年末にまとめる余裕がなくて、既に2024年になってますけど、恒例なので遅れてもちゃんとアップしました。あくまで私自身の感想の総括なので、意見の食い違いは気にしないでくださいませ。
劇場で鑑賞した本数: 100本
12月30日に駆け込みで、どうにか3桁に到達しました。今年は作業の締切の都合により、月末になると出かける余裕がなくなりガチだったことに加え、11月に引いた強めの風邪でブレーキが掛かり、だいぶギリギリになってしまった。映像ソフトもしくはオンデマンドで鑑賞した本数: 4本
新型コロナウイルスも、なくなったわけじゃないけど落ち着いてきて、映画館はもちろんのこと各種イベントも順調に開催されるようになり、自宅での映画鑑賞がめっきり減りました。動画配信サイトは――観てはいるのですが、お笑いのライブや、秋以降にハマった『孤独のグルメ』をBGVにはしているんですが、どうも長篇映画をまとめて観るタイミングがない。結果、レンタルしたDVDがなかなか返せないので、無理矢理時間を作って鑑賞する、というかたちでどうにか4本になったわけです。たぶん、来年も状況はそんなに変わりない。
最も多く訪れた劇場: TOHOシネマズ日本橋 28本
いっときは自宅最寄りのTOHOシネマズ上野で観ることが多くなっていました。しかし、午前十時の映画祭の復活と、各劇場のスケジュール運用が柔軟になったことで、こちらが合わせるのが難しくなり、観やすい時間帯を優先して選ぶようにしたところ、上野を使う機会が減った。結果、午前十時の映画祭を鑑賞するために脚を運ぶことの多いTOHOシネマズ日本橋が、ふたたびトップに定着してしまった。ミニシアターが減少し、シネコンでかかる作品が増えていく現状、こういうケースも多くなるので、必定、午前中の上映が基本である午前十時の映画祭目当てで日本橋を訪れることが増える。私の生活拠点や移動手段が変わらない限り、たぶんずーっとTOHOシネマズ日本橋がいちばんよく通う映画館になるでしょう。
私的ベスト10(2022年11月以降に劇場で封切り公開され、今年鑑賞した作品)
順位 | 作品タイトル | 日本公開日 |
---|---|---|
1 | 『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』 | 2023年06月16日 |
2 | 『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』 | 2023年10月20日 |
3 | 『ザ・フラッシュ』 | 2023年06月16日 |
4 | 『ほんとにあった!呪いのビデオ100』 | 2023年07月28日 |
5 | 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 | 2023年03月03日 |
6 | 『TAR/ター』 | 2023年05月12日 |
7 | 『プリキュアオールスターズF』 | 2023年09月15日 |
8 | 『怪物』 | 2023年06月02日 |
9 | 『対峙』 | 2023年02月10日 |
10 | 『search/#サーチ2』 | 2023年04月14日 |
悩んだ末に1位に挙げたのは、大傑作だった1作目を3部作として拡張する第2作。完結していない段階で評価するのは私の主義ではないんですが、この圧倒的密度と、掲げたテーマの凄みには頭を下げるしかない。過酷すぎる大風呂敷をどのように閉じるのか、2024年に予定される続篇『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』が楽しみです。
割とスコセッシ作品はあんまし上位に入れないほうですが、この2位は題材や描き方がすべて好みなので採り上げてしまった。実際の事件をベースに、人種問題の厄介さを、ミステリ・サスペンス的な趣向まで用いて、表現としての重厚感が素晴らしい。
ヒーロー映画に対して批判的な監督の作品を下からヒーロー映画で挟みこむ私もだいぶ意地が悪い。しかしこの3位も個人的には軽視したくない。本質的には第1位と同じテーマ、それをいちど終焉を迎えようとしている《DCEU》の世界観のなかで繰り広げる。描写は基本、軽快だというのに、主人公の辿る過酷な運命と同様の悲愴感が漂っている。コロナ禍にハリウッドのストライキ、更に主演の不祥事もあって、批評的にも興収的にも伸び悩んだのが非常に惜しい。
そして4位は個人的な思い入れもあって、これ以上は落とせない。怪奇ドキュメンタリーの元祖として長年継続してきたシリーズを、ナレーションとして支え続けてきた初代演出がふたたび演出する、という最高の趣向で、しかもリリース以降の四半世紀近い時間経過をも包括したエピソードで綴る。出来すぎといえば出来すぎですが、内容として純粋に面白く、なおかつこうもツボを押さえられては上位に入れたくなる。
正直に言えば、5位以下は未だにせめぎ合っています。『TAR/ター』は映画好きになった初期から追ってきたケイト・ブランシェット最高の演技として外せないし、『プリキュアオールスターズF』は長い歴史のなかで採り上げてきたテーマを総括して、近年のマーヴェルやDCのほとんどを凌駕すると思っている。『怪物』にしても『対峙』にしても、見方を変えればもっと上位に入れたくなる……というわけで、このくらいで勘弁してください。
