6月13日に、2022年3月リリースの『Not Found 52-ネットから削3除された禁断動画-』を鑑賞。心霊系YouTuberが閉鎖され廃墟となった宗教施設から生配信をしていて恐怖を体験する《うろつく男》、先方からの持ち込みで始めた取材が異様な展開をする《日本初 完全自動運転を目指す男》、登山をしていたカップルを見舞う災難から、思わぬ事態に発停していく前後編《湧水》など、全6篇を収録。
構成はいつも通り、冒頭に痛いクロ映像を置いて、怪奇映像だけでなく現実の出来事の範疇に含まれるエピソードを配しつつ、中盤とラストに前後篇の長篇、という構成。なおかつ、AD杉本が去ってから物足りなくなっていた、奇人変人エピソードも復活している。
ただ、正直ほとんど、説得力に乏しくて残念。シチュエーションは特異でこのシリーズならでは、という個性は発揮されてますが、締まりが悪かったり、特定の結論に導こうとしているのに、展開や描写が不足しすぎている。
象徴的なのが長篇《湧水》です。ある背景に基づく奇怪な出来事が立て続けに記録されていますが、もしそうなら、何故この程度のことしか起きてないのか、そしてスタッフに対して起きたように仄めかした影響はどうなったのか、何故そこに触れていないのか、が非常に気になります。これがはじめから“本篇はフェイク・ドキュメンタリーです”と謳っているなら、その辺に触れずに終わらせるのも別に構わない――下手だなあ、とは思いますが趣向としては受け入れられる。しかし、フェイクだと明言していない、こういうシリーズではあんまり褒められたやり口ではない。あんなフリをしたら、ここの予算ではまかないきれないレベルの続篇がなきゃ始末がつかないぞ。だから、たぶん今回の件は2度と触れずじまいになるんだろうな、とスレた私は嘯くのです。
だがそれでもこの長篇はましなほうで、もっと酷いのは《日本初 完全自動運転を目指す男》です。AD杉本が外れてから加わったスタッフが、「これまでに採り上げたことのない題材」だと食いつき、取材対象と待ち合わせてみたら明らかに不審な奴だった、というAD杉本メインの頃によくあったパターンを踏まえてますが、登場人物の行動があまりにも非常識。
しかもスタッフほぼ全員です。シーシャを知らないディレクター、安易な構造をあっさり信じ込むAD、どー観ても平成に入ってからのデザインの乗用車を「昭和レトロだから」と謎の褒め方をするスタッフ、挙句、オチも同じような常識不足の安易な発言。もちろん演技なんだろうな、と思うんですが、だとしてもちょっと行き過ぎて、白けます。
いちばん駄目なのはカメラマンの柿崎です。唯一、異様な出来事を映像で記録出来る立ち位置にいたのに、なんでその映像が出てないのか。それひとつで視聴者はぐうの音も出なくなるのに、なんで無視したのか。撮影出来てなかった、と捉えるには、序盤の映像はちゃんとあることが余計不審を招くのです。恐らくは、途中から電話でリアルタイムの体で描写する過程をそのまんま映像にする予算も技術もないから、というのが、こういう表現になった真相なんでしょうけれど、あまりにも拙劣。こういう展開にするなら、はじめからカメラを持っていない人物をそのまま送りこめば良かったのです。そして、そこまでフォローしたところで、途中の出来事が事実なら、犯罪としてニュースになってもおかしくないのに、実際にはニュースでは聞いたことないし、劇中でもその必然性に触れない。
フォーマットを守り個性を発揮している、という点は褒められる。けれど、質はだいぶ悪い。《~自動運転~》はあえて道化を演じているだけのつもりかも知れませんが、作品としての全体像が道化になってるのはさすがに認められんぞ。
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