『有吉の壁 劇場版アドリブ大河「面白城の18人」(併映:映画「京佳お嬢様と奥田執事」)』

『有吉の壁 劇場版アドリブ大河「面白城の18人」』前夜祭生中継つき上映のフォトセッション。登壇者は……多いので各自調べてね。
『有吉の壁 劇場版アドリブ大河「面白城の18人」』前夜祭生中継つき上映のフォトセッション。登壇者は……多いので各自調べてね。

『面白城の18人』監督:有吉弘行 / 監督補:佐藤栞里 / 脚本:壁芸人の皆様 / 主演:とにかく明るい安村、イワクラ(蛙亭)、えいじ(インポッシブル)、松尾駿(チョコレートプラネット) / 出演:長田庄平(チョコレートプラネット)、太田博久(ジャングルポケット)、向井慧(パンサー)、長谷川忍(シソンヌ)、山本浩司(タイムマシーン3号)、新山(さや香)、野田クリスタル(マヂカルラブリー)、長谷川雅紀(錦鯉)、他
『京佳お嬢様と奥田執事』出演:金子きょんちぃ(ぱーてぃーちゃん)、奥田修二(ガクテンソク)、信子&すがちゃん最高No.1(ぱーてぃーちゃん)、よじょう(ガクテンソク)、じろう(シソンヌ)、佐藤栞里、他
配給:TOHO NEXT
2026年日本作品 / 上映時間:1時間49分
2026年1月16日日本公開
公式サイト : https://ariyoshinokabe.toho-movie.jp/
TOHOシネマズ上野にて初見(2026/1/) ※前夜祭舞台挨拶生中継つき上映


[粗筋]
 宮本寂しい (とにかく明るい安村)とわる井直虎(イワクラ)は有壁猿という師の手ほどきを受ける兄弟弟子だ。宮本は用心棒として剣の腕を振るい、師匠たちとの生計を立てているが、師匠はしばしば苦言を呈する。一方の直虎は、かつて侍に母親を殺された怨みを抱えており、未だ兄弟子である宮本との稽古で一本も取れない己を歯痒く思っている。
 ある日、宮本が目を覚ますと、師匠は腹に刀を刺され息絶えていた。その傍らで意識を失っていた直虎には、昨晩寝てから目覚めるまでの記憶が残っていない。
 師匠を殺したのはいったい誰か。宮本は情報を求めていくなかで、朽ちた城に住み着いた、幻術を用いる旅鴉という一群の仕業である可能性を突き止める。宮本は復讐のため、各地に散った兄弟弟子たちに招集をかけた。
 ここに結成した、師匠の弔い合戦に臨む集団《有壁隊》は、師匠の四十九日を復讐の日と定めた。その日のため、師匠の遺した秘伝の書を頼りに修行に励むが――


