余計なものがない美味しさ。

 6月10日の映画鑑賞のあとの話。

 当日も記していたとおり、朝から若干体調が思わしくなく、様子次第では直帰も考えていました。しかしこの日の日本橋訪問は、お馴染み日本橋ふくしま館のイートインに、初出店のラーメン店が来ている。幸いに、映画を観終わって、体調はわりあい改善しているようなので、心残りになるよりは、と意を決して向かいました……大袈裟な。
 この日来ていたのは、坂新というお店。検索をかけると、“麺&ダイニング”と添えられていて、地元ではラーメン以外も提供しているらしい。しかしこのイートインでは、たぶん厨房の面積や搬入できる食材の量に制限があるのでしょう、支那そばを中心にラーメンのみ。まあ、私はラーメンを頂きに来ているので文句はない。まだ11時半にもなっていなかったため、余裕で着席出来ました。

坂新の肉そば。

 注文したのは肉そばです。実は私としては珍しいんですが、デフォルトのメニューではなく、チャーシュー大盛りのものにしてしまった。そもそも選択肢に大盛り自体がなかったんですが、それより大きいのは――チャーシューが食べたい気分だったから。初めてのお店でチャーシューメンに相当するものを注文するのは、私にとってはちょっと冒険だったものの、たまにはいいだろうと。
 名前通り、上から見たら、ほぼ肉です。枚数を数える気にならないくらい折り重なっている。具材は他に、上に乗せられた刻みネギと、肉の下に隠れているメンマだけ。あとは中太の縮れ麺と、ごくオーソドックスな喜多方ラーメンのスタイル。
 ……とても私好みでした。
 黄金色のスープは豚骨から丁寧に取ったそうで、臭みがないどころか、過剰なクセもなく繊細でまろやかな風味。私の感覚ではやや塩味が強く立っている気がしましたが、問題ではない。
 何せ量が多いので、麺よりも先に手を出したチャーシューが、また非常に私好みでした。箸でもほぐれるくらい煮込まれているけれど、ちゃんと弾力も肉の風味も残っていて、食べ応えがある。その一方で、溶けるような脂身の旨味がたまらない。このチャーシューの量だと、脂身が多すぎるのはくどくなりそうなものですが、倦まない適度な味加減と甘みで、個人的にはほぼ理想の仕上がりと言っていい。この冒険は正解だった、とこの時点で確信。
 喜多方ではオーソドックスな中太縮れ麺も理想的。快いモチモチ加減で、繊細でコクのあるスープがよく絡む。他の具材はネギとメンマだけなので、実質麺とチャーシューのリレーで食べ続ける印象ですが、まったく飽きが来ません。
 だいぶ序盤で、刻みネギが喉にぶつかる、という情けない事故があったせいで、食べるスピードが若干落ちてしまったものの、たぶんそれがなければ、感覚的にはあっという間に食べ終えてしまいそう。あっさりだけどコクのある、私が常日頃からいちばんほしいタイプの味。
 ここのイートインで食べたラーメンの中でも、老麺まるやと並ぶくらい、私好みの1杯でした。もし今後も出店してくれるなら、まるやと同様、そのスケジュールに合わせて日本橋来訪の予定を組んでしまいそう。

坂新出店時の日本橋ふくしま館店頭に掲示されていたメニュー。
坂新出店時の日本橋ふくしま館店頭に掲示されていたメニュー。

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