『アクアマン(字幕・2D・Screen X)』

ユナイテッド・シネマアクアシティお台場のホールに展示された特大スタンディと、映画館上階二展示されたアクアマンとメラ王女の等身大フィギュア。 アクアマン ブルーレイ&DVDセット (2枚組) [Blu-ray]

原題:“Aquaman” / 監督:ジェームズ・ワン / 脚本:デヴィッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリック、ウィル・ビール / 原案:ジェームズ・ワン、ジェフ・ジョンズ、ウィル・ビール / 製作:ロブ・コーワン、ピーター・サフラン / 製作総指揮:ジョン・バーグ、ウォルター・ハマダ、ジェフ・ジョンズ、デボラ・スナイダー、ザック・スナイダー / 撮影監督:ドン・バージェス / プロダクション・デザイナー:ビル・ブルゼスキー / 編集:カーク・モッリ / 衣装:キム・バレット / キャスティング:アン・マッカーシー、ケリー・ロイ / 音楽:ルパート・グレッグソン=ウィリアムズ / 出演:ジェイソン・モモアアンバー・ハードウィレム・デフォーニコール・キッドマンパトリック・ウィルソンドルフ・ラングレン、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、ルディ・リン、テムエラ・モリソン / 配給&映像ソフト発売元:Warner Bros.

2018年アメリカ作品 / 上映時間:2時間23分 / 日本語字幕:アンゼたかし

2019年2月8日日本公開

2019年7月2日映像ソフト日本盤発売 [Blu-ray & DVD セット:amazonBlu-ray & DVD セット初回限定仕様:amazonBlu-ray & DVD セット初回限定・amazon仕様:amazon|4K ULTRA HD &ブルーレイセット:amazon|4K ULTRA HD &ブルーレイセット amazon限定仕様:amazon|4K ULTRA HD &ブルーレイセット スチールブック仕様:amazon|3D & 2D ブルーレイセット:amazon|3D & 2D ブルーレイセットamazon限定仕様:amazon]

公式サイト : http://www.aquaman.jp/

ユナイテッド・シネマアクアシティお台場にて初見(2019/2/16)



[粗筋]

 アメリカのメイン州アムネスティ灯台守を勤めるトム・カリー(テムエラ・モリソン)は、ある嵐の夜、岩礁に打ち上げられた美しい女性を救出する。彼女はアトランナ(ニコール・キッドマン)といい、海底にある王国アトランティスの王女だった。政略結婚を拒絶し逃げ出したところ、遭難したのである。

 トムのもとに身を寄せたアトランナはやがて、アーサーという男の子を授かる。しかし、アトランティスの王が未だに追っている事実を知ると、アーサーをトムに託し、海底に戻ることを決意する。いつか日の昇る桟橋にふたたび戻ることを誓って。

 時は経ち、現在。成長したアーサー(ジェイソン・モモア)は、海底人の強靱な身体能力を駆使して、海で危難に遭ったひとびとを救うヒーロー、アクアマンと呼ばれるようになっていた。

 アーサーが父と食事に出かけた帰り、そんな彼をメラ(アンバー・ハード)という海底人が訪ねてくる。現在、彼女の婚約者でもあるアトランティスの王であり、アーサーにとって父親の違う弟であるオーム(パトリック・ウィルソン)が、地上の人間達が脅威であると訴え、全面戦争の用意をしている、と言う。その企てを止めるためには、アーサーが王になるべきだ、と訴えるメラを軽くあしらうアーサーだったが、その直後、海岸を謎の津波に襲われ、本当に地上に危機が迫っていることを理解した。

 メラに伴われ、アトランティスに潜入したアーサーは、バルコ(ウィレム・デフォー)と再会する。現在もアトランティス王国の重臣を務めるバルコは、しかしかつて、アトランナの頼みにより地上のアーサーの庇護者となり、彼に海底人流の戦闘術を伝授した師匠でもあった。オーム王に仕えながらも、彼の施策に危険を感じたバルコは、メラと共に暗躍していたのだ。

 アーサーが玉座を手に入れるためには、伝説の矛が必要だ、とバルコは言う。海底のアトランティス王国を築いたアスラン王が携え、その力によってあらゆる海の生き物を従えていたという伝説の矛は、その後行方不明になっており、それを手にした者であれば王としての資格を認められる。バルコは最近の調査で発見された手懸かりをアーサーに託すのだった。

 だが、3人が密会しているその場へ、オーム王の親衛隊が踏み込んできた。メラとバルコはすんでのところで身を隠したが、アーサーは格闘の末に捕らわれ、オーム王のもとへ引き出されてしまう――

[感想]