[感想]
 とにかく『有吉の壁』は無茶なことをする。
 架空の映画賞の候補に上がった、という設定で芸人たちが適当にでっち上げた映画の内容を本当に作品にして劇場公開した前作『有吉の壁 カベデミー賞 THE MOVIE』も充分無茶だったが、今回は複数の芸人を集めて、その場の思いつきで時代劇を演じさせ、その中でそれっぽく撮影した4つのシーンを、残りは出演した芸人たちに丸投げで話を繋げて1本の長篇にする、という趣向である。
 前作は、設定さえ維持していれば、どうにかひとつのお話っぽくまとめられたが、今回は本当に適当な設定で撮影したシーンが4つある。これを無理矢理に繋いでいくのだ。公開まで僅か3ヶ月でまとめた芸人、そして撮影スタッフにまず驚嘆しかない。
 だが驚くべきは、結果として、いちおう話として筋が通ってしまっていることだ。
 本編は単純に、仕上げたストーリーを見せるのではなく、テレビ番組『有吉の壁』と同様に、監督・有吉弘行の無茶振りに応えつつ、それぞれのシーンを撮影するくだりが、先行するテレビ放送では使われていない部分を添えつつ見せると、続いて、そこでメインキャストに祭り上げられた芸人に、アドリブで口にした芝居の背景や、話を深めていくアイディアを、スタッフがインタビューの形で引き出すくだりが挿入される。そして、そこで提示されたアイディアを軸に、次のアドリブシーンへと繋がるドラマが、明らかにしっかりと組まれた台本によって演じられる。
 過程が無茶振りなのだが、それぞれが適当にでっち上げた設定がうまくまとめられている。なにせアドリブ部分の演技が行き当たりばったりだったせいで、設定に空想的な要素を持ち込まねばならなかったため、正統的な時代劇というよりは、いわゆる伝奇物の様相を呈しているが、そういう意味ではけっこう楽しめる内容になっている――なにせ本当に適当な思いつきの羅列だから、飛躍が過ぎていたり、すっかり忘れ去られた要素があったりするのだが、師匠の奇妙な死に様から、謎めいた黒幕の背景などが最終的に繋がりあい。ある程度の筋が通されている。恐らくこれは、アイディアを出した壁芸人たち、というよりは、それを整理して台本をまとめたスタッフの苦労のたまものだろうけれど、いずれにしても、無茶振りに全力で応えたことは評価したい。
 芝居の部分を補強しているのは、公式サイトなどでは公開まで伏せられた豪華なゲスト陣が支えてくれているのは間違いないが、ことここで特筆すべきはとにかく明るい安村である。この番組に参加する芸人の多くは芝居仕立てのネタを得意とする人たちばかりだが、コントの演技とドラマの演技は際立たせるものが異なるため、誰もが文句のない演技ができている訳ではない。しかしその中で、安村は間違いなく、かなりの好演を見せている。アドリブパートで他の芸人が口にする通り、本篇のドラマとしての軸を支えたのは安村と言い切ってもいい。公開前日に催された舞台挨拶で有吉監督は「普通に俳優としてお呼びがかかるのでは」といった趣旨の発言をしていたが、本当にあり得そうな健闘ぶりだった。
 もちろん、映画として考えればかなり特殊で、『有吉の壁』という番組の性質を知らなければ、楽しむことはおろか、噴飯物と捉えても仕方のない作りだ。だが、『有吉の壁』という番組がどういうものなのか知っている人は勿論、その実験性、即興性を楽しむ考え方の出来る人なら、一見の価値はあると思う。丁寧に、緻密に作り込んだ作品は勿論素晴らしいが、こういうイロモノ的なやり方も、それはそれで興味深い。
 ……ただ、1篇の作品として改めて考えると、1時間半以上の尺のある本篇より、冒頭に置かれた同時上映作品『京佳お嬢様と奥田執事』のほうが完成度は高い、と感じてしまうかも知れない。
 なにせこちらは、『有吉の壁』でもっとも多く催される企画《一般人の壁》にて、ぱーてぃーちゃんの金子きょんちぃとガクテンソクの奥田修二が、継続して演じているネタが元になっている。こちらも元々はくじ引きで無理矢理組まされたのだが、その際に連作として実施したこのネタが好評だったため、その後も折に触れて披露され、今や番組の人気キャラの1つとなっている。
 既にキャラクター、世界観が仕上がったものであるのに加え、尺を伸ばすために参加した他の芸人たちが演じるのも、ほとんどは『有吉の壁』内のどこかで演じた別キャラやネタがベースとなっている。
 つまりは、行き当たりばったりで演じたものにキャラや設定を載せていった『面白城~』よりも、作品として既に完成されている。『面白城~』のように試行錯誤のパートも含まれていない分、こちらは普通にショートムーヴィーとして、きちんと仕上がっている。しかも、こちらにもゲスト出演がいるうえ、出演しているのは少数ながら、パリでのロケまで実施しているから、劇場用作品としての豪華さも抜かりない。
 とはいえ、やはり大前提のユニークさと、それを作品としてまとめ上げた壁芸人、スタッフの苦労までが窺える本篇は充分に贅沢だし、趣向そのものの面白さもあって、なおかつドラマとしても楽しめるのだから、やはりメインは『面白城の18人』なのだ。少しでも関心があるのなら、唯一無二の興趣を、1つのお祭りと捉えて、劇場で楽しんでいただきたい。


関連作品:
有吉の壁 カベデミー賞 THE MOVIE
テッド』/『秘密結社鷹の爪 THE MOVIE 3 ~http://鷹の爪.jpは永遠に~』/『アイの歌声を聴かせて』/『スパイの妻〈劇場版〉』/『魔女見習いをさがして』/『のみとり侍
ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』/『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE2 サイキック・ラブ』/『内村さまぁ~ず THE MOVIE エンジェル

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