松江旅行2025最終日、突撃・美保神社。

 いよいよ最終日です。これといった予定はなく、出雲空港までの連絡バスが、ここを過ぎたらもう間に合わない、となる手前まで、何かしらで時間を潰さねばならない。
 そして遂に、美保神社参拝を決意しました。
 出雲大社に参拝するならここも訪れなければいけない、と言われていたので、いずれは、と思っていましたが、なにせ、その言葉で想像するより距離がある。そのうえ、人口減少による人手不足なども相俟って、唯一の公共交通手段であるバスも便数が増やせない。行くつもりになっても、想定した時間までに戻れないかも知れない。
 が、念のために、と宿の方にお願いして、ルートを調べてもらったところ……どうも、なんとか間に合いそう。
 それでも、寝坊したらそれまでだし、やっぱり厳しいかな、なんて思ってたら、思いっきり早起きできてしまった。
 こうなったら出かけるしかない。予定より早く朝食を摂るため、着替えると朝食バイキングの催されているレストランへ。やけに若い子が母親らしき人と連れだって来てるな、と思ってたら、食事中に従業員の方が全体に向かって、「本日は島根大学を受験される学生の方が多くいらっしゃいます」と言って、激励のスピーチを始めた。場違いな日に来てたんだな、と申し訳なく思ってたら、従業員の方が「今年の春にまたお会いできることを楽しみにしております」云々と言うべきところを、「来年の春――」と言いかけて、私は思わず噴き出しそうになりました。受験生に来年また来い、は駄目やろ。すぐ言い直してたけど。
 部屋に戻ると、荷造りを済ませて、重いものをいったん宿に預かってもらい、身軽な状態でお出かけ。バス停まで赴き、移動開始……が、世の中は平日。朝の渋滞の影響か、バスは来るけど、目的地方面の便がなかなか来ない。もしかして見過ごしたか? と不安になったところへ、目当ての目的地と識別番号を表示したバスがやって来て、喜々として乗る。
 見知ったところはあっという間に通り抜け、どんどん見覚えのない風景が続いていく。乗り換えとなる美保関バスターミナルは、近くにあるのは学校だけ。正面に広がるグラウンドは、足跡ひとつついていない。ついでに私は、昨日から陽射しが強まってきて、道の雪はあらかた溶けたか緩んでいる、と油断していたところへ、半端に溶け広がって凍りついた水溜まりを踏んでしまい、為す術もなく背中から転倒しました。右腕で咄嗟に庇ったことと、背中に厚みのあるリュックを背負っていたのが幸いして、ダメージは肘の痛みくらいで済みました。

私が転倒した氷結トラップ。
 私が転倒した氷結トラップ。

 あえて早めの便で移動したので、乗り継ぎまで少々持て余したものの、無事に次のコミュニティバスに搭乗。コミュニティバスならではの、ほぼ自家用車のサイズにちょっとワクワクします。
 しかし一番の衝撃は、車窓の風景でした。コミュニティバスが走る海岸線は、ほぼ例外なく対岸の、鳥取の陸が広がっている。しかも境港はやけに低い標高で民家や工場が連なり、そのずっと奥に山脈がまるで蜃気楼みたいに伸びている。手前の、少々うらぶれた印象は否めないけれど、昭和あたりの面影を留める港町の光景にも風情がある。移動している段階で、次はもっと時間と余裕を設けて訪ねよう、という気分になっていました。

美保神社を鳥居越しに臨む。本堂は、左に曲がった奥にあるため見えません。
 美保神社を鳥居越しに臨む。本堂は、左に曲がった奥にあるため見えません。

 そして無事に美保神社到着。
 鳥居の前から振り向くと、そこは既に日本海が広がっている、見るからに海運と繋がる立地。2階分ほど階段を上った先に、出雲大社にも似た太い注連縄で飾った本堂がある。時間に余裕があれば、もっと細かく眺めたいのですが、あとの行動に余裕を取りたい、と思うなら、1時間で済ませねばならない。きちんとお詣りを済ませ、ご朱印とお守りを拝領して、周辺に発つ小さなお堂などをざっと眺めると、鳥居を出る。
 で、ここでやきいかを売っているおばさまに捕まりました。
 平日で他に人通りも少なかったせいもあってか、ちょっと感慨に耽っていたら、話しかけられたのです。邪険にするほど時間に追われてもいないので応じていたら、「ぬるいお茶でよければどうぞー」と、椅子とお茶を勧められた。
 くろもじ茶と思しいお茶は美味しいし、他に用事もないし、とやきいかをお願いしたら、焼けるまでの間に、とスープに、きちんと沸かしたお湯で入れ直したお茶、更に先に焼けたイカのくちばし、と次々に持ってきてくれる。結局、時間がなくなりそうだったので、やきいかは持ち帰りできる状態にしてもらいました。そしてついでに、スープに用いたもちのりと、お茶そのものも買ってしまった。
 ……完全に乗せられた。まあ、バス停で待つ間に食べたいかは当然のように美味しかったし、海苔やお茶も、松江旅行の時には毎回買っているのに、今回はまだ手出ししていなかったところなので、別に問題はありません。

