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シングルズ全集(4)

 メッセージ・ソングが少なくなく、例年“ヒロシマ”の日に“ナガサキ”でチャリティ・コンサートを開催しているさだまさしは、しかし実はあの悲劇について直接歌うことが意外と少ない。かなり直球に歌った曲にしても、タイトルは『広島の空』。郷里を愛しているからこそ、悲劇のみで語りたくないのかも知れません。特に熱心に作り続けている反戦歌も、『前夜(桃花鳥)』、『落日』、『遥かなるクリスマス』といった系譜が如実に示すように、要は平和を尊びながらも無関心であることを戒めているものが多い。

 そんなわけで、反戦歌から拾わず、ポジティヴに彼の故郷を歌ったこの曲をチョイス。タイトルがタイトルなので毎年のように長崎のライブで歌われ、ライブアルバムなど無数の音源が存在している、ファンにとってはほとんど躰に染みついていると言っていい隠れた代表曲のひとつ。ちなみにさだまさしにはもうひとつ、当時まだ妹の佐田玲子が在籍していた白鳥座との共演による『長崎から』という曲も存在しますが、歌詞・旋律ともに安定したこの曲の印象深さには及びませんでした。あれもいい曲なんですけど。

 リンクしたのは初出であるシングル盤を発表順に収めたシングルス全集の第四巻。実はこれに先んじる第三巻(asin:B00005GCS2)には『関白宣言』『防人の詩』という、歌詞の本質を顧慮しない人々からのバッシングの対象となった楽曲が収録されており、それを受けての時期のシングル曲ゆえ、やや守りに入った印象のある曲が多い。んが、その一方で“下から上”の『北の国から』、“上から下”の『オレゴンから愛』が同時収録されていたり、最大の実験作である『シラミ騒動』が聴ける現在唯一の音源だったりと、さだまさし音楽史を振り返る上でけっこう重要な曲が沢山収録されていたりする。ちなみに更にこのあとの第五巻(asin:B00005GCS5)には前述の『長崎から』と、当時のスタイルで歌い直した『長崎小夜曲’90』が入ってます。

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