聴くと自分でも厭になるくらいテンションの上がる曲です。パット・メセニー・グループ初のライブ・アルバム『Travels』に収録されており、これを最後にグループを退いたダン・ゴットリーブのドラムソロが堪能出来ることでも貴重。
この曲、どうも当初からドラムソロを聴かせるためのものという位置づけだったのか、ライブでしか演奏されていないようで、スタジオ音源がひとつもなく公式にはこれが唯一のレコードに残された音源となってます。――が、実はわたしが本当によく聴くのはダン・ゴットリーブ参加のものではなく、グループ二代目ドラマーであるポール・ワーティコが参加してからのライブを収録した『In Concert』(asin:B00008GQI9)のヴァージョン。何故こっちで触れないかというと、もう実に解りやすいくらい完璧なブートレグだから。なにせ、マイクの位置がどう聴いても客席のなかだし。
パット・メセニーのブートレグに対する憎悪は凄まじいものがあるようで、いつかの来日公演の際には、レコード店に並んでいたブートレグを勝手に持ち去り廃棄してしまった、という逸話が残っている*1ぐらいなので、本人の気持ちを尊重するととてもではないが大っぴらに紹介は出来ない。
が、しかし、演奏そのものの質は、オフィシャルでないのがひたすら惜しまれるほどに素晴らしい。この『In Concert』の時期は、その後のグループにおけるヴォイスの重要性を決定づけたペドロ・アスナールが在籍しており、当然のように『Straight on Red』においてもその美声が聴けるのが嬉しい。
完璧主義ゆえ、ちょっとでも納得の出来ない演奏があると捨ててしまうという方であり、それ故に演奏よりも拍手や口笛のほうが大きく聴こえてくる『In Concert』の音源などそうとう苦々しい想いを抱いているのでは、と同情する一方で、客席からの録音にしてはかなり状態が良く、演奏の響きも客席の熱気も伝わってくるこのブートレグをなかったものにしてしまうのは、あまりに勿体ない、と一ファンとして感じる。そんなわけで、表立っては唯一の公式音源が収録された『Travels』を採りあげつつ、本文でこっそりと『In Concert』もお薦めしておく次第。聴き比べてみるとグループ初代ドラマーのダン・ゴットリーブと二代目ポール・ワーティコの個性の違いも解って興味深いのです――ゆえに最近の願いは、三代目アントニオ・サンチェスによるライブ演奏音源が登場することだったり。出来れば公式で。
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