 監督を担ったジェームズ・ワンは当初、ホラー寄りの人材と目されていた。出世作はシチュエーション・スリラーの革命的傑作『SAW』、それから『インシディアス』『死霊館』とホラーでの大ヒット作を連発しているのだからやむを得ないところだが、恐らく彼のオタク気質は決してホラーに限定されるものではなかった。主演俳優の急死、という悲劇を乗り越えシリーズ屈指のクオリティと当時最大の大ヒットを成し遂げた『ワイルド・スピード SKY MISSION』で既にそのセンスの高さを示していたが、本篇によって映画監督としての懐の深さ、確かな能力を改めて証明した、と言っていいのではなかろうか。

 アクアマンというヒーロー自体、日本での知名度はあまり高くない――というより、ほとんどのひとは知らないだろう。かく言う私自身も、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』のチラ見せで初めてその存在を知ったくらいだ。本国においても、どちらかと言えばダサいヒーロー扱いの時期が長かったようだ。

 しかし、それ故に、なのだろう、本篇は意識的にヒーロー物の王道を選んで綴られている。それも、神話やファンタジー寄りの、“救世主”の文脈に近い。『ジャスティス・リーグ』を経ており、最初から能力も一定の名声もある状態で登場するが、祭り上げられることは好まない。しかし、世界の窮地に自分以外の人間が対抗できないことを悟り、英雄として覚醒していく。まさに少年が妄想する英雄譚そのものだが、本篇はそれを、文句が出ないほど丹念に環境を整え描写を重ねることで、強度の高い物語にまとめ上げている。だからこそ、素直に熱狂できる。

 そのうえで本篇は、ほぼ全篇が観たことのないアクションで彩られている。

 実在の人間にせよ生き物にせよ、海中ではどうしても水の抵抗によって行動が制約される。海中アクション、と銘打った作品であっても、だいたい潜水艦など人工の乗物であったり、サメが登場するくらいのものだろう。しかし本篇は、水中らしさをきちんと描きながらも、そのなかで人間――というか人型の生物が戦いを繰り広げる。海中ならではの武器の扱いや表現、重力に制約されない立体的な動きなどを随所で採り入れており、そのヴィジュアルは未体験の域にある。

 だが、地上におけるアクションシーンも、見せ場という意味では充分に機能している。とりわけ圧巻なのが、屋根の上を駆けて逃げるアーサーとメラに、追跡者が建物の壁を突き破って追いすがるくだりだ。その無茶苦茶さにも度胆を抜かれるが、屋根の上と建物と2層に展開することで、海中のアクションにも似た立体感を演出している。趣向として突き抜けていながら、メインである海中戦との違和感が少ない。

 もともと傑出したスリラーを手懸けて世に出た人物だけあって、ジェームズ・ワン監督は緊張感の表現に長けている。『SKY MISSION』にせよ本篇にせよ、その緊張感の表現、テンポの作り方を見事にアクションに応用して、凄まじいまでの昂揚感を生み出している。それが王道と言えるストーリーとも相俟って、最高潮のクライマックスを演出しているのだ。

 それにしてもこのアクアマンというキャラクター、見た目はむさ苦しいし、先行する『ジャスティス・リーグ』での振る舞いも武骨だが、しかし妙な愛嬌がある。狷介のように見えて、不器用で善良な人柄であることも窺える。わりあい特殊な出自で、人間離れした側面の強い他のDCヒーローよりもずっと人間くさいのだ。そういう、親近感を持ちやすいキャラクターが、彼に似つかわしい王道のストーリーで“英雄”となっていく。波長が合わなければそれまでだが、少しでもハマってしまったら、熱狂してしまうのが自然な作りなのだ。

 公開時、“DCエクステンデッド・ユニヴァース”の記録を更新する大ヒットを遂げたのも頷ける。観て燃える、本物のヒーロー映画なのである。

関連作品:

マン・オブ・スティール』/『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』/『スーサイド・スクワッド』/『ワンダーウーマン』/『ジャスティス・リーグ

SAW』/『デッド・サイレンス』/『狼の死刑宣告』/『インシディアス』/『インシディアス 第2章』/『死霊館』/『ワイルド・スピード SKY MISSION』/『エスター

マチェーテ・キルズ』/『グランド・ブダペスト・ホテル』/『イノセント・ガーデン』/『ヤング≒アダルト』/『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』/『グレイテスト・ショーマン』/『スター・ウォーズ episode III/シスの復讐

アナベル 死霊館の人形』/『半魚人の逆襲』/『ファインディング・ニモ』/『ブラック・シー』/『MEG ザ・モンスター』/『オーシャンズ

コメント

タイトルとURLをコピーしました