メッセージは届いたのだろうか。[レンタルDVD鑑賞日記その906]

ほんとにあった!呪いのビデオ110(Amazon.co.jp商品ページにリンク)

 9月16日に、2025年3月リリースの『ほんとにあった!呪いのビデオ110』を鑑賞。投稿者が駆け出しの頃に、ある放火事件の関係者への取材を行う中で起きた怪異《ドキュメント》、廃校から発見されたビデオテープに残った不可解な出来事《テレビ朝会》、母娘が夜更けに遭遇した怪異の正体を探り、ある公衆電話の周辺に起きた事件を探る《Missing》前後編など、全8篇を収録。
 3ヶ月半ぶりのレンタルDVD鑑賞です。なんでこんなに滞ったかというと、先日感想をアップした『ゴッホ 最期の手紙』を復習のために借りたら、なかなか観る時間が作れなかったからです。
 中村義洋、菊池宣秀というシリーズのレジェンド的なふたりが演出する劇場版をサポートした藤本裕貴が続投していてちょっと安堵。また新しいひとに変わるよりは、歴史も作風も完全にわきまえた人が続けるのがいちばんいいよね。演出補もおおむね続投してます。
 収録作の出来は、シリーズ全体を知っていればわりと類例は思い当たるものばかりですし、背景を掘り下げたものが少ないのがちと物足りないものの、基本的にこの類のシリーズとしては間違いなく高いレベルで安定している。《待ち合わせ》とか《遮断機》とか、シチュエーションも展開もやり過ぎ、かつパターンに嵌まってますが、それでも不自然さがなく、ちゃんと怖い。
 単発もので出色なのは冒頭2篇、《ドキュメント》と《テレビ朝会》です。《ドキュメント》は普通にカメラで撮影し続けているからこその説明のつかない成り行きが、映像としてはっきりと捉えられた怪異よりも不気味です。そしてそれは《テレビ朝会》も同様で、こういう仕組みで朝会をやっていた学校がある、というのが私には初耳なのですが、被写体が子供であるが故のぎこちなさ、空々しい雰囲気が、こちらも怪奇現象以上の不穏さを感じさせてしまう。この雰囲気の中で怪異が起きるからなおさら不気味だし、映像がどうして残されていたのか、なども不明なまま放置されてるのがなおいっそう不安を掻き立てる。さらっと取り扱われるけど、なかなかです。
 そして前後編にて、撮影場所の因縁や、投稿者たちをその後も襲う恐怖を丁寧に追った《Missing》はやはり見応えあり。段階的に嵌まっていく情報の断片、そのあいだも投稿者とその娘を襲う異変。怪現象を解決する専門家ではないスタッフが、検証しつつも新たな怪異にただただ翻弄されるさまがもどかしくも生々しい。なにせ、投稿者たちを苦しめる脅威の根っこに触れることも出来ないうちにどんどん悪い事態が積み重なっていくから、そりゃあなんにも出来ません。
 取材映像にも怪異が紛れ込む一方、結局スタッフとしては手の打ちようがないまま、事態は収束していきますが、そのあとに判明した事実がまたホラー的にいい意味で後味が悪い。何故そこにそれがあったのか、そこに文字を書いたのは誰で、どんな意思が籠められているのか。取材途中で判明している事情と併せて想像を膨らませると、あまりにおぞましく、憐れな過去が浮かび上がる。結局日常が変わらざるを得なかった投稿者は巻き添え過ぎるけれど、そこまで影響が残るのも解るような気がしてしまう。
 行きすぎだけど安定している『呪われた心霊動画XXX』という怪物があるいま、理性と節度を保っているこちらは物足りなさを禁じ得ませんが、その品性を欠かさずにクオリティを維持しているから、このシリーズは素晴らしい。もうそろそろ映像ソフトのレンタル文化もだいぶ危うくなってきましたが、媒体を変えてでも生き残ってほしいところ。

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