自ら死ぬことを決意した男・喜多善男。11日後に死ぬつもりで、最後に今までやりたくても出来なかったことに挑もうと考える。雨のタクシー乗り場で無理矢理先頭に割り込んだ男に注意したところ、どういうわけかその男、矢代平太に興味を持たれてしまい、喜多は彼の経営するキャバクラに連れて行かれる。問われるまま喜多は、死を選ぶ理由を話すのだった。
なんとなく設定が気になったのと、当代屈指の名バイプレイヤー・小日向文世が初めて連続ドラマで主演する、というのに惹かれて鑑賞するつもりになったのですが、原作が島田雅彦『自由死刑』、脚本が飯田譲治、演出には『帰ってきた時効警察』の麻生学に『僕の歩く道』シリーズの三宅喜重、音楽はジャズ・ピアニストの小曽根真、と妙に私の嗜好にマッチしそうなスタッフばっかりで吃驚。脇も松田龍平に栗山千明、小西真奈美と渋めでわたし好みなので、とりあえずこの面子が1クール拝めるというだけでもめっけもんですよ。
そして語り口もなかなかいい。回想を軸にしたプロローグから、先読みのしにくい本筋。のっけから小日向・松田・栗山と雰囲気のある役者が絡んで、観る側を逸らさない。『伝染歌』のときも思いましたが、松田龍平、実に味のある俳優になったなー。
過去について小出しにしながら、途中から喜多の別れた妻を巡る不穏な状況を織り交ぜ、しかもその端々に喜多の周囲をうろついていた人物を絡めていく。細かな出来事の選択や描き方も素敵です。こと、昔いちどだけ温かな交流を持ったアイドルと会いに行った店では、音楽担当の小曽根真自身がピアノを弾いており、どこかで聴いた歌詞の曲をジャズ・アレンジで演奏している。何かと思えば、ギルバート・オサリバンの名曲『Alone Again』。いやもう、痺れるったらありません。
本当にこれはいい感じ。なんか久々にテレビドラマで、私のストライクど真ん中の作品が出て来た気がします。さあ毎週火曜日が楽しみ……でもないか。さあ御覧、一日で俺はいったいいくつ感想をアップしてるんだ?!
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