というわけで今年もやって来ました島根県松江市。今回も怪談メインでの訪問です。
ギリギリだとチケットの確保が難しいので、大まかな日程が出た時点で宿や交通手段はなるべく確定するようにしていたのですが……今回はちょっと無理が過ぎた。ふだんは仮眠を取っている時間帯をフライトに当てたのですが、これはちょっと失敗だったかも。
母が久しぶりに羽田を見たい、というので空港まで同行し、昼食を一緒に摂ったあとで別れ、私は搭乗口へ。機材の搬入が手間取ったとかで15分遅れの離陸でしたが、あとはこれといったトラブルもなかった。
なかったんだったら軽く眠れば良かったのです。しかしなんとなく外を眺めたり、きのう買ったばかりの『ふたりのトトロ』をちまちま読み進めたりしていた。途中、少しうとうとしていたのですが……素直に眠っておけば良かったのだ。出雲空港に到着したあたりから眠気がひどくて、だんだんしんどくなってきた。
それに加え、バス移動の途中から雨がひどくなり、松江しんじ湖温泉駅に着いた頃には豪雨になっていた……大きい傘をわざわざ持ってきたのですが、それがほとんど役に立たないレベル。ズボンの裾がすっかり重くなり、リュックやスーツケースにも少し水が浸透しているのでした……ある程度は警戒して、大事なものは水没しないように多少工夫はしてましたが、それでも全体に湿っぽくなってしまった。
そんな風に格闘しつつひと息ついて、それからふたたび出立。いよいよ松江怪喜宴5……の前に早めの夕食です。昨年も同じタイミングで訪れた麪屋ひばりというお店がやたらと美味しかったので、今年も訪問するのを楽しみにしてました。数日前からちょっと風邪気味で、ラーメンは胃にもたれるか、という危惧もあったんですが、そんな杞憂をブッ飛ばすほどに美味しい。ここはあごだしを用いた、やたらと風味が強いのにくどさがない絶妙のバランスを保ったスープが魅力的なのです。普段、細麺はあんまり好まない私なのですが、このスープには合っている。1年振りでもやっぱり美味しかった。また来年も立ち寄ります、きっと。
そしていよいよ松江怪喜宴5、その第1弾イベント、第6回松江怪談談義です。“松江怪喜宴”という括りに先行してスタートしているため、カウントはひとつ多い。
例年通り、小泉八雲から数えて4代目、松江にて民俗学を研究している小泉凡氏と、怪異蒐集家であり松江観光大使も務める木原浩勝氏のふたり語りです。
今年のテーマは、“採話”と“再話”。実話怪談はまずその記録や記憶を採集することから始まる一方で、必ずしももともとのエピソードそのままに記録されるわけではなく、“語り”というかたちで再構成される。そうしてオリジナルとは微妙に変質したものが、語り手の思惑を超えて浸透していった。その代表格が、八雲自身の認識や体験をベースに変質していった『雪女』や『むじな』であり、その舞台となった土地では半ば偶像化されている“生まれ変わり”の物語『勝五郎の話』である、と。
いったん休憩を挟んだあとは、“怪談談義”らしく少し怪談寄りのエピソードがおふたりの口から語られました。ぶっちゃけこのあたりは、おふたりの著書を読み、木原氏のイベントに年がら年中出席している私にとっては聴き覚えのある話ばかりだったんですが、ここで相手の話に触発されるかたちで語られると、底に流れる因果のようなものを感じずにはいられません。
まだまだ話し足りない雰囲気を醸すおふたりでしたが、会場の方からせっつかれるかたちでお開き。そのあとはこちらも毎回恒例のサイン会へ。当然私は、きのう購入した『ふたりのトトロ』に木原氏のサインを頂戴し、小泉氏には3年前に発売された『松江怪談』という本をその場で購入してサインをお願いしました。記念は残しておきたいですしね。
すべて終わって、夜の松江の町を歩いて宿まで戻る……この時期、松江では“水燈路”というイベントをやっているはずなんですが、これだけ雨が降っているとさすがに灯籠は出せないらしい。既に眠気で朦朧としているので、うっかり堀に落ちてしまわないよう、注意して歩くのでした……いや、このあたり、柵がない箇所も多いので、ほんとーに落ちそうなんですよ。
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