なお、2023年は色々と多忙すぎて、映画感想がろくすっぽ書けない1年でありました。いちおう、枠組だけ用意してたり、どうにか粗筋だけは書いてある、というのも多く、大抵はアドレスくらいは準備してあるので、タイトルにリンクだけは設定してあります。しかし、これをアップする2024年1月3日時点では、『スパイダーマン~』と『ほんとにあった~』しか感想はアップされてませんので悪しからず。きっとそのうち埋まるだろう、そのうちに。
私的ベスト5(2022年10月以前に公開され、今年鑑賞した作品)
順位 | 作品タイトル | 日本公開日 |
---|---|---|
1 | 『レナードの朝』 | 1991年04月05日 |
2 | 『無法松の一生〈4Kデジタル修復版〉(1943)』 | 1943年10月28日 |
3 | 『無法松の一生〈4Kデジタルリマスター版〉(1958)』 | 1958年12月12日 |
4 | 『マルサの女』 | 1987年02月07日 |
5 | 『エクソシスト ディレクターズ・カット版』 | 1974年07月13日 |
そのなかで1位をこれにしたのは、思い入れのほうが大きい。これほど真摯で切実で、悲しい内容なのに、なぜか救いがあるなんて映画はそうそうありません。やり切れない想いを残すのに、それでも「何かを成さなければ」という気持ちにさせる、とんでもない作品でした。
2位と3位は、どうしてもこの並び方にせざるを得なかった。戦時中に制作公開され、検閲によって原形を失った1943年度作品を、本来の物語に近い形で撮り直した1958年版、もちろん後者こそが監督の理想通りで、余すところなく物語を表現していることも承知しているのですが、多くの要素を欠いた前者が、それゆえに時代性を反映してしまった重みと、欠落しているがゆえに却って深みを帯びてしまった皮肉。心情的には1958年版の方を上にしたいんですが、無法松という男の哀しさ、武骨な美しさを際立たせてしまった1943年版のほうを、どうしても愛したくなるのです。
4位はもはや日本の近代娯楽映画のお手本と言っていいくらいの傑作。社会性を採り入れつつも重苦しくなく、極めて知的でサスペンスフル。
5位は、もともとミステリ、ホラー方面から映画を観るようになった者としては――なんで観るのがここまで遅くなったのか自分でも不思議で仕方ありません。たぶん、なまじ個々の場面が有名すぎて、通して観たことがなかったにも拘わらず、観たつもりになっていたのでしょう。ちゃんと観てもいない人間にそう思わせ、そして今更鑑賞してなお 凄みを感じさせるクオリティに敬意を表して。
なお、こちらも2024年1月3日時点ではまっっっっったく感想は書けてません。無法松の2作品とか、感動が新鮮なうちに書いておきたかった……。
2024年の展望
来年は、たぶんちょっと例年とは作品の傾向が変わってきそうな気がしてます。ポイントは2023年中盤までもつれた、アメリカの俳優協会・脚本家協会のストライキと、アメコミヒーロー映画の失速です。
前者ははじめから全世界公開を前提とした大作の撮影スケジュールを大幅に遅らせる結果となり、いまぐらいから徐々に影響が出始め、来年あたりがピークと予想されている。トム・クルーズの『ミッション:インポッシブル/デッド・レコニング PART TWO』も当初は2024年公開予定でしたが2025年までズレ込んだほか、2024年頃に公開を予定していた大作が色々と延期されている。まあ、その結果として2023年公開から2024年公開に変わったものもあったりはしますが。
後者にはこのストライキも当然影響していますが、そもそも一時期の過剰供給によって観客側が倦みはじめた。興行成績にも露骨に現れたその事実が、ハイペースで供給を続けていたマーヴェルに足踏みさせ、2023年は『デッドプール3』と、もしかしたらMCUと繋がっていくかも知れない《スパイダーヴァース》の1本『マダム・ウェブ』ぐらいしか公開予定がない。ライヴァルであるDCはそれ以前にシリーズ構想の大幅な見直しが実施され、年明け早々の『アクアマン/失われた王国』を最後に、劇場映画としては2025年の『スーパーマン:レガシー』まで空白がある。一時あれほど絶え間なく供給されていたアメコミヒーローは、2024年のあいだは少々お寂しい状況となりそう。
もちろん、映画館のスクリーンを埋める必要がある。敷衍していくと、これまで全国規模ではかかりにくかった作品がかかったり、過去作品の上映がちょっと増える可能性もある、と個人的に考えてます。ヨーロッパや中国、韓国の人気作、『RRR』が一世を風靡したインド映画も、作品によっては更に大きな波が来るかも知れない。
ただここ数年は邦画の国内成績が順調で、東宝のみならず東映や松竹もけっこうコンスタントに新作の供給がある。せっかくスクリーンに余裕が生まれるなら、午前十時の映画祭のような再上映企画や、独立系の小規模な作品が全国で鑑賞される機会に充ててくれればいいんだが。寅さんとか往年の特撮映画とか、もっとあちこちでかけて欲しい。
作品で期待しているのは、何はともあれ『劇場版 この動画は再生できません』(2024年内予定)です。テレビ神奈川ローカルで放送された短期集中ドラマながら、配信によって全国区で火が着き、シーズン2の終了とともに映画版が告知された。かく言う私も、シーズン1の配信で存在を知ってすっかりハマってしまい、何よりも公開を待ち望んでいる1本だったりします。
まあ何にしても、どれほど多忙で新作をチェックしきれなくても、隙を見つけては現在かかっている映画をチェックするのが完全に習慣化してますので、今年も変わらず、感想はほったらかしになったとしても映画を観に行くのだと思います。
コメント