美保神社からの帰路の車中から撮影した風景。海越しに大山がうっすらと。
 美保神社からの帰路の車中から撮影した風景。海越しに大山がうっすらと。

 帰り道、私の座っている横の車窓が海岸線に向いていたので、この独特の風景をたくさん撮影しました。中には、伯耆富士と呼ばれる大山が遠く望める写真もある。本気で、いずれもっとゆっくり時間を作って訪ねたい。
 松江方面に着くと、当初降りるつもりだったバス停よりも早めに降車。もはやこのあたりの土地勘はかなり良くなっているので、そのとき頭に思い浮かべていた行き先に向かうには、たぶんここで降りるべきだ、と判断したのです。
 予想通り、無事カラコロ工房に到着。
 他の店も気になるようであればそっちに、と考えてはいた。しかし、悩みに悩んで選んだのは、前日と同じラーメンゴイケヤ……前日いただいたメニューがあまりにも美味しかったので、食べられるならもういっかい、と思ったのですが、残念ながら、朝からどうも胃の具合がよくない――恐らく、風邪を引きかかっていたのだと思います。明らかに食欲も減退しているので、違うところで軽く済ませる、ということも考えた。しかし、「もう一度食べたい」と宣言しつつ、今日の滞在では別のお店にも行きたいし、という話をしていたお店のお姉さんに見つかってしまい、「もうちょっと悩みます」と言ってはみたものの、やっぱり何かしらここで食べるべきだ、という決断になり、飛び込んだ。
 とはいえ、きのうと同じメニューは確実に胃に負担を掛けるので、味の優しそうなものをチョイス。これが大正解で、まあまあ不調にも拘わらず無事に完食。お店の方に「必ずまた来ます」と宣言して退店。本気です。何なら、この日避けたメニューのためだけに、ふたたび大雪に見舞われる危険を冒してでも冬に来たいくらい。松江に来たらマストで立ち寄る店が増えちゃった。

 食事を済ませたあと、もう時間的にまたどこかに立ち寄る余裕はない――というか、2日連続、しばしば吹雪くような陽気のなかうろつきまわっていたせいで、もはや体力は限界に近い。さっさと宿に戻り、荷物を引き上げて、空港連絡バスの停留所に移動しチケットを買って待つことに。バスが現れたら、さっさと乗り込んで、椅子に座って脱力。
 空港に到着すると、この3日間でほとんど確保出来なかったお土産を一通り購入……ぶっちゃけ、私は松江旅行のお土産は、いつもここか島根県観光物産館で買ってるので、大差はなかったりする。
 そして、かなり早めに保安検査も済ませると、搭乗ゲート内でまた脱力。正直、私だけのために飛行機を飛ばしてくれるならそうして欲しいくらい疲れ切ってました。売店でソフトクリームのバニラを購入し、糖分を補いつつひたすら待つ。
 飛行機そのものは定刻に出発、何なら追い風で予定より早く羽田空港に着く予想、というアナウンスがあったくらいなのに、到着は予定より10分ほど遅れました――羽田空港そのものが、着陸待ちの飛行機で混雑してたそうな。
 当初の心づもりでは、羽田空港のどこかで夕食を摂って帰るつもりでした。しかし、この頃には疲労がピークに達していて、食欲がほとんどない。宣告のラーメン店のように、サッパリと食べられるものがあれば、といちおう探してみたものの、ピンとくるものがなく、食べないままに離脱。
 自宅最寄り駅まで辿り着くと、近くのコンビニでカップのさけ茶づけだけ購入し、足を引きずるようにしてどうにか帰宅。本当は、帰り次第透析をするつもりだったのですが、もはや準備をする体力も気力もない。お茶漬けを食べ、入浴したら、とりあえず最低限やるべきことだけを済ませて、潰れるように就寝したのでした。

 この記録が3日遅れでようやく上がったの派、その後、完全にボロボロだったせいです。足は筋肉痛で、足の裏にはしっかり肉刺が出来てる。そして、最終日はともかく、最初2日間、冷え込みのなか歩き回った反動で、風邪に似た症状を呈している――熱は出てませんが、鼻水がちょっとと、喉がひたすらいがらっぽい。常備薬として処方して貰ってある風邪薬やトローチを服用し、金曜日になってようやく改善してきた。
 好奇心かただの貧乏性か、旅先ではどーにも無茶をしがちで、あとにダメージが残ることはしばしばある。しかし今回はまた格別にヘロヘロでした。3日目の美保神社強行軍はともかく、初日こそ、もーちょっと大人しくしてても良かった気はします。
 そんなことを言いつつ、たぶん次の時もこうして動き回ってしまうのでしょう……ならばむしろ、基礎体力をつけておくことを考えるべきかも……。

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