プログラム切替直後の月曜日は午前十時の映画祭7を観に行く日……今週はその自分ルールに従うことが出来ました。このところずっと天気がぐずついていて、電車での移動が続いていましたが、曇り気味ながら傘は要らない様子だったので、自転車にてお出かけ。
お馴染みのTOHOシネマズ日本橋にて鑑賞した今コマの作品は、黒澤明監督の代表作のひとつ、役人として無為に過ごしてきた男が、余命を知ったことで初めて人生に向き合う姿を、社会諷刺も籠めつつおかしみと哀愁に満ちた筆致で描き出した『生きる』(東宝初公開時配給)。黒澤映画はなるべく映画館で出会う、という自分ルールを設定した結果、なかなか接する機会がなく、これが念願の初鑑賞です。
いやあ、確かにこれは凄かった。ナレーションを合わせて説明される主人公の退嬰的な生き様から、死期を悟ったあとの静かながら情感豊かな描写。死を悟ったことで即善行に走るわけではない、というリアリティもさることながら、もの悲しくもしばしば笑いを誘うほどに滑稽であるのも生々しい。そして、最も象徴的なくだりを、主人公の目線ではなく、その死後の会話と回想で描写することにより、客観的な重量を加える巧みさ。最大の見所はあの有名すぎるブランコのシーンなのですが、あの場面に感動してしまうのは、蓄積が緻密であるからです。
葬儀のシーンの展開が定番から逸脱しているうえに効果的であることとか、構成・演出の凄味もさりながら、やはり驚異的なのは、台詞は少なく、喋ってもたどたどしい、という人物像なのに、そこに表情の演技で説得力をもたらした志村喬です。観終わってしばらく、あの表情が脳裏から離れません。
世間的に名シーンと呼ばれるものも、実はその一部分だけ切り取ってはあまり意味がない。本篇に限ったことではありませんが、本篇は特に顕著でした。全篇通して観たら、あのシーンが響く響く。映像ソフトの国内盤はマスターの状態が悪いようで評判がいまひとつなんですが、今回の上映にはちゃんとリマスターのうえ4Kにて上映しているようで、これは映画館で初めて接して正解でした。ほんとーにいい作品。
本日はあんまり食欲がなかったため、付近での外食は控え、ちょこっとだけお買い物をしてから、自宅にあったカップ用のチキンラーメンで済ませました。このあいだコンビニで3食セットのを見つけて買ってきてあったのですが、食欲はないけど少しくらいは腹に入れないと、というときには実にちょうどいい。
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