなった一方、マーヴェリックは果敢にMIG機に接近、挑発的な行為に及び、MIG機を撤退させる。更にマーヴェリックは、恐怖のあまり着陸準備も出来ないクーガーを誘導し、無事に帰還させることにも成功した。
この出動で自信を喪失したクーガーは任務を事態、その結果、マーヴェリックと相棒のグース(アンソニー・エドワーズ)が繰り上げで訓練学校へ推薦されることになった。
訓練学校にはアイスマン(ヴァル・キルマー)をはじめ、多くのライヴァルたちがいたが、それでもマーヴェリックの自信は揺るがない。初日から、ルールを犯しつつも、教官の操縦する機をギリギリまで追いつめる健闘を見せる。危険行為と協調性の乏しさを攻められながら、それでもマーヴェリックは不遜な態度を崩さずにいたが、やがて彼の前に、重い試練が立ちはだかるのだった……。
[感想]
近年はさすがにイメージが変わってきた感があるが、それほど昔の話ではなく、トム・クルーズの代表作は本篇、というイメージが強かったように思う。それくらい、世間に与えたインパクトは大きかった。
実のところ、ストーリーの骨格自体はいわゆる青春ドラマの類型に過ぎないし、主演のトム・クルーズもそこまで名演だった、というわけでもない。キャラクターの感情の揺れは豊かだし、それをしっかりと表現する技倆は確かに感じられるが、そのスペックを物語のなかで充分に引きだしている、とは言いがたい。トム演じるマーヴェリックがやたらと目立つ一方で、せっかくドラマに寄与する他のキャラクターたちがあまり掘り下げられていないので、話が浅く思えてしまっている。
そのぶん、本篇を特色づけているのは、その迫力に満ちた空中戦描写だ。アメリカ空軍の全面的協力を得て、実機で撮影できる部分は可能な限り本物を撮っており、観ていると空中に投げ出されそうなほどの迫力がある。爆破シーンなどはさすがに模型を用いているが、細かなカット割りによって違和感をまったく与えることがない。カット割りを素速く行っているのは、決して作り手が要求するとおりのプランでは飛べないはずの戦闘機の映像を、想定に合わせて組み替えるために必要不可欠な手法だった、とも考えられるが、それが作品の小気味良いスピード感をも生み出している。
もうひとつ忘れてはならないのは、サウンドトラックの驚異的な存在感だ。冒頭から随所で用いられる様々なポップミュージックの数々が、作品のクールでファッショナブルなイメージを強固なものにしている。本篇のサウンドトラックそれ自体も記録的なセールスを遂げ、公開から30年以上経たいまでも耳にする機会はままある。それらが小型飛行機の離陸するシーンや、劇中のロマンティックなラブシーンを彷彿とさせる場面で用いられているのだから、未だに作品のイメージの拡散、継承を担っている、と言えるわけだ。作品のムードと完璧に合致しているからこそであり、本篇における音楽の貢献の大きさを物語っている、と言えよう。
物語のクオリティやその奥行き、という点で不満はある。だが、それをものともしないほどに、本篇は作品世界が完成しており、唯一無二の魅力に富んでいる。劇中で描かれる風俗描写が、さすがに30年も経つと古さを帯びてきたのは否めないが、それでも作品全体に清新な力強さが溢れ、いま観てもなお観るものを惹きつける。時代を揺さぶったパワーを未だに感じさせる作品である。
関連作品:
『ザ・ファン』/『スパイ・ゲーム』/『マイ・ボディガード』/『サブウェイ123 激突』/『アンストッパブル』
『レインマン』/『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』/『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』/『刑事ジョン・ブック/目撃者』/『Virginia/ヴァージニア』/『フォーガットン』/『M★A★S★H マッシュ』/『王様のためのホログラム』/『マシニスト』/『ストリート・オブ・ファイヤー』/『ショーシャンクの空に』/『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』/『イン・ザ・カット』
『ファイヤーフォックス』/『エネミー・ライン』/『ステルス』/『アビエイター』/『レッド・バロン』
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