7月26日に、2022年3月リリースの『封印映像69 樹海の手紙』を鑑賞。幼い娘の死後、酒に溺れゴミを持ち帰るようになった男性があるものを拾ってから異変が起きてい《電話のおもちゃ》、夜更けに子供が撮影したと思われる映像が導く恐怖《チェンジリング》、恋人と仕事休みに訪れた公園で記録した怪異《レジャーシート》、自殺者を撮影するため樹海に侵入した男性の残した異様な映像を巡る表題作の全4篇を収録。
このところ別シリーズにかまけていたので、久しぶりの気分です……間が空いたせいで、改めてこの《封印映像》シリーズの弱みを実感してしまった。
とにかく、事実かも、と思わせてくれるだけのリアリティがない。せめてリアクションに本当っぽさがあればまだいいんですが、ぶっちゃけ“芝居”が下手すぎる。何せこのシリーズは、展開自体は凝ってますから、本職の俳優にお願いしている、と思われるのですが、たぶんそもそも芝居のつけ方が下手なのです。せめて、毎回顔を見せるスタッフぐらいは自然なやり取りをして欲しいかですが、なんで毎回、不自然なところで撮影を始めて、不自然にやり取りをしてるんだ。どういうタイミングでカメに回してるんだよ。
ただ、そこまではまだ笑って許せるのです。如何ともし難いのは《チェンジリング》です。
このエピソード、繊細な配慮を要する内容なのに、あまりにも雑に扱っている。投稿した母親の危惧が正しいという保証はないのに、モザイクをかけているとは言え、その気になれば身近なひとには特定できるレベルで出してしまうのは問題がありすぎる。投稿者の危惧がただの思い込みだったとしたら、登場する子供の将来に傷を負わせることになるのに。
そういう意味では、芝居が拙いから、フェイクだと明白になっているのは、救いかも知れません……が、この相互補完はあまりにもリベルが低い。むしろ、こういう扱いをしているから、内容的には真実なのかも、と思ってしまうような描き方をして欲しいのです。これじゃ、ツッコミをする楽しさはあっても、怖さを味わえませんて。
アイディアの豊かさや工夫、という点では評価出来るのです。しかし、それ以外は全般に心許ない。公表のスタンスからありえない《チェンジリング》を槍玉に上げましたが、《電話のおもちゃ》は大前提となる、酔っ払ってゴミを拾ってくる男性に対する配偶者の反応が全般にあり得ないし、投稿映像のクライマックスの状況も不自然。《レジャーシート》は仄めかされる怪異の背景が、正直、周囲の人間が記憶しているのも奇妙だし、それを原因とするには現象がしっくり来ない。表題作は、この類のドキュメンタリーでときどき出てくる趣向ですが、たぶんいちばん洗練されてない。本篇よりも後発の『心霊曼邪羅』のほうがよっぽどリアリティあったぞ。
依然として本来の演出は帰ってこないし(連れ戻す気もないのかも)、クオリティも後発に追い抜かれてる。巻末に2巻先まで予告を収録する、リリースの計画性は評価出来るけど、もうたぶん愛好家にもネタとしてしか消費されてないんじゃあるまいか。
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